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――由、...&he。

「はい、おしまい」


 話下手な俺による長ったらしいストーリーテリングが終了した時、夜はかなり更け込んでいた。

 ベッドの上で小さくちょこんと座り込んでいるイズミも少しは眠そうな顔をしていると思いきや、何やら神妙な面持ち。


「まったく。だから聞かない方がいいと言ったのに」


 あれ? 言ったっけ、俺。

 何はともあれ、三佳さんが言う「二度目への警戒アンチ・アナフィラキシー」は、俺にこの加納 沙耶香との関係から始まった「俺」の暴走を戒めよと告げているわけだ。……ええと、要するに。俺は異性を好きになると人としてのタガが外れてしまう傾向にあるから、異性を愛すべきではないと。

 ……手遅れだよなあと、我ながら思う。


 イズミは相変わらず何も言葉を発さない。まったく、そっちが強請(ねだ)ったのだから感想の一言くらいくれてもいいだろうに。


「さ、俺のお話はこれでおしまいだ。良い子は早く寝なさい」


 そう言って、お地蔵と化したイズミを無理やりに毛布の中に詰め込む。


「むぁー! なにすんの!」


「自分で寝ると言ったんだから寝ろって。明日辛くても知らないぞ?」


「むぅ……」


 ぎゅうう、と自らを毛布できつく縛り上げるイズミ。それはもはやロールキャベツやミノムシどころか、葉切り虫の落し文だ。

 シーリングライトを白い明かりから豆電球のオレンジの光へと切り替えてやる。


「それじゃ、おやすみイズミ」


「……ん。おやすみ由利也クン。あの……その…………話してくれてありがとね」


「……おう」


 本当は誰にも話したくはなかった。内容からして、特にイズミにだけは絶対に。

 だけど結局全部話してしまった。まったく、俺はどうしてこうもイズミの(めい)に逆らえないのだろう?



「…………あ」


「どしたの? 由利也クン」


「一つ、話し忘れてた」


 加納 沙耶香との一件の直後、俺にある出会いが訪れたのだ。

 血みどろの倒れた男。絶叫を上げる加納。それに駆けつけた第一発見者。


「『やるじゃん、オマエ。見直したぜ』――あいつはそう言ったんだ」


 あまりにも場違い。「こいつ、相当イカれた男だ」。奴の第一印象はそれだった。

 焦げ茶の髪に、丸い銀縁の眼鏡。俺より頭ひとつ高い背丈のあの男は、その光景の中で、ただ俺だけを見ていた。



「それじゃ、おやすみ」


 再び静けさを取り戻したベッドに手を振り、俺は壁に埋め込まれたドアを開く。

 隣の部屋から差し込む蛍光灯の真っ白な眩しい光が、この部屋にはひどく場違いに感じられた。

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