グラウンドでの追いかけっこは頭脳戦?
放送室の3人をあきらめて俺はグラウンドにいるクラスメイトを追うことにした。
「瑞樹!そっちに行った!」
今、俺と山口が追っているのはクラスの元気印。
運動バケモンの五百旗頭だ。
確実に校庭の隅っこまで追い詰めた、今ならタッチできる!
「タッ──」
確かに触れた。と思った瞬間。
五百旗頭は身体を捻ってギリギリでかわす。
こいつ、筋肉だけじゃなくてちゃんと体力と反射神経が伴っているタイプ!
中高何部だったっけ?
柔道部でも納得できるし、陸上部と言われても納得できる。
一番納得できるのは、今漁師というものすごい筋肉勝負──偏見──をやっていること。
数的にはこっちが優位でシチュエーション的にも優勢なはずなのに。
全然タッチできない。
こいつこそAIなのではないか、いや。こいつはもともとこんなやつだ。
俺と山口は両手に膝をついてゼーゼーと息をする。
「そこの男子!京磨を捕まえて!」
その宇都宮の声に声を上げてみると
目の前に風が吹く。
何事が起きたかと思えば、プロ野球選手の渡辺がフットワーク軽く俺らの周りを駆け抜けていったところだった。
やや遅れて女子の宇都宮や関が続いていく。
こっちも体力お化けだな。
…渡辺はそれが仕事なのか。
あ、油断しているうちに五百旗頭が逃げた。
「山口。残っているのは何人だと思う?」
息を整えながらなんとか山口に状況判断を問う。
「少なくとも、グラウンドにいるのはゆーとと、京磨だけだろう。あとは放送室の3人。」
こっちも結構きつそうだな。
「一応聞くけど俺ら以外に図書室で捕まったやつらは…」
「休んでもらってるよ。無理はいけないからね。」
「そうだね。それが賢明。」
急に横から会話に入ってきたのは落合。
「私たちのクラスは全体として勉強も運動も可もなく不可もない。。運動でいえば、五百旗頭や渡辺くんのような全国レベルの子もいる。だけど、山田 百合や村上さんのように壊滅的にできない子たちもいる。」
「解説…ありがとな。そんな落合は今鬼なのか?」
「うん、彼に捕まったよ。」
落合が指さす先には校庭の隅にあるジャングルジムを背中に眠っている渡部がいた。
あいつやる気ないのか、、、いや落合を捕まえている時点でやる気はあるのか。
「私があそこで休んでいる予定だったんだけどね。真っ先に捕まって場所取られちゃった。」
「お前やる気はあるのか…?」
「鬼ごっこ自体にはあまりやる気はない。どちらかというと人狼ゲームのほうに頭のリソースを割いてる。」
ヘックショイ!
急に大声が聞こえてきたと思ったら山口のくしゃみだった。
確かに身体が冷えてきたな。
今、一月だし。
「大丈夫?居酒屋のテーブルで何か暖かいものでも頼もうか?」
「いや、いい。ところで五百旗頭を捕まえる方法を一緒に考えてくれると嬉しいんだが──」
「言ったでしょ。鬼ごっこには興味ない。ただ、」
落合が顔をグイっと近づけてくる。
異性とこんなに距離が近くなることがないからちょっとだけドキッとしてしまう。
その相手がインテリだろうと。
「あなたたちの一挙一動を見てる。そこから推測する。あなたたちが人間なのかどうかを。だからちゃんとやってよね。」
とだけ言って落合は去っていった。
「瑞樹、そろそろまた捕まえに行かないか?風邪もひいてしまう。」
「ん?ああ、そうだな。」
目を前にやると今は幸司郎たち男子数名とバトルを切り広げている五百旗頭が見える。
加勢して一気に捕まえてやる。




