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嘘しかつけない清水さん。  作者: OBOn


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2/6

トクベツ

「おはようございます」

「あ、おはようございます。清水さん」

「昨日は取り乱してしまってごめんなさい。私いっぱいいっぱいになっちゃって…」

「いえいえ…びっくりはしましたけれど、良かったです。清水さんとお友達になれて」

僕は昨日友達になった清水さんと僕の家の前で待ち合わせをした。

一緒に登校することになったのだ。

すごい。こんなことしていいのかな。なんか友達ってすごい…!久しぶりの感覚だ。こうして、朝から晩までお話しして遊びにどこかカフェとかゲームセンターとかカラオケとか行って楽しむものなのかな…小学生の時は遊ぶ範囲はせいぜい近所の公園…遊びの幅は遊具良くてゲーム機だったから…す…すごい…本当に嬉しい…!!!

「…がみくん…?尾上くん…?」

「あ、はい!少し上の空でした。ごめんなさい。なんでしたか?」

「好き」

「!?」

「じゃなくて…!ごめんなさい…また、私、嘘を口走って…」

と口を両手で抑えて本当にこっちが申し訳なくなってくるほど申し訳なさそうに深々と頭を下げ、謝罪をする清水さん。

「だっ、大丈夫です…なんでしたか…」

やっぱり…びっくりする…心臓がもたない…。

「あ、いえ、大したことはないのですが、今日の数学の課題が難しくて…最後まで解くことはできたのですが、合っているか自信がないので、後で見させていただくことって可能ですか?」

なんだ…課題か…嘘でも告白の後だと拍子抜けしてしまう…

…ん?

あ。

「やるの忘れました…」



学校に着いた。下駄箱で靴を上靴に履き替え、階段を上り、自分の教室を目指していく。

「じゃあ、僕2年3組なので…」

と僕は自分の教室に入って行こうとすると…

「あれ…尾上くんも2年3組なんですか?」

と清水さん。

「え…?」

「え…?」

「私もです…」

まさか…。

「ちなみに、席は…」

「一番後ろの窓側の席です」

主人公席だ…。

というか、それより…。

「僕、そのお隣の席です」

「ええっ!?」

「びっくりですよね。僕もです…!」

「ふふっ…なんだかこんな感じのやりとり昨日もした気がしますね」

高校デビューに失敗したせいで、確かにクラスメイトのことなんてあんまり知らなかったけど、クラスメイトの顔くらいはなんとなく見たことあるなぁ…ってレベルではぼんやりと覚えている。でも、その中でも、僕が清水さんを知らなかったのはきっと、清水さんが今まで友達を作ろうとしてせず、アクティブにクラスの中で発言も行動もせずにいたから気づかなかったのだろう。

多分、清水さんも同じような理由で僕のことを知らなかった。

なんだこれ。似た物同士だ。

「あははっ。やばいですねっ。隣の席なのにっ」

流石に大笑いしてしまった。こんなのおかしすぎる。笑わずにいられるものか。もし、この状況で無表情無感動でいられる人間がいたら、僕の目の前に連れてきてほしいくらいだ。

「はいっ…やばいです…!ふふっ…学校でもお隣さんですね。よろしくお願いします」

清水さんもまた花が咲いたように笑っている。昨日よりも笑顔が素敵で、満開に咲いた桜のような微笑みだった。

今日も清水さんの笑顔を見れた。昨日、今日と二日連続で笑顔を見れた。嬉しい。僕は本当に幸せものだ。



授業が始まった。

今は3時間目の数学の時間だ。

数学の課題をやり忘れて先生にとっても怒られた僕は今日の数学の授業についていけない…。

「じゃあ、この問題を…尾上…解けそう…?」

まずい。この先生は授業で当てて答えられなかったor間違えた生徒には復習課題を増やす先生なのだ。

「…清水さんここの答えなんですか?」

と隣の席の清水さんに小声で助けを求めた。

「√11」

と清水さん。

「√11です!」

「不正解。じゃあ、その隣の清水、答えて」

「4です」

「正解。この問題は基礎だから、解けないと困るぞ。間違ってたやつらはちゃんと復習しといてね」

僕はあまりにも呆気に取られて口をぱくぱくしながら、ギギギッ…とぎこちなくかつゆっくりと隣の席に顔を向けた。

「ごめんなさい…ごめんなさい…」

と小さな声で清水さんはまたもや謝っている。こちらが心苦しくなる。



休み時間。

「放課後予定はありますか」

「…?ないです」

「だったら、遊びに出かけませんか」

「お…おぉ…」

友達らしい…!

