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深層を目指す傀儡廻しのダンジョン探索日記  作者: 百舌巌


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第060話 ペルティエの滝壺

 ハジメはかつては水中に在った筈の魔法陣にやって来ていた。


「うん、この魔法陣が地上にせり上がって来たって様子だな」


 上がって来たばかりなので、魔法陣は水に濡れていた。


「魔法陣を鑑定……」


名称:ペルティエの滝壺

機能:亜空間転移

状態:休止中

制限:魔法を使用出来る者

 ・五大魔蘇エレメント(聖霊有効・火有効・水有効・風有効・土有効)

 ・ダンジョン名称(原初の迷宮)

 ・機能:カベラス図書館への入口

 ・状態:一時停止

 ・加護:無効


 表示された内容は以前に鑑定した時のままであった。


「ふむ、魔法を使ったせいじゃないよな……」


 光や水などの生活魔法はしょっちゅう使用している。

 ならば生活魔法を使った時点で出現していたはずだ。


「魔法陣作成を出来る人間が現れたのを感知した……と」


 水中に存在していたのは、適正人物が現れるまで封印するのが目的だったと思われる。


「ふふふ……俺ほど相応しい人物が居ないという事だな……」


 ハジメはエアメガネをクィっと上げながら呟いた。

 そのまま、魔法陣の真ん中にやって来ると、得意気にV字ポーズで呪文を唱えた。


「カベラス図書館へ転移」


 意気揚々としていたハジメは、直ぐに違和感を覚えた。

 何時ものV字ポーズのまま、静かに周りの様子を窺う。


「……」


 何も変化が無かったのだ。周りの風景も第三階層のままである。


「え?」


 名称に転移とあるので、階層転移のように一瞬で移動できると思っていたのだ。


「なんで??」


 意味が分からずに戸惑ったハジメは、名称の亜空間転移を鑑定してみた。


『亜空間転移:魔力を使って魔法陣を活性化させると図書館への入口が現れる(魔法を使えない者は入れない)』


 図書館の入口が現れると書かれている。

 どうやら、階層転移のような物ではなく、扉か門のような物が現れるのではないかと推測した。


「図書館のエントランスみたいな場所に転移出来る訳じゃないんだ……」


 図書館にV字ポーズで出現したかったハジメはガッカリしている。


「魔力を使うって……」


 魔力を使うと言っても特に意識した事は無かった。

 生活魔法を使う時も指先にちょっと力を入れる程度だ。


「んー、亜空間へ……」


 そこまで言葉を出して口を噤んでしまった。

 一旦、魔法陣の外に出てくる。ある事に気が付いたのだ。


(亜空間へ転移なんて……亜空間って何処よ?)


 つまり、訳の分からない空間に転移しようとしていたからだ。

 ダンジョンは何でも出来る気がしているが、全ての行動は自己責任だ。

 ここを知っているのはハジメだけなので、行方不明になっても誰にも分からない。


「困ったな……あれ?」


 魔法陣の端の方にノイズが乗っている風に見えている事に気が付いたのだ。


「何なの?」


 ハジメはノイズらしき物を踏んでみた。すると、何かが跳ねているような振動が伝わって来る。


「うひゃ!」


 思わず足を退けてみるが、ノイズみたいに見える物は徐々に移動しているようだ。


「の……ノイズを鑑定」


 ハッキリとはしていないが認識は出来ている。これなら鑑定は可能なはずとハジメは考えた。


名称:ノイジー・スライム

HP:35/35

MP:10/10

状態:正常


「水中に居るスライムって……しかもMP持っているし」


 取り敢えず、スリングライフルでやっつけてみた。

 すると、魔石の他にオーブ魔石もドロップした。


「やった、ラッキー!」


 思わぬ幸運に喜んだハジメはオーブ魔石を鑑定した。


名称:隠密

機能:魔法スクロール


 どうやら再び魔法スクロールを取得できるようである。


「隠密の魔法スクロールって……」


 鑑定してみる。『隠密魔法:自分自身と身に着けている物に光学迷彩がかかる』


「そっか……見えづらかったのは光学迷彩だったのか……」


 反撃してこなかったので不思議だったが、ノイジー・スライムがMPを持っていた理由が分かった。

 自身に光学迷彩掛けるために必要だったのだ。

 そのノイジー・スライムがドロップした納得のアイテムであった。


「という事は……某アニメのように光学迷彩を掛けながら戦闘開始が出来るんだな?」


 スタタタと走りながら姿を消して行くさまを思い浮かべてニヤリと笑った。

 これで授業中にテロリスト・グループに襲われても対処できる(?)


「うん、まずは魔法を取得してみよう」


 ハジメはオモイカンの石像へと移動した。

 石像の前の窪みにオーブ魔石から魔法スクロールに戻しておいた物を載せる。

 ハニワの目が青白く光り、石像が置かれている魔法陣から立ち上る光輝が身体に纏わりついた。


「……」


 ハジメの身体がボォっと光ると、青白い光も消えてオモイカンの石像も元通りになった。


「ふむ……自分を鑑定」


名前:石垣一(イシガキハジメ)

階級:3

HP:8/8

MP:6/8

BP:0.884

状態:正常

職業:謎こんにゃく見えづらい奴

筋力:4

頑丈:4

敏捷:5

魔力:5

 ・生活魔法(初級)

 ・クラフト魔法(線引き)

 ・隠密(光学迷彩)

知力:2

幸運:3

特技:(鑑定:初回特典)(傀儡廻し:初級)

装備:(ミナカヌシの仮面:初級)


 魔力の欄に新しい項目が増えていた。


「うむ、図書館に行く前に魔法を試したいな……」


 ハジメは一旦、第一階層に行く事にした。

 ダンジョンの外にある倉庫に手鏡が有るのを思い出したからだ。

 本当に光学迷彩が出来るのか、どういう風に見えるのかが気になってしょうがないのだ。



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