グループ分け
「常に最悪の事態は想定しておくべきだ…違うかい?」
山口の正論に俺はぐうの音も出なかった。
俺たちは本当に処刑されるかもしれない…それが最悪の事態だ。
だけど、頭ではわかっているものの心が理解してくれない。
(本当に処刑なんて可能なのか…?)
山口が何かを話しているが俺は気にせずに隣の幸司郎を肘でつつく。
「…なんだよ」
「…お前、今の山口の話、しっくり来たか?」
「…最悪の事態に備えるってのはわかるだろ」
「…そうじゃなくて。本当に投票で誰かを殺すことが可能なのかよ」
「…そりゃあ信じたくないけどよ。俺たちは何かしらの力で転移させられているわけだ。そして、空間を捻じ曲げられるワープ機能まで見たんだろ?」
確かに。少なくとも俺はここまで転移させられてきたわけだし、今でも居酒屋の入り口は第三小学校の正門へとつながっている。
「…だから、人が死ぬくらいのことだって…起きてもおかしくないんじゃないかと思うんだ。」
「…それもそうだな」
俺ら元6年1組の生徒は超常現象を経験している。ゲームの身体能力を手に入れたり万能の体力回復薬をが出てきたり。そんななんでもありな世界線だ。
「認めるしか…ないのか。」
その俺の独り言を幸司郎は聞き逃さなかったらしい。
俺のことをちょこっと肘でどついてきた。
顔を見るとこちらを見てうんと頷いてくる。
(認めたくはないが…確かに俺は一人じゃない)
俺は再び山口の話に集中することにした。
「…というわけだ。ここでみんなの意見を聞いてみたいと思う。」
そこでアイドルの阿弥が手を挙げた。
「正直に申し出てほしい。私のことをAIだと思っている子はいる?」
「俺のことをAIだと思っている奴も名乗り出てほしい。」
続いたのは渡辺だ。
「…そうだね。位置を変えようか。阿弥のことを疑っている人がいたら入り口付近に。京磨を違っている人は奥側に行ってもらおう。」
そうだな、俺が怪しいと思っているのは…この2人ではない。
それは幸司郎も同じようだ。
他にもちらほらと何人かいるな。
そいつらは自然と中心部に集まっている。
「君たちは誰が怪しいと思っているんだい?」
一応、クラスリーダー兼議論のまとめ役としてだろう、中心部に残っている山口に問われる。
「俺は…やまゆりが怪しいと思う。鬼ごっことは関係ないが…終わってからべらべら話始めるあたりが、どうしても本人っぽく見えない。」
「奇遇だな、俺も百合が怪しいと思う。」
俺の考えに幸司郎が同調する。
あたりを見渡すとそこにいるクラスメイトは皆やまゆりのことを怪しいと思っているようだった。
「そうか。じゃあ百合のことを怪しいと思う人は中心のステージのほうへ来てくれ。」
そうするとクラスが3つに分かれることとなった。
・アイドルの佐藤を怪しいと思う奴
・渡辺を怪しいと思う奴
・やまゆりを怪しいと思う奴。なお、俺と幸司郎はここにいる。
それぞれ人数を数えてみたがちょうど10人ずつだ。
これは結構な心理戦になるな…
ただまだ投票までには時間がある。
1人1人説得できる時間もあるはずだ。




