第062話 青色に光る渦
ペルティエの滝壺までやって来た。
鑑定した内容だとカベラス図書館なる場所の入口が現れると書かれていた。
「どこでも*アみたいなのが出てくるのかな?」
あのどこでもド*も亜空間転移の一種であると思われている。
なので、扉か門のような物が現れると書かれていたので、例の扉を思い出していたのだ。
「サモン(召喚)……カベラス図書館の入口」
ハジメは魔法陣に手を翳しながら唱えた。
すると縦に一筋の黒い線が空間に走ったかと思うと真ん中辺が横に膨らむ。
広がった隙間には漆黒の空間が占めていた。
だが、最初は黒い空間しか見えなかったが、直ぐに青色に光る渦が徐々に現れる。
そして、渦が現れるのと同時に歪だった入口は楕円形へと変化した。
「……」
眼の前には青色に光る渦がゆっくり回っている。これが入口なのであろう。
何時も不必要なくらいに悪戦苦闘するのに、今回はあっさりと入口が開いたようである。
「ま、まあ……入ってみるかね……」
このまま突っ立っていてもしょうが無いので中に入ってみた。
ハジメが入口を潜ると直ぐに入口は閉じていく。残されていたのは魔法陣だ。
「ここにも魔法陣が有るという事は、魔法陣同士を亜空間で結び付けているんだな」
中々、便利そうな仕組みである。是非とも解明して自分の技術にしたいとハジメは考えた。
図書館に在った魔法陣を写メして、改めて館内を見回してみる。
室内には正面に丸いテーブルが置かれており、他には応接セットのような物が在るだけであった。
「う~ん、想像してたのと違う」
図書館と書かれていたので、上空が霞むような高い書架と、それに合わせた螺旋階段を想像していたのだ。
ちょっと、思惑から外れてしまった。
「外は……見えないのか……」
窓は無く外を見ることが出来ないのが残念である。
亜空間の景色はどういう眺めなのか見てみたかった。
「意外に明るいな」
壁自体が発光しているらしく、目立った照明が無いのに明るい室内であった。
「天井高えー」
天井まで十メートルと言った高さだ。壁までも同じぐらいの距離がある。
思うに半径十メートルの球体であるようだ。
「うーん、ところで目線が届く範囲に、肝心の本が無いんだが……」
そう、図書館と書かれていたのに本らしき物は何処にも無い。
真ん中辺のテーブルの周りをぐるりと回ったが無かった。
中央にある丸いテーブルは恐らくは受付と思われる場所のようだ。
そこには透明なパネルが設置されている。設置されていると言うか浮いている。
「どういう仕組なんだか……」
ハジメはテーブルに近寄ってみた。
テーブルの前に立つと、パネルは半透明になりスマイルマークが現れた。
「……」
何か反応が有るのかと黙っていたが特には無かった。
スマイルマークが現れただけだったのだ。
「…………」
再び、テーブルの周りをぐるりと回ったが、パネルはハジメにスマイルマークを向けて一緒に回転していた。
認識はされているようだ。
「どうすりゃ良いんだよ……」
ふと壁を見ると何か書かれているに気が付いた。
但し、書かれている文字は異世界の言葉なのか判別出来なかった。
「ふふふ、出来る漢には鑑定が有るのさ」
ハジメはエアメガネをクィっと上げながら一文ずつ鑑定した。
『館内では静粛にしてください』
『館内での飲食は禁止です』
『本は元の位置に戻してください』
なんだろう……ありふれた文章であった。
「……普通に図書館に書かれている注意事項じゃねぇか」
何か特別な碑文だと思ったが違っていたようだ。
ハジメはテーブルの方に振り返るとパネルは透明に戻っている。
一定の距離を離れると認識が外れるようだ。
「パネルを鑑定するか」
ハジメはテーブルに近付き半透明になったパネルを鑑定した。
名称:カベラス図書館の司書
機能:魔法書の貸出、館内の案内
「おお、司書だったのか」
どうやら、この図書館では受付に本を申告すると現れるようだ。
何処に現れるか不明だが、きっとテーブルの上に魔法のように現れるのだ(魔法の本だけに)
「書架が有って本がずらりと並んでいる訳では無いんだな」
さすがはダンジョン世界だ。外世界とは仕組みが一風変わっているようだ。
何処の国の図書館だったか忘れてしまったが、天井にまで書架が有った図書館を見た事がある。
どうやって駆り出すのだろうかと不思議であった。
きっと、本もインテリアみたいな扱いなのだろうなと思うと、悲しくなったのを思い出す。
「困ったな……どんな本が有るのか知らないや……」
そう、ハジメは外世界の人間なので、ダンジョン世界の本のタイトルなど知らないのである。
「んーー、『終焉のコドク』を借りたいです」
パネルに向かって言ってみた。取り敢えずはどうなるのかを知りたかったからだ。
なので、余りヒットしなかったラノベ本を注文してみた。
するとスマイルマークが泣き顔マークになった。同時に何やら文字列が出てきた。
そのままでは読めないので鑑定してみた。
『ゾンビ小説は扱っておりません』
どうやら、蔵書が無いと駄目なようだ。
ハジメは異世界の図書館が、『終焉のコドク』をゾンビ小説であると知っている方に驚愕していた。
「うーん、魔法本に関する知識が無いからな……」
ハジメは学校に行って魔法友達の鳥居に相談してみることにした。
大雑把な知識しか無いので、どんな本を要求すれば良いのか分からないからだ。




