人格がコピーされているかもしれないってこと
(人工音声の指示で、ゲームは明日の10時から開始となっている。だから、念をもって明日は9時にここに集合だ。いいね?)
昨日の山口の指示はある程度正しかったようだ。
もし、10時に間に合うような集合になっていたら混乱に陥っていた可能性がある。
クラスメイトはまだ集合率9割ほどになっている。ほとんどギリギリで来た。
それぞれがモバイルYOHを確認している。
「Proof」という配信アプリの存在、そしてこちら側のゲーム開始とされている10:00より2名のクラスメイトが配信予告をしている。
女子側で渦中にあるうちの1人は佐藤 阿弥だ。もう1人配信告知を出しているのは山田 百合。
もともと友達の少なかったゲーマーの山田は、同じく大人しめのWやまあおの二人、山田 靑井、山田 蒼の3人でグループをなしている。
配信予告を出しているのが、苗字被りしているのがちょっとややこしいな。
まあ、佐藤さんも山田さんも多い苗字だから仕方ないか。
後者は比較的落ち着いているが、前者は非常に取り乱している。
「ちょっと、私お手洗い行ってくる。」
顔面蒼白のアイドルの佐藤が化粧室へ向かう。
恐らくいかなるドッキリ番組を仕掛けられてもあんな顔はしないだろう。
「阿弥には自覚はなかった。百合は?」
そう山口がゲーマーの山田に確認を取る。
山田は首を横に振ることで答えた。
「昨日、画面に映った自分たちの姿。」
隣に立っている幸司郎がそう呟く。
俺はその時意識がもうろうとしていたが、そのようなシーンがあったということは宇都宮から昨日聞いていた。
クラスの注目が一斉に彼に向く。
「いや、どうって訳じゃないけど、あれらもやっぱり俺たちなんじゃないか、って」
「やっぱり、か」
珍しくギリギリに来たウチの1人、五百旗頭が続く。
「こーしろやみずきはワープ?してきたから取り乱していたかもだが、」
そう前置いて五百旗頭は続ける。
「あの後、俺らクラスメイトが1人もしくは2人で映し出されていた。」
「俺らは人格をコピーされたってことか?」
「ちょっと待て、そんなことどうやるんだよ」
そもそもどうやって俺たちはこんなことに巻き込まれたんだ、と昨日の水掛け論がこのままだと始まってしまう。
「あのさ」
思わぬ声が女子側から聞こえる。
声の発信主は以外にもゲーマーの山田だった。
「みんなって配信ってやったことある?」
「ない、けど動画だったら上げたことあるよ。」
ゲーマーの山田の応答に関が答える。
「じゃあモバイルYOHのアバター機能は?」
質問の意図が掴めない──だが、アバター機能を使ったことない奴なんていないだろう。
1か月に1回くらいは誰にでも寝坊とかで顔を隠したくなるようなものだ。
同じ考えをクラスメイトも持ったらしい。そのように首を縦に振るものが一定数いる。
山田は続ける。
「YOHだったらさ。ウチらの外見わかるわけじゃん。アバター機能使うときに全身スキャンするから。」
確かに。あれは基本的には顔だけをアバター化するもの。ただ、頭の位置を自然とするため、という名目で使用の際には全身スキャンだったはずだ。
「そして、SNSにYOHって入ってるんだよね?なら、ウチらが言いそうなことくらい、推測できるんじゃない?」
昨日ほとんど話さなかった山田にしては熱弁しているし筋も通っている。
今の世の中、一回もSNSに投稿をしたことのない若者なんていない。
そのテキストでの言動、動画での立ち振る舞いをすべて学習すれば自分の人格をコピーしたようなことができるのか?
「それは、ヒューマノイドロボット、ってことかよ。」
隣の幸司郎が山田に尋ねる。
「わかんないよ。そんなの。」
そう言い、山田は下を向いた。
これ以上、何かを言うつもりはないらしい。
「やめよう。これ以上、推測で何かを語るのはよくない。この話は次の指示があるまでやらないこと。いいね?」
山口が止めにかかる。賢明な判断だ。
もしこのまま議論が進んだら、「ケガ人を装っていたヒューマノイドロボット=AI」となるのは松井で確定だからだ。クラスの分断は避けたい。




