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――籠、彼女らを繋ぎ留めるもの。

「田名! ちんたら走るな! ――あ、遅いよ二人とも!」


 体育館でシャトルランを行っている部員たち。それをマネージャーたちと共に計測している角さん。


「ごめん、寧子。体育祭の実行委員の方でちょっと仕事があって……」


「ほーう? ケロ子は放課後まっすぐここに来たけど」


 だろう、うん。だからケロちゃんは昼休み、少し遅れて教室に来たのだ。


「むぅ。嘘じゃないわよ。配られたプリント、見る?」


「いらない、いらない。それより、計測手伝ってくれない? 回数誤魔化してるヤツがいないかどうかを見張っていてくれるだけでいいからさ」


 走っている選手は約二十名。対して、計測しているのはマネージャー三名+角さん。これでは不正を働くことも容易だ。


「オーケー。ステージから見てればいいわよね。行こ、由利也クン」


「あ、ああ。」


 ケロちゃんに挨拶をして行こうと思ったが、どうやら彼女は回数のカウントで忙しいようだったので断念。

 ……代わりに、その奥――――体育館の隅で携帯を弄っていた綿貫 麻実と目が合った。




「ろくじゅうごー。――――――ろくじゅうろくー。…………」


 ケロちゃんが数取器(カウンター)で計っている回数を、隣に立つ二年生のマネージャーが読み上げる。

 俺たちは、朝と同じようにステージから足を垂らしていた。


「俺だったら、この辺りでリタイヤしそうだ」


「まだ女子平均くらいじゃない? 情けないわね」


 ……女子平均は言い過ぎだろう。いくら、未だ一人もリタイヤする部員が出ていないからって。


 ここからはおよそ全てのバスケ部員が視認できる。

 バスケ部員は男子が十名強、女子がマネージャーを含め十名ほどといったところだ。実質2つの部の合同と考えても、我が校の部活動の中ではかなり大所帯の部類に入る。

 マネージャーは一年生がケロちゃんを含め二名、二年生が綿貫 麻実を入れて二名、三年生がゼロ。

その内、真剣に仕事をこなしているのはケロちゃんくらいなものだ。

 そういうわけで、部長である角さんがマネージャーの仕事を手伝う羽目になっているらしい。


 ちなみに、副部長という役職は存在しない。二年前に撤廃されたとのことだ。

 撤廃した先代部長曰く、「キングは一人」だそうで。


「暇そうだし、部員紹介でもしようか?」


 確かに、暇といえば暇だ。なにせ、監視対象である綿貫 麻実はずっと体育館の隅から動こうとしないのだから。


「いや、遠慮しとく。顔さえ覚えられる気がしない」


「そ。――まあ、逆に貴方の顔は大多数に知られてるけどね」


 ……なに?


「どういうことだよ、それ」


 意外そうな顔でこちらを凝視してくる。


「だって、貴方といえば遠東 和輝の親友じゃない。そりゃ、貴方と彼と一緒にいるところなんて1年生以外はみんな見てるわよ。貴方、彼のカリスマ性を舐めすぎね」


「はぁ、そういえばそうか」


 ……待てよ?


