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深層を目指す傀儡廻しのダンジョン探索日記  作者: 百舌巌


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第057話 スライム捕獲瓶

 ホームセンターに到着したハジメは早速台所用品売り場に直行した。

 ここに耐熱ボウルがあるからだ。

 だが、様々なサイズが在るが、ハジメが希望したような取っ手が付いたタイプは存在しなかった。

 耐熱ボウルの主な用途は電子レンジでの調理がメインだからだ。

 妙な取っ手が付いていたら、電子レンジの中で回転してくれなくなるのだ。


「むぅ、大きさ的には良いんだがなあ……」


 料理というものは母親が、魔法で生み出していると信じているハジメには分からないことであった。

 妹も魔法使いの素養が有るらしいが、怪しげな物しか生成した事が無い。


 もちろん、ハジメも料理をする。お湯を沸かしカップに注いでから三分間待つだけの料理だ(フンス!)


「まあ、人には向き不向きが有るからね……」


 ホームセンターの中を徘徊しているとフライパンのコーナーで足を止めた。


「深入りフライパン……だと?」


 大きさは三十センチくらいで深さが二十センチもある。

 揚げ物や蒸し物も出来る万能フライパンだ。


「これを上下に重ねればフレア・スライムを挟めるかも……」


 両手にフライパンの取っ手を持って挟み込めば可能なような気がしてきた。


「うん、うん、良いねぇ……」


 普通の家庭用なので値段もリーズナブルな所も良い。

 ハジメにとっては地球環境より、高校生の財布環境に配慮した商品が好みなのである。

 胡散臭い謳い文句を並べる奴は碌な者じゃない。


「な、鍋だと?」


 隣にあった鍋コーナーにも目を奪われる。

 寸胴と呼ばれる深い鍋ならフレア・スライムでも簡単に入りそうだ。


「煮込んでしまいそうだな」


 ハジメはホームセンターが大好きであった。色々な商品を応用して工夫出来る所が特に好きだ。

 可能ならテントを持ち込んで、泊りがけで商品を吟味したいと真剣に考えている。


「まあ、ダンジョンも面白いけどな」


 ハジメは深入りフライパン(付与:テフロン)を二つ購入して帰宅した。

 

「そうだ、ダンジョンに潜る前に溶液を調べないと……」


 ハジメは元スライムだった液体にリトマス試験紙を浸してみる。


「あえ?」


 酸性の反応を期待していたが変化は無かった。

 授業で習った通りなら青色のリトマス試験紙が変化するはずであった。


「間違えたのか?」


 今度はアルカリ性のテストをしてみたが、同様に変化は無い。

 アルカリ性なら赤色リトマス紙が青色に変わる。


「ええ~」


 つまり、この液体は中性の水なのだ。


「空気に触れたことで酸性が中和された?」


 ハジメは暫し考えて思考を中断した。

 今、知りたいのはスライム体液を取得する方法である。

 スライムが死ぬと水になってしまう原因では無いのだ。


「んーーー、困ったな……てっきり酸性のまま残ると思い込んでいたからなあ」


 想定外の出来事は毎度のことである。だが、ハジメはそこで挫けないのだ。


「閉じ込めることは出来たんだから……」


 生きている内なら体液は酸性なのだ。それを直接抜き取れば良いだけの簡単な話だ。

 その方法を考えなけれ成らない。


「あっ、準備室から貰い受けた奴にアレが紛れていたな」


 準備室から引き取ったガラクタ(属性:宝物)に先が欠けたガラス菅があった。

 ガラス管ならば耐酸性がある。スライムに挿してスライム溶液を抜き出せそうだ。


「石槍に添えてやれば抜き放題だな」


 ハジメは手順を考えた。

・まず、スライムを瓶に捕まえる

・蓋の部分に細工して石槍とガラス管をセットしておく

・瓶を逆さまにしてスライムを蓋に叩きつけると刺さる筈である

・これを捕獲瓶として、もう一つに体液収集瓶を用意しておく


「……うん、上手くいくような気がする……」


 今の瓶に入っている水は別の容器にうつした。取っておいて後で比較検証に使うのだ。

 小一時間で細工を終えたハジメは実験を開始する。念の為に耐酸性ゴム手袋をしている。


「ふふふ、抜き取りしやすようにポンプも追加したぜ」


 ポンプと言ってもビーチボールなどの空気入れだ。小学生ぐらいまでは川遊びの時に使っていた記憶がある。

 もちろん、見つけたのは納屋だ。どんな些細な物で捨てないのは流石だ。

 ポンプの給気口をスライム体液集積瓶に繋ぐ。そうしてポンプを動かせば空気圧差で、スライム体液を収集できる筈だ。


「取り敢えずは実験開始だ」


 ハジメは第一階層を彷徨いているナナシ・スライムを捕獲瓶で捕まえ逆さまに振った。

 すると石槍にスライムは突き刺さった。徐ろにポンプを動かしてスライム体液を集め始める。

 想像と違って少し粘っこいのか、吸い出しに時間が掛かったが集積瓶に集めることに成功した。


「次はペーハーテストの番……」


 集積瓶に集まった体液にリトマス試験紙を浸すと、青色リトマス紙が赤色に変化した。酸性である。

 やはり、生きている魔獣から集める必要があったらしい。


「ふふふ……当然の結果ですね……」


 ハジメはエアメガネをクィっと上げながら満足気に頷いた。


 これで分かったのは魔獣が死んだ時に、何かの作用で酸性の体液は中性化してしまうという事だ。

 ハジメは魔蘇が関係していると考えた。どう関係してるのかは謎だが、それはエ*イ人に任せよう。


「まあ、良いや……」


 問題は置いておく事にして、これで線引きをする為の道具が揃った。

 後は実践あるのみ。次の課題に取り掛かる事にした。



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