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第008話 多様化の可能性

「あれ?」


 ここで気が付いたことがある。


(このステータスってどうやって消すんだ?)


 現れたのは良いが、ずっと表示しっぱなしというのは流石に困る。

 するとハジメの妹のフタバが通りかかった。


「なあ、コレが見えるか?」


 ハジメが空中に浮かんでいると思われるステータスパネルを指さした。


「え? なになに??」

「この四角いパネルみたいなもの……」

「……」


 フタバは不思議そうな顔を向けてくる。兄が自分の目の前を指さして見えるか聞いてくるのだ。

 しかし、フタバには浴室の鏡の前で、何やらキョロキョロしている不審者にしか見えなかった。


 何より邪魔っ気な場所に突っ立っている。


「大丈夫?」

「いや、見えないのなら構わないんだよ」

「……」


 妹は怪訝な表情のまま階段を上がっていった。

 どうやら兄が(また)おかしな事を口走ってると思ったらしい。


(ふむ、当人以外には見えないものなのか……)


 フタバの反応を見る限りはステータスパネルは他人には見えない物らしい。


「これって一度表示すると消せないとかないよな……」


 ハジメは次の疑問を抱いた。


「終了」

「クローズ」

「シャットダウン」

「閉鎖」


 思い付いた言葉を口にしてみたがステータスパネルは表示されたままである。

 ハジメは戸惑いを隠せなかった。


「まいったな……」


 食事中も邪魔であった。茶碗をひっくり返す湯呑みを倒す、その度に大騒ぎになってしまった。

 ステータスパネルが視界を遮るので上手く距離感が掴めないのだ。


「ハジメ……大丈夫なの?」

「熱でもあるのか?」

「なんか落ちてる物食べたとか??」

(妹よ……君は兄を何だと思ってるのかね?)


 想像はしていたが家族全員に心配を掛けてしまったようだ。


「ちょっと熱があるっぽい……」


 取り敢えず風邪の引きかけという事にしておく事にした。

 心配させるのは心苦しいが、咄嗟に上手な言い訳が思い浮かばなかったのだ。


「やれやれ……」


 階段に躓きつつ部屋に戻ってきてベッドに寝転んだ。

 もちろん、ステータスパネルは浮かんでいる。

 スマートフォンを取り出してダンジョンの情報を集めようとしたが止めた。

 ステータスパネルが重なって見えるので集中出来ないのだ。


「このままだと日常生活に支障があるよなあ……」


 ぼんやりとステータスパネルを見ながら、『魔力』の項目を見つめた。


「しかし、この魔力ってどうやって使うんだ?」


 そんな事を考えると『魔法を使う強さと魔力の回復力』と説明が出てきた。


「魔法はどうやって使うのよ」


 すると『魔法:体内に蓄えられた魔蘇を魔力によって具現化する方法』と説明が出てきた。


「いや、魔力が何なのか分からんねん……」


 すると『魔力:大気にある魔蘇を操る力』と説明が出てきた。


「魔蘇?」


 すると『魔蘇:大地が持つ力の総称』と説明が出てきた。


「わ、分からん言葉が次々と出てくる……」


 取り敢えず、人間には感知出来ないエネルギーの総称だとぼんやり理解することにした。キリが無いからだ。


「人間も見えない磁力や重力を利用出来てるからな」


 磁力や重力も人の目には見えないが存在することは誰もが知っている。

 それを生活の中で活用も出来ているのだ。

 きっと魔法も使えるようになるに違いないとハジメは考えた。


「気功術みたいなものだろうか?」


 『気』という自然の中にあるとされるエネルギーを、集めたり使ったり技を『気功術』なのだと覚えてる。

 何でハジメが知っているかというと、『気功術』を使って空中に浮かぶ事が出来るかも知れないと調べたからだ。

 もちろん、出来なかった。素人が見様見真似でやっても成果など望むべくもない。

 玄人がやって出来るのかいうと難しいであろう。


 ちなみに『気』は目に見えない。観測されたことも無い。


 ハジメは可能性があるかもと、早速モーグル先生に尋ねようとスマートフォンを手に取った。

 ハジメは『気功』の事を、上記のようにしか知らなかったので確認しようとしていたのだ。


「…………」


 しかし、眼の前に立ちはだかるステータスパネル。


「まともに見えねぇ~」


 透けているのである程度の輪郭は分かるが、注視しないと文字がハッキリと識別出来ない。

 苛つく透け具合であった。

 ハジメはスマートフォンをぶん投げベッドの上に大の字になっていた。


「朝、目が覚めたらステータスパネルが消えていると良いなあ」


 そんなことを願っている内にハジメは眠ってしまった。



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