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お題 子供の頃の夢
『将来の夢』
そう書かれていた子供の宿題用紙を、健司は難しそうな顔で見つめていた。
「うーん……」
プリントには三つの候補を埋める欄があり、それぞれになりたい理由などを書くようであった。
「お父さんは将来、何になりたいって書いたの?」
そう聞かれ気まずそうに俯き彼は考えていた。
思えば、子供の頃に見る夢など単純なものだ。
その頃に流行っていたから、『卓球選手』なんて夢を見たこともあったし、もっとシンプルに『公務員』なんてつまらない夢を書いた覚えもある。
そんな風に答えると「ふーん」と興味なさげに答える。鉛筆を鼻の上に乗せて悩む子供の表情に、上手く言えなかった自分に肩を落とす。
子供の頃の方がもっと簡単に夢を追うことが出来たのに、大人になった今は、夢を持つことも諦めることが多くなった印象だった。
とすれば、と健司は思案し。
「で、でも、今は颯太と、お母さんとずっと一緒にいるのが夢かなぁ」
「……それ夢って言わないよ」
とぴしゃりと言う息子の厳しさに、少しへこむ健司なのだった。