「ってことは……もしや綿貫 麻実も俺のことを知ってるのか?」


「かもしれないわね。って、自分の身の振りくらい弁えておきなさいよ」


 それはちょっと無茶な話だと思う。現在のことならまだしも、昔の俺はただの凡庸な一般人の1人でしかなかったんだから。


 にしても、まいった。綿貫 麻実を含め、二、三年生とやらの顔に全く見覚えがないぞ。

 ……まぁ、角さんを差し置いて綿貫 麻実のことを覚えていたら、彼女に申し訳が立たないのだが。




「ねえ。あれ、飲んでもいいのかな?」


 イズミが指さす先にあるのは、記憶に新しいあの「お茶タンク」だ。


「いいんじゃないか? 一杯くらい。コップ洗ったりもしなくていいと思う」


「そうよね。じゃ、遠慮無く」


 取っ手のついた白いプラスチックのコップにタンクの中身を入れ、それを飲んだイズミが何か訝しげな顔をし、コップをそのまま俺に差し出す。


「――由利也クン。これ、飲んでみて」


「え。あ、ああ」


 こういうのって、相手が口をつけていない方で飲むんだよな。……いや、待てよ? それじゃバスケ部の誰かがイズミが口を付けた方で飲んだらどうする? 俺が飲んでしまえば、後で女子に使わせるわけにもいくまい。だとすると、男子の誰かがイズミと間接キス? いやいやいや! 俺はそんなこと断じて許さんぞ! ええい、こうなったらイズミが口を付けた方で――――


「……由利也クン。コップは後で洗えばいいから、早く飲んでみてくれない?」


「……はい」


 考えが読まれていたことに羞恥を覚える。いや、もはや絶望の域。もうどうとでもなれ。


「あれ? これ……」


 コップの中の液体は、コップ本体と同じ色をしていた。


「へえ、お茶じゃないんだな」


 半分ほど残っていた中身を飲み干す。……ん、これは――――


「スポーツドリンクか。しかも……冷たい」


「でしょ? 今朝千葉くんが言ってたのはこのことだったのね」


 ああ、『あれ、ぬるいな』だったか。失礼な輩だなと思ったが、普段はこうして冷やしているからこその発言だったようだ。


「なるほど。わざわざ冷やしてるなんて、ここのマネージャーは偉いなあ。ケロちゃんの仕事かな? それとも、あの二人のどちらかか?」


 ……あれ? イズミ。なんでそんな顔をするんだ?


「……あきれた。そんなのわかりきったことじゃない」


 む。俺はこの部の事情なんて詳しくは知らないし、そんなことを言われたって困る。



「ひゃくにじゅうごー。はい、お疲れ様でーす」


 規定上限回数の百二十五回が終わったらしい。男子のほとんどは残っていて、女子も半数ほどクリアしたようだ。


「凄いな。さすがだ」


「寧子の指導の賜物ね。あの子、天性の『飴と鞭』気質だから」


 なんじゃそりゃ。とツッコミたくなったが、褒め言葉のようなのでそっとしておこう。





「で。もう五時半過ぎだけど、どうするんだ?」


 シャトルランの計測が終わってから、部員たちは男女混合の紅白戦をしている。イズミによると、シャトルランの記録と紅白戦での活躍具合から日曜の練習試合のスターティングメンバーを決めるとのことだ。


「どうするって、何が?」


 紅白戦に見入っていたイズミに、きょとん、という顔をされる。


「今日は六時完全下校だろ。これが終わったら片付けだ。片付けが終わったら解散だ」


「うん? そうね。当たり前じゃない」


 何を言ってるの? と、イズミは再び選手たちの方へ向き直ってしまう。そして、俺も同じ方を向く。ただし見るのは紅白戦の模様ではなく、その奥。

 ――結局この二時間弱、ずっと体育館の隅で携帯電話を弄り続けた綿貫 麻実だ。


「あいつ、何の動きも見せなかったじゃないか。大丈夫なのか?」


「寧子ー! 得村くんがフリーよ! ……あー!」


 ……まさかのガン無視。真面目な話は何とやらじゃなかったのかよ。嗚呼。今、芳邦のヤツの気持ちがわかった気がする。


「――――心配しなくても大丈夫よ。彼女は動くわ」


「へ?」


 そう不敵に呟いたと思えば、イズミは再び赤チームの応援をし始めた。……いや、嘉仁やら陸部だのが活躍してるのはわかったから。もうちょっと俺に親切にしてくれないか、ほんとに。




