俺たちがよく知っている場所でなんかゲームが始まるらしい。
クラスメイトが続々と校庭に出てくる。
計30人。
出入口は正門の一部につながっていた。正門を抜けて校庭を横断すると見慣れた校舎がある。
卒業してから全く来ることがなかった。
俺たちが卒業した第三小学校の正門は校庭にある。
校庭は、田舎あるあるだろうか。小学校のサッカー2面ほどの大きさがある。
休み時間ではよっぽどのことがない限り学年ごとの縄張り争いということは起こらなかった。
ところどころを見渡してみると卒業した時とは様子が異なっているようだ。
五百旗頭が筋力自慢をしていたジャングルジムの色が変わっている。
鉄棒で体育の授業でかっこつけて怪我したんだっけ。
そんな校庭へ最後に出てきたのは佐藤 阿弥。
顔に血色がやや戻ってきたようだ。
佐藤が校庭の土を踏んだ瞬間、クラスメイトの集団の前にどこからともなくパネルがもう1度表示される。
パネルの内容はさっきまでと同じだ。
『ここは姫野県梅山市第三小学校の校庭です。
皆さんには10:30、12:30、14:30、16:30の4回にわたって鬼ごっこを行ってもらいます。』
その言葉にクラスメイトの顔がややこわばるのがわかる。
『鬼は最初は3人。こちらでランダムに決めさせてもらいます。
鬼ごっこのルールは一般的なものと変わりません。
鬼が人間を捕まえます。捕まった人間は鬼として人間を捕まえてください。』
そんなもので誰が人狼(AI)か分かるのか。
その疑問をぐっと殺して話を聞き続ける。
『一度目の鬼ごっこは通常ルールで制限時間は30分。フィールドは校庭及び校舎内。
2度目以降は徐々にアイテムが有効になります。
各鬼ごっこの前30分にはこの位置にご集合ください。あなたの最初の役割──鬼か人間かをお伝えいたします。
お手元のモバイルYOHをご確認ください。そちらに役割を表示しております。』
そう言われ各クラスメイトは自分の左腕もしくは右腕を確認する。
何かを操作するまでもなく、俺のモバイルYOHには<役割:人間>と書かれていた。
それをどのように評価したらいいかまだ分からない。
──ただの体力勝負ではなくなる。
体力勝負ということは五百旗頭が有利になる。
待てよ、本当に人格がコピーされているのなら。
「ちょっと答えてよ。人狼(AI)はどうやって私たちの人格をコピーしたの?」
小さく、だが静寂を確かに突く山田の言葉が届く。
空気的に説明は終わりだ、という雰囲気を出していた人工音声に待ったをかけた形だ。
『それは答えかねます。ただ、あなたたちの推論は<とても良いもの>でした。以上で説明を終えます。』
そう言い終わると、パネルとともに人工音声は消えた。
明確な言及は避けた。だが、<とても良いもの>という表現のおかげで、人格がコピーされている、ということはほぼ確定とみていいだろう。
問題はヒューマノイドロボットが人狼(AI)をやっているかどうかだったが、その線も薄いのではないだろうか。
なぜなら、この現実世界で実装されていないワープ機能があるからだ。
落合が言うとおりなのであれば、この世界にその理論は実装されていない。
さっき山口が見せてくれた朝食のワープ。そして、今クラスメイトが経験した居酒屋(ゲーム会場)から校庭へのワープ。
国のトップオフトップ機密で実は実装されていました。ということはないだろう。国がこんな道化をやるとは思えない。
だから、これは仮想世界の話、と考えるのが良いのではないだろうか。
確かニュースでヒトの脳とコンピューターを繋ぐ技術のニュースがあった。
それが仮想世界にいけるものなのかどうか、というものに関しては報道はされていなかった気がする。
ただ、技術の差としては、
「6年1組の元児童は仮想世界へ誘拐された」という線が濃いのではないか。
もし、そうなのであればヒューマノイドロボットなど手の込んだものは必要ない。
仮想世界でアバターを用意すればよいのだから。
そして、もし山田の仮説があっているのであれば──本当にSNSにアップロードされている情報を基に人格をコピーしたのであれば──コチラに対して優位性がある。
なぜなら、体力が必要な投稿をする人は一般的には少ないからだ。
ただの話し合いよりも人狼(AI)側がボロを出す可能性が高い。
そういったところだろうか。




