話し合い
振り返ると、先ほど話題の松井が立っていた。
「これから帰る気かよ。明日からデスゲームが始まるかもしれないって時に。」
「おいおい、本気になるなよ、こんなの道化だろ?」
そうやって肩をすくめると、松井は胸倉をつかんできた。
「え、今の時代に暴力沙汰ってこーしろーってそんなに短期だった?」
横から茶々いれてくる越智を一旦無視することにする。
「お前があまりにもへらへらしてるからだ」
「待て。二人ともカッカするな。」
仲裁に入ったのはこの回の幹事であり俺ら1組の学級委員を務めていた山口 茶兎だ。
山口の介入があってか松井は俺の胸倉を解放する。
「んで、山口はこの状況をどう見てるんだよ。」
「僕は両方の可能性があると思ってる。」
そう俺に行ってから山口は居酒屋のみんなが見えるような中央の位置に手を叩きながら進み出る。
「みんな聞いてくれ。今回の件、思うところはいくつかあると思う。
良かったらみんなの意見を聞かせてくれないか。」
そうすると入り口から声が聞こえる。
「電話回線は全滅っぽいよ。」
そう肩をすくめつつ言うのはクラスのマドンナ。佐藤 阿弥。周りにも何人か女子がいるようだが、佐藤同様に良い顔をしてない。
宇都宮も美形だが、可愛さでいったら佐藤に軍配が上がる。
「ありがとう。ということは、僕たちは外部と連絡を取れないって訳だ。」
「そういうの良いから。なあ山口?お前のお芝居に付き合ってる暇はないんだ。それだったら帰るぞ。」
「まあ、待つんだ。」
今度、俺を止めたのはクラスの元気印、五百旗頭 悠斗。
クラスで一人はいる年中半袖短パン小僧だった五百旗頭はそのまま成長したようで、マッチョになっている。
体格だけで威圧できるパターンだな、これは。
ありがたいのは、松井と違って暴力に訴えてこないところか。
「まぁまぁそう言わず、そもそもこーしろーがケガしたってところから仕組んでたんじゃないの?」
どこまで言ってもマイペースな越智が呟く。
流石の松井も女子には暴力に訴えることはないようだ。
「そんなことはない。俺は確かに骨折してたんだ。」
「なんで?」
「大学のサッカーサークルでスライディングに失敗して。」
「なんで?」
「…女子にモテたかったから。」
「え、何それださ。」
…これに関しては越智の言う通り松井が一方的にダサい。
ってこういう話をしたいんじゃなかった。
俺も読心術をわきまえているわけではないが、目の前にいる松井がウソをついているようには見えない。
どっちかというと単細胞なところがさっきから見受けられるしな。
「松井がウソついていないのはわかった。つまりは山口と松井はグルじゃないってことか」
「瑞樹。君はどこまでも僕を疑うんだね...」
「仕掛けられるとしたら山口しかいないじゃないか。予算面は、ほら。西園寺とくんだんじゃないか?」
そうやって俺は学年で一人はいるような御曹司、西園寺 由羽起に顔を向ける。
西園寺はアニメやゲームでお金持ちキャラとして書かれがちな勝手イメージがあるが俺たちのクラスメイトの西園寺もお金持ちの家系だ。
この辺の一帯は確か西園寺のお父さんが地主をやってるなんてうわさも聞いた。
「残念だから、僕では無いなぁ」
そんなやや男性にしては高い声で西園寺が返す。
「そもそも、僕は海外に留学していた。山口君と交流する暇はなかったよ?」
西園寺も宇都宮と一緒で海外から来たと主張する勢か。
それだったら資金面では山口はこのような道化をできなかったとみる線が濃いか。
「まぁ気持ちは分かるけどさー、ミズキはもう少し笑った方がいいんじゃない?」
ちょっと越智は黙っててくれないか…?