 紅白戦最終試合は70-58でゲームセット。角さん有する赤チームが勝利を納め、本日のバスケ部の練習はこれにて終了となった。


「皆、お疲れ! じゃあ、今日の結果を元に土曜までにスタメン決めとくから。覚悟はいいね?」


 ウース、と男子たちから威勢の良い声が上がる。

 ――ああ、良い部だ。和輝時代のピリピリとした緊張感が無いためか、部員たちは皆本当に楽しそうにしている。やっぱり角さんは、間違いなく指導者の器だ。


 その後、部員総出で体育館の片付けが行われた。と言ってもボールや得点板などわずかな用具の片付けのみ。モップ掛けなどの掃除はまとめて毎週土曜日に行うらしい。


 片付けを終えた部員たちが、ぞろぞろと体育館から出て、それぞれの教室へと向かっていく。

 下校時間ぎりぎりまで活動するために、角さんが部員たちに教室での着替えを推奨しているかららしい。幸いなことに男子部員と女子部員は皆違うクラスということで、その形式が成り立っているとか。

 ちなみに。その形式を取っていない、あるいは取れない他の部活はバスケ部よりも早く片付け・着替えを済まさなくてはならなくなっているそうだ。


「おい、イズミ。わたぬ……」


「しっ! ――来たわよ」


「え?」


 これまで微動だにしなかった綿貫 麻実が、ついに動いた。彼女は携帯を手に持ったリュックサックに仕舞い、マネージャーに片付けの指示をする角さんの元へと歩いていった。


「角先輩。私、タンク片付けますから。部室の戸締りも私しときますんで」


「おー、毎度毎度悪いね」


「ま、働かないならここ来る意味も無いですし」


 そういって、俺とイズミを睨む。……まいったな。今朝のこと、そんなに恨まれちゃってるのか。


「じゃ、よろしく。体育館は今閉めるし、“部室の鍵”もそれと一緒に返しちゃっていい?」


 “部室の鍵”というのは、職員室から借りている“大本”の鍵ということだ。綿貫 麻実は合鍵を持っているため、彼女にそれは必要無い。


「問題ないかと。それじゃ」


 そう言って、俺たちの方へと歩いてくる。目的はもちろん、俺たちがステージから運んできた、空になった二基のお茶タンクだ。


 彼女はそれを両手に持ち、イズミに一礼を。俺に一瞥を残し部室の方へと去っていった。

 ……もしかして、俺は彼女に対しても何かを忘れているんだろうか? 知らんところで恨みを買ってる気がするな、俺。


 ――――さて。


「追うんだろ?」


 角さんの後について、俺とイズミが体育館の外に出る。


 彼女が部活終了後に独りになった。部室にも独りで立ち入る。決定的だ。もはや酌量の余地は無い。彼女がシロだとしても、それを証明するために今跡を付ける必要がある。


「――いえ、追わないわ」


「っ……。なんでだよ」


 この期をむざむざ逃すなんて、そんな馬鹿な。

 体育館の鍵を閉めている角さんに聞こえないよう、小声で会話を交わす。


「大丈夫よ。これで彼女の行動パターンは確定したわ。彼女は九十九パーセント明日もまた同じ行動を取る。その時こそが『期』よ。それに……今日はこっちの都合も悪いわ」


「どういうことだ?」


「今日はこの後寧子と香早生ちゃんに誘われてるのよ。そっちを(ないがし)ろにするのも、こっちにとっては不利になるわ」


 待て。


「そんなこと言ってる場合か?」


「ええ、そうよ。私たちをこの場に繋ぎ留めてるものは彼女たちとの関係だもの。綿貫 麻実を仕留めた後、仮に彼女の“従者”がこの部に残ったとする。そうなった時、私たちがこの部に干渉できなかったら取り返しの付かないことになるわ」