「どこへですか」

「街を歩きたいです」



「…」

「…」

静かだ。何も話さない。何か話していい空気なのかも分からない。

清水さんはずっと前向いて、後ろで両手の指を交差させて組み、西に沈みかけている太陽をぼんやりと眺めつつ、ゆっくり歩いている。

目的地が告げられていない僕はその後ろをさらにゆっくりと付いて行くしかない。

と、清水さんが口火を切った。

「尾上くんはどうして私と会話してくれるんですか?」

「どうして…?」

「はい。わかりません」

「友達だからですよ」

「…やっぱりわかりません…」

と怪訝そうな表情なのが背後からでもわかる様な声色で呟いた。

「…私、誰も知らないような静かな裏道を歩くのが好きなんです。知っている道が増えて、この道は私しか知らないんだ。たった今この瞬間、この風景はきっと私だけのものなんだって。なんだかそんな気がして。あ、でも、今は尾上くんと半分こですね。あはは。この景色だけは私の特別で、この景色にとっても私の存在が特別であれば良いなぁ…って。誰かにとっての、何かにとっての特別になれた気がして、嬉しいんです。こうして、歩いているうちに奇妙に興奮しているのに、不思議と頭がスッキリしていて、帰ったら心地良く眠れるんです」

「…」

清水さんが言葉にした特別という響きがなんとなく寂しかった。

誰からも信用されず、誰とも会話せず、独りぼっち。そんな人生を歩んできた清水さん。

清水さんの今までの人生がどのようなものだったかなんて想像がつかない。だから、僕は恐怖感とも似た気持ちになったとともに、その清水さんの特別になれるこの景色はいいなぁ…とそんな変なことを考えてしまっていた。

「すみません。面白くないですよね」

くるりと振り返った清水さんは、はっ、とたった今我に返ったという様な表情をした後に、苦笑いをした。

「帰りましょうか」

清水さんは苦笑いを浮かべたまま、足早に僕の方向に歩いて、僕を通り越した。

「また見に来ましょう」

僕も清水さんに振り返って言った。このままだと清水さんが明日の朝には他人に戻っていそうだから。伝えたいこと、言いたいこと、いっぱいあるから。たとえそれが今言えないものでも。

「…ダメです…また見に来たら、その時はこの場所は過去の私が知っていて、きっと、たった今この瞬間の私だけの景色じゃなくなります。そうしたら、もうこの景色は私だけのものじゃないし、私もこの景色に必要とされません」

「じゃあ、探しましょう。清水さんがずっと特別だって想える場所を。何度だって訪れて、その時も『この景色が特別だ』って想えたら、その景色もその想いに応えて、清水さんのことを大切にしてくれるから。きっとそこが清水さんの心が寄りかかれる大切な場所になるから」

「…私、よく迷子になるんです。こうやって人がいない道を好んで歩くから」

「その時は僕も散歩に付いて行きます。」

「迷子になった時も嘘を吐くんです。それで帰れなくなるんです。道案内をしてもらっても、違う場所を目的地と言ってみたり、道順をわかっていないのに、わかったと言ってみたり…」

「一緒に迷子になりましょう。帰れる道を一緒に探しましょう」

「ふふっ…一緒に迷子になったら、意味ないじゃないですか…あははっ」

清水さんの笑顔。これが僕の特別。学校の誰もが知らない僕だけに向けられる特別な笑顔。

そうしてやっぱり花が咲くように笑う清水さんの目には涙がじんわりと浮かんでいて。

「…私は…無意識下でいつのまにかこうして人のことを避けていたのかもしれませんね。誰もいない道を歩いて、人に信用されなくなった自分自身と対話する時間を作るために」

「清水さん…」

「でも、今は尾上くんが会話をしてくれます」

ふふっ。とやっぱり、花が咲くような笑顔で笑いかけてくれる清水さん。

「尾上くん」

「はい」

「デートしたい」

「!?」

「じゃ…じゃなくて…」

「したくないんですか…」

「したいです…でもそうじゃなくて!!」

「は…はい…」

「…連絡先交換しませんか…?」

「あ、じゃあ…LIMEで…」

「…はい」

気まずい空気感。でも、嬉しかった。

「今日特別だと想えたこの感覚を忘れない様に、写真を撮りませんか?」

「いいですよ」

ふわり。

と清水さんが近づき、僕の胸に飛び込んできた。

ぱしゃり。

と清水さんが内カメにしたスマホのシャッターを切った。

「…どうでしょうか」

「ぁ…ぇ…ぃや…景色をぉ…」

「!?」

顔を真っ赤にして、俯いてしまった清水さんを見て、僕も同じ様に俯くしかなかった。

こんな表情も僕の特別。嬉しい。

ツーショット…でも、お気持ち程度には、夕日が照らす街が端っこの方に写っているから、景色を撮ったということにしても問題ないか……………あるかも…。

お読みいただきありがとうございます…✨

信心疑擬の連載版です。よろしくお願いします…✨

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