いったん白紙に戻して
今やり玉に挙がっているクラスメイトを3人上げてみよう。
1人目は渡辺 京磨。
ずっと模擬投票で1位を取ってきている。
ただ、京磨に入れている理由なんてほとんどが「なんとなく」というのは大体が察しているところだ。
ここから巻き返しだって十分あり得る。
2人目は佐藤 阿弥。
1回目の模擬投票で1位を取ってから、2回目以降は2位以下に収まっている。
ただ、本当に処刑されたくないという欲望からか先ほど無理に渡辺を陥れようという発言が見られた。
そこから本当はAIじゃないのかという疑惑が再燃している。
3人目は山田 百合。
意外なことではあるが、これは鬼ごっこや模擬投票云云かんぬんの話ではない。
どちらかというとその後のフリータイムの時間帯で普段とは打って変わって内気なところを打破しているのが逆に怪しまれている。
今のところこの3人以外はやり玉に挙がっている印象はない。
じゃあ、俺が誰をAIだと思っているのかと言われると俺にもわからないというのが正直なところだ。
今までの模擬投票だって適当に入れてきたわけだしな。
ただ、本番で誰かが本当に処刑されるとしたらそこは真剣に考えなければならない。
そう、「本当に処刑されるなら」。
俺はどうもそこの前提を信じることが出来ないのだ。
「なあ」
ちょっと険悪モードが漂うクラスメイトの中でつい俺は声を出してしまった。
一斉にこちらを見るみんなを見て若干うろたえてしまう。
だが、もう戻れないと観念して言葉を続けることとした。
「ここが電脳世界だってことはわかるんだ。だけど、本当に俺らが処刑されるっていうことがあり得るのか?」
「伊藤くんは何を言いたいの?」
返してきたのは落合。
「ちょうどいい、落合。俺たちを電脳世界に幽閉させる技術ってのはあるんだよな?」
「あまり民間には普及されてはいない。だけど、技術だけどあるにはあるよ。だけど、まだテスト段階だけど。」
「それってどんな装置なんだ?」
そういうと落合は黙って上を向いてしばらく黙った。まるで心の中に何かと葛藤があるように。
「あの技術は──全身を覆うカプセルの中に被験者の身体を入れるの。頭の中の神経とは別途特殊なマシンを使ってつなげるようになってる。」
「ちょっと待てよ。ということは昨日の話に戻るかも知んねーけど俺らってそのカプセルの中まで入れられてなきゃいけねーってことじゃんか」
幸司郎が突っ込んだとおりだ。
「誰かそのカプセルの中に入った記憶がある人はいるかい?」
山口からの問いかけにうんとうなずくものは一人もいない。
「落合。一応聞くが、そのカプセル以外に電脳世界に飛ばす技術ってのはないんだよな?」
「ない。それにカプセルは1台億はくだらない値段がする。それをこの人数分持ち合わせられるなんて…」
まるであり得ない、と言わんばかりの落合の表情だ。
「それで、結局はそのカプセルの中にいる人物を処刑することは可能なのか?」
「現状、カプセルのギミックを使って被験者をどうこうする技術はない。」
「そうなると本当に処刑されるかどうかが微妙じゃないか?」
俺からの提案にクラスの一同は黙り込んでしまう。
そこで、声を上げたのは渡辺だ。
「でもよ、住んでいる場所がバラバラな俺らを一堂に集めることが出来るっていうのは相当なやり手だぜ。身分だって全然違うのに。」
渡辺の指摘はもっともだ。
「だとしたら俺らを処刑できるってわけにはならないわけだ。だから俺たちが議論したって…」
「その場合どうやってこの夜をしのぐつもりだい?」
山口からの指摘はもっともだ。
俺にはその代理の案は思いつかない。
ということは、俺らは嘘か本当かわからない投票をしなきゃいけないのか…?




