空はこんなにも
……あーあ!
空はこんなにも青いのに、私の気持ちはちっとも晴れやしない!
そんな風にぶうたれてみる。
「ほんっとバカ、ほんっと、バカバカ……!」
大親友とけんかした。こんなの初めてだ。ムカムカが収まらなくて、……どこか、痛くて。
「なにさ、ちょっとからかっただけじゃん……なのに……」
心当たりってやつはちょっとあって。でも、だけど、それであんなに怒ることないじゃん。
私はその時のことを思い返し、またむすっと口をとがらせた。
「ユータくんと付き合ってんの?」
それが引き金だった訳じゃない。
「え……なんでそんなこと……」
「やっぱり! そうなんだ! ね、ね、どうなの? 好きって!」
興味本位だったんだ。
私はそういう〝好き〟がまだよくわからないから。
大親友が〝そうなった〟って聞いて、すっごくうれしかったし、同時にうらやましかった。
「ち、違うよ、ユータとはそういうのじゃなくて……」
「えー? でもみんなそう言ってるって聞いたよ?」
「……ミユちゃんって、ミユちゃんも……そうなんだ」
「? ねぇ聞いてるの? ユータくんとのこと、もっときかせ
「ほっといてよ!」
そんな風に叫んで。私は里香ちゃんに突き飛ばされたんだ。
……やっぱり、私が悪いのかな。もう、なんかぐるぐるしちゃって、よくわからない。
「美優」
名前を呼ばれる。優しくて、でもなんかトゲのある声。
「……お姉」
「よっ」
今年、大学に入った、私の姉だ。背が高くて、美人で、眼鏡をかけてる。
「……学校は?」
「今日は午前だけ。大学生は自由なのよ」
「……いいなぁ、私も自由になりたい」
「……? なんかあった?」
私は道すがら出会ったお姉に、今日のことを話した。
「謝んな」
ソッコー怒られた。しゅんとなる。
「……でも、私……、好きとか、よくわかんなくて……早くお姉みたいな大人になりたくて……」
きっと、きっかけはそれだけだったんだ。
大親友が、離れていっちゃう気がして。私も早くそっちに行きたいのに、そっちになりたいのに。
「……、大人なんて、ろくなもんじゃないよ」
「そんなことないもん。だってお姉、すごくカッコイイし」
「……そんなこと言ってくれるの、美優だけだよ」
少し照れたようにふいっと顔をそらしてる。何か変なこと言ったかな。
「でも仲直りは別。ちゃんと伝えて、ちゃんと謝ること。……それが出来なかったら、しばらく遊んでやんないよ」
「え、ええ! ……う、……ん」
うんでもダメでもなくあいまいにうなずいた。それくらいしか出来なかった。
「よし、良い子だ」
そう言ってお姉は乱暴に私の頭をなでてくる。
「ううう……」
「優しくなるのって大変だけど、美優はちゃんとそういう人になれるって、私は信じてるよ。そういう大人に、まずはなんな」
「……、うん……」
今度は、ちゃんとうなずけた。そんな気がしていた。