1ー10
視線を戻すとともちゃんが私を睨んでいた。なんだろうと考えるとそう言えば最後のたこさんウインナーを食べたのだと気が付いた。頬を思いっきり膨らませて苦しくなって顔を真っ赤にしていた。それをただただ見ていると結局口を開けて大きく息を吐いた。
「それよりテスト勉強してるの?」
わたしがそう告げるとともちゃんの顔が青ざめた。ちーちゃんは野菜ジュースを小動物的に飲みながら首を傾げる。
「え? あったっけ?」
「ちーちゃん、中間試験」
「あぁ! なぞなぞだね!」
意味がわからない。なぞなぞと言えるレベルの問題は小学校1年生の時点で終えているはずだ。
「簡単だから平気」
「ちーちゃんはわかってる」
これでも学年では指に入るくらいの頭脳派だ。抜けてるが。それよりも私が気にしているのは今まさにグランドに向けて走り出しそうな、その青顔の女である。
「よし、ともちゃん今日から居残りな」
「堪忍してよー。今日の特集見たいんだよー」
「却下」
「でたよ却下。雪の女だよ」
「夏も前で涼しいじゃないか」
私は立ち上がると窓際に向かった。グランドには見慣れた光景が広がっている。それを多少なりムカついたところでさほど顔にもでない。慣れとは恐ろしい。通常と異常の差が埋まるのだから。今見ている光景が異常であってもなんの違和感も覚えない。
それがきっと日常なのだから。