 それはもっともだけど……。うーん……。


「ね。だから今は我慢よ。――――『期』は明日。明日は、無理なくあの二人と距離を置くことができるから」


 ここはイズミの言うことを聞く他ない。仕方ないが、悠々と独りになる綿貫 麻実の背中を見送ることにした。


 いつの間にか、体育館の前には俺たちだけが残されていた。角さんもケロちゃんも、とっくに教室に行ってしまったようだ。


「注意力散漫。いかんな……」


 熱気の(こも)っていた体育館から一変、外は五月とは思えない寒さを誇っていた。


 曇天の空は黒く、重く。泣き出すまで、そう遠くはない。そんな確証を俺に与える。




「おっまたせ! じゃ、行きましょう!」


 着替えの終わった角さんとケロちゃんを、昇降口で出迎える。

 角さんはワイシャツに濃桃色のリボン。ケロちゃんとイズミはその上に黒いブレザーを着ている。律儀にボタンを全部締めているのがケロちゃん。逆に全て開け放っているのがイズミだ。


 女子の制服のリボンはそれぞれの学年カラーを示している。ケロちゃんが付けているリボンの赤は一年生の、オレンジが二年生、角さんとイズミの胸のピンクが三年の学年カラーだ。

 ……新デザインの女子制服に合わせて刷新されたため、非常にバランスが悪い。その救済処置として、上履きの色は校則で規定されていない。ちなみに一番人気は白。値段が他の色に比べ安いというのも一因のようだ。


 そうして、四人で駅へと――――否。もはや彼女らの溜まり場と化した、角さんのバイト先でもある喫茶「アル・フィーネ」へと歩いて向かった。




 「アル・フィーネ」に着いてからの俺たちは、ひたすら駄弁っているだけだった。


「本田は前回がピークだったんじゃないかと思うわ。なんというか、もうキレがない」


「私は、彼はまだやれると思いますけど。ピークが過ぎたというのなら遠藤の方でしょう」


「んー、私ゃそれより両中村が監督に気に入られ始めたのが気になるかなー」


 何の話だ? まるで付いていけない。……じゃなくて!


「ストップ、ストップ! 角さん、あんた勤務中だろ。こんなところで座ってていいのかよ」


 んー? と伸びをしてみせるネコ。彼女が着ているのは学校で着ていたワイシャツではなく、大きな白いエプロンが特徴の、「アル・フィーネ」の制服だ。

 どこかエセ・メイド風を思わせるその制服を彼女以外の誰かが着ているところを、俺は見たことがない。


「だいじょぶ、だいじょぶ。どうせ客なんか来ないし」


 いいのか? 店長。唯一の店員バイトがあんなこと言ってますけど。

 ちなみに、この喫茶店の店長には俺はもちろん、イズミやケロちゃんも一度も会ったことがない。完全に謎の人物なのだ。


「じゃあ、部の話はしなくていいのか? 土曜までにメンバーを決めるんだろ?」


「ああ、アレ?」


 伸ばした腕を曲げ、ポニーテールを垂らした頭をぽりぽりと掻く。


「メンバーについては明日話し合うんですよ。今日選考に関わるテストを終えたからといって明日気を抜いた部員に対し、マイナス評価を付けます。話し合いを始めるのはそれが終わってからですね」


