帰宅
結局は、議論なんて平行線で終わってしまった。
「君たち、念には念をだ。明日は9時にここに集まってほしい。」
その一言で議論は終わりへと導かれていった。
時刻は20:30。
俺のひざ元で寝てしまった越智を実家が近くて仲がいい女子たちに任せて俺も帰ることとするか。
俺と越智は付き合っていないし、それくらいがちょうどいいだろう。
何かしらのコンプラ違反を取られても面倒くさいからな。
俺の家はここ梅山から海側にある。
残念ながら、俺は移動中に転送されてしまったので帰るには誰かの車に乗っけてもらう必要がある。
(誰か海側はいないかなっと)
見渡すと、幸司郎と山口、五百旗頭が話しているところが目に入った。
この中だったら、4人乗りの車を持っているのは山口かな。幸司郎は転送されてきたはずだ。
実は漁師を営んでいる五百旗頭はおそらく業務用の軽トラしか持っていないだろうから、山口と来ているはずだし。
「お前ら海側だろ?俺も加えてもらっていいか?」
そう、車の持ち主であるはずの山口に聞いてみる。
「僕は構わない。君の家は確かルートの途中だったはずだ。」
そうやって、残りの2人にも許可を取って俺は正式にそこに加わることとする。
幸司郎は、議論では反対の意見を飛ばしていた。
だけど、時間になったしノーサイドといこうじゃないか。
そもそも、2時間前くらいにはこうやって帰れるはずだったんだからな。
クラスメイトの反応は様々だ。
俺みたいにやっと帰れる~というやつもいるし、疲れた表情をしているやつもいる。
本来だったら全員が2次会行こうぜ!っていうノリでもいいはずだったんだけどな。
「僕の車は少し離れた駐車場に止めてある、行こう」
最後の最後まで残ろうとするクラスメイトがいないことを確認してから山口はようやく帰ろうとする。
どこまでたっても真面目なことだな。
真面目すぎて風邪ひきそう。俺も真面目さが求められる職業のはずなんだけどな。
山口を先頭に居酒屋を出た。
なんだかんだ転送されてからずっと屋内にいたから気が付かなかったが、居酒屋は雑居ビルの3階二日していたらしい。
階段を降りていく。
俺の前を五百旗頭が歩いている。
「なあ、五百旗頭は山口と一緒に来たのか?」
「ん、ああ!今日、茶兎が迎えに来てくれたんだよな!」
「語弊があるよ、ゆーと。僕は君のところまでわざわざ出欠確認をしに行ったんだ。」
話を聞くところによると、同総会当日の今日まで五百旗頭は出欠回答をしていなかったらしい。いくらDMをしてもまともな返答はなし。
電話をしても、超朝型漁師の五百旗頭と大学生の山口では生活リズムに大きな差があるようでつながらない。
そこで、同総会当日である今日に幹事である山口が直々に港まで出向いたようだ。
そんな話をしているとコインパーキングに着く。
山口が車のキーを開錠してウィンカーが点滅したのは最新型の自動運転車。
俺の自動運転車と形式は一緒だが、異なるのは座席の配置。
俺の車は全員の席が進行方向に向いているのに対して、山口のはボックス席型だ。
さて、どのように座ろうか、と思っていたら先に山口と五百旗頭が乗り込んでくれた。
そうか、五百旗頭は本当に港に住んでいるし、山口も港に近いところに住んでいるもんな。
海まで中間地点のところに住んでいるこちらとしては手前側に乗っけてくれたほうがありがたい。
(こういったさり気ない気遣いができるところが、このクラスのいいところなんだよな)
元6年1組の卒業生の経歴面でのインパクトは同学年の2組、3組に比べたらだいぶ劣る。
だが、結束力だけは絶対似たクラスだけには負けないし、陽国でもトップクラスなはずだ。
そんなことを考えながら山口が出庫の操作を終えるのを待っていると、彼の素っ頓狂な声が飛んできた。




