2回目の鬼に選ばれたから鬼内で話し合ってみる。
2回目の鬼に選ばれた。
まだ鬼ごっこ開始までは時間がある。
役割が人間である他27人とは少し距離を置いて俺たちは話すこととした。
選ばれたのは、俺、木村、渡辺の3人だ。
俺はともかくあと二人は元気だ。
渡辺はプロアスリートだし、木村も運動が得意だ。それに加えて第一回では動いていない。
「なあ、渡辺。お前一応模擬投票で一番AI(人狼)だって疑われたんだろう?なんでそんな余裕そうなんだよ?」
俺はさっき目が合った時にニヤッとされた理由がよくわからなかったので聞いてみることとした。
「なんでって、まだ1回目だし。これで俺死ぬって決まった訳じゃないし。」
「でも、野球選手にしては体力あるっしょ?私も親方とかの影響で野球見るんだけどそんなに走ってる野手見たことないよ?」
おっと、木村は野球に結構精通しているパターンの女子か。
というか準備体操念入りだな。まだ、身体を動かす系の仕事に就いているのだろうか。
ん?親方?
「俺はいつでもフルイニング出場できるように準備してるからな」
「控え選手がよく言うよね~」
その言葉は渡辺の心を深くえぐったらしい。
そうか、野球のニュースはある程度しか知らない。さすがに2034年国際大会での陽国優勝メンバーくらいは言えるが。もちろん、その中に渡辺の名前はないが、控え選手なのか。
「伊藤は全然運動ムリ、って感じじゃないよな」
「確かに~瑞樹さっきも結構動き回ってたもんね、知らんけど」
木村…それはお前が放送室に立てこもってたからだ。
「俺か?入国審査官やってる関係で、基礎体力はつけるように意識してる。最近の業務はずっと立っているんだよな。だから同年代平均よりかは体力はあると思うぞ。」
「へーまあ、真面目な伊藤にはそれがあっているんだろうな。」
「頭ダイヤモンドより硬そうなところあるもんね~」
そうニシニシと笑う木村。
なんだダイヤモンドより硬いって失礼な。これでもまだ20歳だぞ。
ここにいるやつ全員同年代か。当たり前だ。
「そういう木村は何をやってるんだ?」
「ウチ?私は師匠のところで宮大工見習いだよ、中学出てすぐって感じ。」
だからみんなみたいに頭よくないよ~なんてケラケラ笑って見せるが、頭の回転が悪くないのはさっきの放送室籠城の件からよくわかる。
──AI(人狼)じゃなかったらの話だがな。
こんなことになるんだったら、さっきのフリーの時間に木村の配信でも見ておくんだった。
なんとなくで流れてきてしまっているこのデスゲーム。
そろそろ俺も生き残るためのスイッチを入れるべきかもしれない。
「そういやあ、今回の<アイテム>ってなんだっけ?」
「<体力回復薬>だったよね。私は今いらないかな~」
今回の鬼ごっこ、1回戦のみ通常のルールで行われて2回戦以降はアイテムや追加ルールが適用される。
先ほど人工音声の説明によると体力回復薬を初期の鬼に3つ供与することとなっている。
これは他人に譲渡してもいいらしい。
「俺も今はいらないな、なんかヤバい薬物っぽいし。」
確かにいつの間にかポケットに入っていた<体力回復薬>はゲームでしか見ない淡い黄緑色の見た目をしている。振ってみると、粘度はそんなに高くない液体のように見える。
試験管のような瓶に入っているということもあって、一層怪しい。
効果は飲むと即効性らしい。
「ねえ、瑞樹。飲んでみてよ。」
「お、俺か?」
「だって、今一番必要としているの。瑞樹でしょ。」
「そんなこと言われてもなぁ…こんな現実世界に存在しない、ザ・回復薬を飲めって言われても。」
そう考えると異世界転生と化した現代人はよくポーションとかをごくごくと飲めるものだ。
だが、俺も体力をすり減らしたっていうところもあるし。。。
「これ衛生省の許諾得てるのか?」
「…このデスゲームでそんなこと考えちゃう?さすが真面目君!頑固者~」
これ以上木村に茶化されたくないので俺は瓶のふたを開けて飲むことにした。
どうせなら一気飲みだ!