 義務的に――しかし得意気に――語った後、カフェオレをずず、と啜るケロちゃん。型に付いてきたというか、小慣れてきたというか、摩り減ってしまったというか……。


「そーゆーことっす」


「なるほど。……結構えげつないことやってるな」


「そこで得意(どや)顔してる娘のお兄ちゃんが始めたとか何とかって話よ」


 ……まぁ、予想通り。ケロちゃんの方に視線を移すと、顔を赤くして必死にカフェオレを啜り続けていた。




 そんなわけで、「アル・フィーネ」での三時間は余りにも平和に過ぎていった。


「イズミは、この近くにバイク停めてるんだっけ?」


「そ。そういうわけで、ここでお別れね」


 午後九時半。それぞれが注文した夕食メニューは綺麗に完食され、角さんのバイトの終了時刻――つまりは「アル・フィーネ」の閉店時刻となった。

 俺たちは軽く挨拶を交わし、それぞれの帰路に就いた。




 歩く道のりは暗く、寒く、……寂しく。終始、今朝イズミと一緒に歩いたことを俺に思い出させた。


 駅から徒歩というのはなかなかに辛いもので、家に着いた時にはすでにバテバテだった。

 服を脱ぎ、シャワーを浴びる。体を冷やしてまた風邪を引くのも馬鹿らしいので、上がってすぐ厚手の寝間着を着用した。


 風呂場から出た俺を出迎えたのは、テーブルの上で着信に震える携帯電話。


「もしもし」


「あ、やっと繋がった」


 電話の主は、もちろんイズミだ。


「悪い、シャワー浴びてた。それで、何か用か?」


「あはは……『何か用か』は無いんじゃない?」


「……悪い」


 俺と彼女は、決戦を明日に控えた身なのだ。もっと緊張感があって然るべきである。


「今日はとにかく十分に睡眠を摂って。今から寝ちゃってもいいと思うわ。もう二十三時でしょ」


「了解。後は?」


「とにかく準備を怠らないこと。それと、明日は朝練に来なくていいわ。私だけ顔出すから」


「……? ああ、わかった」


 それがどういう理由でかはわからないが、とりあえず言われたとおりにしよう。


「後は……朝と昼のご飯の準備、忘れないようにね」


「あー、サンキュ。すっかり忘れてた」


 ここのところ、どうにも家事の方に頭が回らない。今日だって、イズミがいなければ朝も昼も食いっぱぐれていた。

 ……もっとも、イズミが朝早く俺を尋ねていなければ……いや、野暮だ。やめよう。


「もう。じゃあ、明日は天気が崩れるかもしれないってこともわかってない?」


「……はい」


 家に帰ってきてから、テレビを点けるタイミングがなかったのだから仕方ない。


「念のため傘を持っていったほうがいいと思うわ。……それじゃ、おやすみなさい」


「ああ、おやすみ」


 …………。


 ……少し待ってみたが、電話は一向に切れる気配がなく、微かな息遣いだけが受話器を通して聞こえてくるだけだった。どうやら、向こうから電話を切る気は無いようだ。


「……切るぞ、おやすみ」


「あ、うん……」


 電話を切る。



 さて、朝と昼の飯の準備だっけ? ……面倒だ。朝はパンでいいし、昼も買っておいた菓子パンでいい。


「足りなさそうなら明日買い足せばいいしな」


 なんて悠々自適の寄生生活。飼い主(ミカさん)へのリスペクト精神など、「金銭感覚の麻痺」などという言葉と共にとっくに失われてしまっている。

 汗水垂らして真面目に働き家計を保つ役割を担う三佳さんからすれば、この俺こそ口座を蝕む寄生虫。いや…………本当にごめんなさい、三佳さん。今ちょっとずつ節約をし始めてるんで、もうちょっと温かい目で見守っていてください。

 え? そんな努力無駄だって? 確かに矯正できる可能性はゼロに近い。でもやらなきゃ、確実なゼロだろ。


 ……独りで何言ってるんだろ、俺。

 疲れているのか、それとも――――


「……現実逃避、かな」


 明日、俺は“覚醒者スレイヤー”あるいは“溺者(ドランカー)”である綿貫 麻実と「戦う」。


「……実感、沸かないなぁ」


 ――本当に「俺」は“溺者”布施や“覚醒者”高峰と対峙したんだろうか?

 あの時の記憶は霞の如く曖昧だし、ただ肉体だけがその感覚を憶えているだけだ。実感が伴っていない。


 そうなると、明日こそ真に俺の初戦。俺がイズミのためにどれだけの働きを見せることができるのか。戦える自信は――あまり無い。


「……ネジ投げの自信はあるけどさ」


 電気を消し、ベッドに横になる。

 さあ、寝よう。眠ってしまえば、不安だって消し飛ぶ。


「……嘘だな。だって――――」


 俺はどうしてか、悪夢ばかり見る。いつからだろう? 確か、四年前が原因ではなかった気がしたけど……。


 まあ、いい。眠ってしまえば、時間は無情に過ぎ去ってくれる。それだけは「真」だ。


「……おやすみ。明日もよろしく」


     ――それは、誰に向けたのか。


 ……はは、ただの独り言だって。




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