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お題 夏の気配

 雷が鳴った。その雷鳴に引き回されるように、大粒の雨が地を打ち付ける。

「止まないね……」

 隣で言う君の声に小さくうなずいた。これは当分、帰れそうにないかもしれない。

「そういえば、うちのおばあちゃんが言ってたな。雷が鳴ったら梅雨が明けるんだって」

 初耳だ。先人の知恵ってやつかな。僕は薄く笑いながら、

「雷が湿気を払ってくれるなら、万々歳だ」

 そう声に出した。じんわりと滲む汗が頬を伝って落ちていく。梅雨は嫌いだ。じめじめとしていて、落ち着かない。

「だから、雷様なのかもね」

 君はそう言って僕に笑いかける。そうかもしれない。

「だけど雷はやっぱりちょっと、苦手だなぁ」

「僕もだよ。落ちたらどうしようって考えちゃう」

「それ何万分の一よ」

 そんなどうでもいい話で笑い合う。雨が止まらせた二人の距離は、少しだけ縮まった気がした。


 夏の気配を連れてくる、いまだ轟く雷鳴に怯えとおそれを抱きつつ。僕らは静かに止むのを待っていた。

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