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深層を目指す傀儡廻しのダンジョン探索日記  作者: 百舌巌


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第055話 体液の真髄

 ハジメは火炎放射陣の前でスリング・ライフルを構えている。

 そして、最初に出現したフレア・スライムに小石を当てた。


 攻撃されたことに怒ったフレア・スライムはハジメに向かってフレア攻撃を仕掛けてくる。

 予測していたハジメはフレアが射出される直前に木の前から移動する。


「よし!効果は有るようだな」


 フレアを当てられたドゥカーイキの表面が焦げたように黒ずんだ。

 MPを使い切ったフレア・スライムは用済みなので始末する事にしている。

 認識阻害を作用させたまま、槍でアルカリ溶液を注入するのだ。

 やはり攻撃をされたと激怒するフレア・スライムだが、肝心の相手が見えないのでブルブルと震えたままだ。

 都合、四回ほどアルカリ溶液を入れると黒い霧になり魔石に戻っていった。


「そろそろ、次のリポップが始まるはず……」


 隣の火炎放射陣を見つめていると、真ん中に置いた魔石から黒い霧が立ち上がった。

 黒い霧が渦を巻き始める。すると今度は魔石に向かって落ち始めた。

 魔石はぼんやりと白く光りだしたかと思うと、黒い霧は渦は輝きながら消えた。


「いつ見ても不思議だよな」


 そこにはフレア・スライムがリポップしていた。

 ハジメは先程と同じ手順でスリング・ライフルで小石を当てる。

 同じ箇所に次々とフレアを命中させていった。

 これをドゥカーイキの手が届く範囲が真っ黒に成る迄続けたのだ。


「別に炭が欲しいだけだしな……」


 ドゥカーイキの炭になった部分にダンジョン石を使ってガリガリ削り落としていた。

 それを、納屋で見つけて持ってきたサビだらけのバケツに溜めてゆく。

 必要量が分からないので目一杯になったら中止する予定だ。


 ドゥカーイキを切り倒す必然性が無い事に、途中で気が付いたのであった。


「危うく伐採することが主眼になりそうだったぜ」


 手段と目的が逆転してしまう事は、ハジメには屡々有る事である。

 面白い事には夢中になってしまうのだ。


「しかし、火を使っても酸欠にならないなんて、ダンジョンってどういう構造なんだ?」


 普通、洞窟などの閉鎖空間では火気厳禁である。酸欠や一酸化中毒などが危険な為だ。

 昔の鉱山などではカナリヤを持ち込んで警報機替わりにしていた話は有名だ。


「昔は電気が無くて、明かりは松明だけだったから大変だろうなあ」


 そんな事を考えながら炭を削り出していた。

 一酸化炭素や酸素欠乏は目に見えないので、廃坑道などで事故になりやすい。

 時々、探検系ヌューバーが事故を起こしてニュースなるのを見かけたりする。


「よし、炭が目標した量になったな……」


 炭を集め終わったので、次はスライム溶液の確保であった。

 第一階層のナナシ・スライムは、ダンジョン外に出しっ放しにすると液状化した。

 第三階層と第四階層のスライムを閉じ込めて外に持ち出す手段が必要なのだ。


「ビーカーみたいなので閉じ込めるか……」


 耐酸性が求められるので、普通の金属缶では溶けてしまう可能性があるからだ。

 ナナシ・スライムでは平気であったが、それは酸性度が低いせいなのだろう。


「スライムの強さに比例していると考えるべきだな」


 きっと階層ごとにスライムの強さが違っていたので、体液の酸性度数が違っていると推測していた。

 特に第四階層のミューカス・スライムの酸性液は強烈だった。


「あっ、そう言えば納屋にアレがあったな……」


 アレとは……梅酒などを付ける果実酒用瓶だ。ガラス製なので耐酸性もバッチリである。

 年寄りに愛好家は多いが、生憎と石垣家で梅酒などの果実酒は飲む人が居ない。

 果実酒は晩酌時に祖父一人で楽しんでいた。好物だったようだ。

 そんな果実酒を施設に入所する時に持っていくと大騒ぎになった。だが、父に説得されて諦めたようである。


 そんな使わなくなった果実酒用瓶が、中身付きで納屋に大量に放置されていたのであった。

 ハジメは納屋に行って中身を捨ててからダンジョンに持ってきた。

 年代物もあったが価値を知らないハジメは容赦無かった。


 そして第五階層以外のスライムを閉じ込めてダンジョンの外に持ち出した。

 これが中々大変だった。


 最初は認識阻害でそっと近付いて、スライムに被せようとして、力みすぎて瓶を壊したりしてしまった。

 次には瓶の中に閉じ込めたので、焦って走って持って来ようとして転んで壊したりした。


 何よりハジメが姿を表すと攻撃しようとして瓶を破壊に来る。

 なので、瓶に閉じ込めたら認識阻害を掛けたまま運ぶ事にしたのである。


 問題は第五階層のフレア・スライムは大きいので入れる事が出来なかったのだ。

 確保方法は後で考える事にした。大きめの耐酸製の物が用意したいが思い付かなかった。


「さて、前にナナシ・スライムで試した時は一時間くらいだったけど……」


 並べたスライム入り果実酒用瓶を停止させたドローンで動画撮影しながら帰宅する事にした。

 経過観測する為、後で動画を確認すれば済む事だからだ。


「今日も疲れた……」


 炭造りに没頭したハジメは、顔や身体中を炭だらけにしながら帰宅した。

 そんなハジメを見た母親に悲鳴を上げられながら、風呂に叩き込まれたのは言うまでもない。



ハジメが魔法使い(?)に近付いているようです

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