放送室に立てこもっているクラスメイトにタッチしたいんだけど。
「おい、どうやって開けろってんだよ!」
右隣で幸司郎のほうのがドアを蹴り飛ばす。
「やめろよ、壊れたらどうする。」
「壊れるのも何もこんだけ固く守られてたらよ!」
俺も慰めるが、松井がいら立つのもわかる。
図書館でクラスメイトが一斉に捕まった後、鬼の一部である俺・佐藤・松井の3人が次に向かったのは放送室だった。
ただ、何人が中にいるのかわからないが、、、
「籠城はアンフェアだろ!」
松井が放送室のすぐ横の壁を蹴り上げる。
どうやら中の集団?は職員室からご丁寧に放送室のカギを取り出してきたらしい。
今、宇都宮がマスターキーを探しに職員室にいるはずだが、一報もない。
苛立つのも無理もない。この膠着状態が10分は続いている。
どうやら公平性を重視した図書館のグループとは異なり、放送室の面々?は籠城を選んだようだ。
「落ち着いて、幸司郎。」
アイドルの佐藤がそう諭す。
「もしかしたらなんだけど、これはこれでいいのかもしれない」
「どういうことだよ!捕まえられないじゃないか!」
その佐藤と松井のやり取りを聞いていてふとひらめく。
「これが人間である証明ってことか?」
そう、この人狼ゲーム。一番重要なのは「自分をAIではなく『人間』だと証明すること。」
さっき俺たち──俺・関・山口は人間としての証明をあの図書室攻防戦でやったつもりだった。
「つまり、この中にいるクラスメイトは籠城することで手堅く勝ちに来ている。それで、自分たちが人間であるということを証明しようとしている、ということか?」
「多分そう。私の直観だけど。」
アイドルの佐藤の言う説は一理ある。
「あー、でもそれだったら誰が中にいるのかわからないんじゃ意味がないだろ!」
「別に中にいたってあとから言えば良い。」
それはそうだ。
ただ、いくら最初の鬼の3人がゆっくり数えていたからと言って、10を数える間。
放送室のカギを職員室から取り出したうえで30分の籠城を選ぶというのはいかにも冷静な判断すぎやしないだろうか。
「ねえ、中に誰がいるの?何人いるの?」
佐藤がドアを軽くたたきながら落ち着いた声で聴きだそうとする。
「──3人だ。」
やや間が開き低音ボイスが帰ってくる。
「あなたは誰?」
「──林だ。元放送委員の。あとは、松井所等。女子だと木村だ。」
確かに林、それに木村は放送委員だった。所等の方の松井は林と仲が良かったはずだ。
「今の私たちの会話聞こえてた?」
「──うっすらと。これが俺らのやり方だ。制限時間の30分が来るまでここを開けるつもりはない。」
「人間にしちゃあ冷静なやり方じゃねぇか!しょさ!」
松井がもう一人の松井に食って掛かろうとするのを俺が右手で制する。
「放送室にカギ持って籠城しようってのは、私が考えたの。悪い?」
落ち着いたトーンで返してきたやや高めの声。おそらく木村だろう。
「私がこの第一ゲームは放送室のカギを持って立てこもれば絶対に勝てるって。
ルール聞いてそう思ったの。職員室に寄り道した分、男子の方が早くついていたけどね。」
その冷静さは悪くはない。だが、
「あの状況でその冷静さがAIっぽく聞こえるぞ、木村。」
幸司郎の方の松井が聞くのも無理もない。
だが、
「陽花里はもともとメリハリがついた子だった。違う?」
佐藤が言うのも事実。
小学校の時から遊ぶときは遊ぶし真剣な時は真剣で奇抜なアイデアを出す奴だった記憶がうっすらとある。
男子である俺がそのイメージを持っているのだ。女子である佐藤がもっと強いイメージを持つのはわかる。
「ここで疑い合いをしても時間の無駄だ。ほかに行った方がいいんじゃないか。」
俺は佐藤の方を向きそう提案する。
佐藤はやや考えたあと、そうだね。と返す。
「職員室にいる愛聖に声をかけてから他を探ろう。流石にほかに籠城してるクラスメイトはいないと信じて。」
そう言って俺たち3人は放送室のドアから離れた。




