図書館に籠城していればバレない、、、はず
全力疾走で二階の図書室についたとき、鬼である宇都宮・アイドルの佐藤・松井が校舎に入ってくるのが見えた。
校庭にいるクラスメイトは男女含めて5、6人。既に捕まったものはいるのだろうか。
高校を出て、入国審査官になるまで様々な研修があった。
陽国では不審者を取り押さえるための体術などの運動は多かったが、ここまで全力疾走をしたのは高校の体育祭ぶりではないだろうか。
片手で窓の縁に手をかけながらちょうど入ってきた山口に声をかける。
山口はカウントダウンが始まった瞬間に運動をしていない元児童に声をかけたのであった。
「なあ、山口。ここでよかったのかよ?」
「大丈夫だよ。花菜?君は図書委員だったよね。書庫のカギの位置はわかるかい?」
「ウ、ウチ!?変わってなければそこにあるよ…」
村上が指をさした先。貸し出し用のバーコードリーダーが置いてある奥側にキーケースがあった。
山口が見物した後に書庫と思われる鍵を見つけだす。
そのまま窓側にある「書庫」と書かれたドアを開錠する。
貸し出しカウンターが入り口側にあるので、入り口と書庫の扉は同じ側にあることになる。
よくもまあ書庫があるなんて覚えていたよな。
「君たちこの中に隠れるんだ。」
山口が誘導したのは運動が得意でない奴ら。
男子では鈴木・田中・兵頭の3人。
女子では跡部・越智・川本・村上・Wやまあおに山田─トリプル山田の6人。
逆にそこそこ運動ができるのに山口についてきたのは、山口含め俺と関の3人だ。
要は、図書室に10人。全体の3分の1のクラスメイトがいることになる。
「鬼が階段を上がって来てるみたい。」
自然と見張り役を買ってくれている関がそう報告してくる。
「どうする?山口。ここは逃げ場がないぞ?」
そう。ここ、図書館は二階の一番奥に位置する。どこかにつながっている部屋もないので、ここに鬼が入ってきた瞬間俺たちは袋の鼠だ。
「僕たちでかく乱しよう。ゆいは机からやや頭を出す感じで隠れて。僕と瑞樹は隙あれば図書室から脱出して書庫にはいかせないようにしよう」
その山口の提案は良いが。。。
「あの鬼の中に図書委員はいなかったはずだよな?鬼ごっこが終わるまで扉を閉めておけばいいんじゃ──」
「「それはフェアじゃない」」
関・山口が口をそろえてそう言う。
そして、お互いを見合いやや恥ずかしそうにうつむく。
こんなに公平性を重視する奴らだっただろうか。
「書庫は換気扇が無いからその扉閉められたら窒息しちゃう。。。」
書庫の奥から村上のか細い声が聞こえる。
そうか、この学校の書庫にはそういうのがないんだったっけか。
「そういうわけだ。ゆい。君はさっきの通り机からやや見える位置に隠れて。そうだ、見つかっても書庫から死角になるような位置が良い。」
返事は行動で示す。関はやや頭を出して入り口から見えるように。
俺と山口は隣同志の書棚の陰に隠れた。
やや遅れて3人分の足音。
(ここにいることがバレてたか!?)
「見つけた!」
一番最初に聞こえたのはアイドルの佐藤の声。真っ先に関の方へ向かっていく。関は俺たちとは反対方向に逃げていく。閲覧机の後ろで膠着状態になる。
次に聞こえてきたのは宇都宮の声。
「幸司郎!中に入って!私がここで門番やってるから!」
あいよ、という松井の声。
しまった。完全に退路が絶たれた形だ。
そう思った瞬間隣に隠れていた山口が俺とは反対方向に飛び出す形になった。
鬼の松井に見つかる。
ここで俺に残された選択肢は?
今起きているのは
机越しに膠着状態の関<人間>vs佐藤<鬼>
追いかけっこが始まっている山口<人間>vs松井<鬼>
今見つかっていない戦力になる<人間>は俺だけ。
そして、戦闘状態に入っていない鬼は見張り番の宇都宮だけ。
一か八か。ここで打って出よう。
俺は本棚から身を出し入り口に向かって走る。
宇都宮がやや面食らった表情を見せる。
ここで出来ること。それはほかの<人間>2人が図書室から脱出するように、宇都宮を門番から引きずり出すこと。
一瞬俺から見て左側にステップを踏んで左側に行くように見せる。
そこで宇都宮が手を伸ばした瞬間にステップを踏んだ左足で踏ん張り右側に飛び出す。
我ながら完璧なフェイントだったはず。
ただ、宇都宮の方がやや上手だった。
「タッチ!」
宇都宮の左手が俺の腰にあたる感触。
その瞬間左手のモバイルYOHにわずかな振動。
2,3歩慣性で進んだ後にモバイルYOHを見ると<確保>の文字。
「「タッチ!」」
まもなくほぼ同時に男女の声が図書室の中から聞こえる。
それぞれ佐藤と松井の声だ。
その後書庫に隠れていたクラスメイトはあっさり捕まった。
図書室、陥落。




