説得のための説得
(3,2,1…!)
『ゲーム終了』
心の中でのカウントダウンを終えた瞬間にゲーム終了がアナウンスされる。
『鬼ごっこの全日程が終了しました』
やっと終わった。
俺は最終戦は人間のまま逃げ切ることが出来た。
場所は校舎2階の図書室。
一番最初に籠城を試みたところだ。
なんだかんだ言って、生き残ったのは初めてだな。
息を整えながら俺は正門へと歩みを進めるため、階段へと向かう。
途中、最初に鬼だった五百旗頭とばったり会う。
ちょうどお互いに誰かと話しているわけではないので、2人で戻ることにした。
「なあ、瑞樹。お前、誰がAI(人狼)か。目をつけてるのか?」
「まあ、なんとなくは、かな。」
「流石、入国審査官だな。俺にはさっぱり。AIの特徴がわからない。」
入国審査官だからAIが得意っていうか…まあ確かに業務で使うことは多いけれども。
それって漁師も同じなんじゃないのか?
「今の時代AIを使わない職業なんてないだろう。得に陽国では。」
「…そうだな。俺が漁師をやれてるのもAIのおかげだ。ただ、直感に頼っているところが多いがな。」
「なんだ?例外でも見つけてるのか?」
そういうと黙りこくってしまう五百旗頭。なんか沈黙が重たいな。
こういう時に別のやつと出会うといいのかもしれないが、なぜか誰とも遭遇することなく昇降口までたどり着く。
そのまま通り抜けようと思ったら、隣から気配が消えたのが分かった。
振り返ってみると五百旗頭が立ち止まっている。
「どうしたんだよ。早く戻──」
「お前、京磨のことどう思ってる?」
その質問に俺も歩みを止める。
京磨──渡辺のこと、心配してるんだな。
さっきの一節は五百旗頭が知る由もないが、どう答えたもんか。
「俺はあいつが人間であることをうまくアピールできてねえ気がするんだ。なんかこう、うまく表現できんのだが、AIだとあの人間臭さは出せねぇ、そう思う。」
漁師の直感も侮れないな。
そう思った俺は、正直に答える。
「あいつは人間だよ。AIだとしたら、感情が制御できていなさすぎる。」
正確に言うと可能性としては、あの感情の波も演じられている可能性だってある。
だけど、あの支離滅裂ぶりはAIには絶対に学習できない部分だと俺は感じる。
「そうだよな、だけどあいつはこのままいくと…」
模擬投票結果通り獲得票1位を取って処刑される。
その言葉は声に出さなくてもわかったのだろう、五百旗頭は目線を下に下げる。
一番最初に説明を受けたとおりだ。
だが、肝心なのは当人がどう思っているのかということ。
最後の鬼ごっこでもあいつがメンタル回復できたようには感じなかった。
してたらとっくに俺らは全滅して鬼ごっこは終わっているだろう。
「俺は、あいつがどうにかしたい、って思ってるように感じたぞ。」
その言葉にこちらを向く五百旗頭。
一人で考えさせてもダメだったら、最終的には誰かがケツを叩くしかない。
それは俺のようなただの男のクラスメイトというよりかは仲がいい五百旗頭のほうが適任だろう。
「励ましてやれよ。俺よりかはよっぽど向いてる。」
「といってもだな…」
五百旗頭はある意味空気が読めない男だ。
それが一周周っていい方向に行くところが魅力でもある。
「実は俺はすでに声をかけてるんだ。でも、駄目だった。」
俺は五百旗頭に越智と渡部と一緒にいた一部始終を話す。
俺がだめなら親友に頼むしかない。
「俺にあいつを励ますことが、できるだろうか…。」
「できなければあいつは死ぬ。頼む。間違った選択はしたくない。それはお前も同じだろう?」
再び訪れる沈黙。
そこに女子の一行が近づいてきた。
「よお!ミズキじゃーん!何してんのー?もどろー?」
その中の一人、越智が右手を挙げてくる。
どうやら話は終わりの時間のようだ。
「渡辺のこと、頼んだ。」
俺は越智の集団に加わって校門のほうへ歩みを進める。
五百旗頭はまだ動けずにいた。




