第053話 聖跡の廃墟
V字ポーズのハジメが魔法陣の中に現れた。
「ふむ……」
ハジメはエアメガネをクィっと上げながら頷く。目的の第五階層に到着を確信した眺めだったからだ。
苔だらけで岩のように見える大木が生えているのが見える。
その合間に灰色の朽ち果てた印象の建物があった。ここも廃墟の街なのだろう。
「足元が悪いな……」
そして、常に霧が立ち込める静かな階層であった。
ガサッ
何かの気配を感じたハジメは槍をすっと構えた。
すると、サッカーボールより一回り小さいサイズのスライムが遺跡の中に現れた。
「……やっぱり、お前か」
スライム。
第五階層に降りたハジメが初めて目にした魔物であった。
「いや……分かっていたけどね」
ハジメは何度も現れるスライムに失望感を拭えなかった。
「スライムを鑑定……」
そういう物だと自分を納得させて新規のスライムを鑑定する。
名称:フレア・スライム
HP:100/100
MP:10/10
状態:正常
「ん?」
気になる項目がある。MPも持っているのだ。これはフレア・スライムが魔法を使えることを意味している。
そして階層が深くなった為なのかHPがやたらと大きい。打たれ強さはピカイチのようである。
「フレアって事は炎系の魔法を使えるのかな……」
名前の通りなら、そういう事なのだろうとハジメは思った。
取り敢えずは攻撃してみてから考えようと仮面を被り直す。
いつも仮面は少し斜めにして被っている為だ。そうしないと視界が限られてしまうのが難点であった。
「認識阻害……開始」
近付いて槍を突き刺しアルカリ溶液を流し込んだ。
いきなり攻撃を受けたフレア・スライムは怒っているのか、無差別に炎の塊を周りに撒き散らしている。
これは第四階層のミューカス・スライムと同じ反応だ。
「へぇ、フレアって実際に見てみると結構勢いがあるんだな」
初めて見る攻撃系魔法に感心していた。
ハジメはスライムの鑑定する。するとMPはゼロになりHPは25程削れていた。
「フレアが五発だったから一発辺りのMP消費量は2なのか」
MP消費量が多いのか少ないのか不明だが威力の割にMPを食うなとは思った。
「HPの減り方からすると四回も溶液注入が必要になるな……」
HPがミューカス・スライムの倍有る。なので何回か攻撃しているとフレア・スライムは黒い霧になった。
「大きいだけ有って経験値も美味しいな」
得られた経験値は0.08である。
フレア・スライムの魔石を拾って、ハジメは第三階層に向かった。
「今日のメイン・イベントだね」
ハジメは『クラフト』の魔法スクロールを使いたかったのだ。
どんな魔法が使えるようになるのか楽しみであった。
第三階層のオモイカンの石像の前にやってきた。
この像に魔法スクロールを掲げると、書かれている内容を伝授してもらえる筈だ。
ハジメはオーブ魔石を使用してみた。
すると手には羊皮紙に似た巻物が出現した。
「どれどれ……」
少し広げてみたが何も書かれていなかった。
「ええ~……」
だが、書かれているのを人間が視認出来ないだけなのかもしれない。
「巻物を鑑定……」
名称:クラフト
機能:魔法スクロール
オーブ魔石を鑑定した時のままであった。
「まあ、いいや……どうすれば良いんだろ?」
ハニワに似た石像の前に長方型の窪みがある。
ハジメはそこに魔法スクロールを載せてみた。
すると、ハニワの目に相当する部分が青白く光った。
ハジメは瞬きを忘れてハニワを見つめる。
石像が置かれている魔法陣が青白く光り、その光がハジメの身体に纏わりついた。
「……」
ハジメの周りをクルクルと回ったかと思おうと、体の中心に向かって集約していく。
「おー……」
ハジメの身体がボォっと光ると、青白い光も消えてオモイカンの石像も元通りになった。
「ふむ……自分を鑑定」
名前:石垣一
階級:3
HP:8/8
MP:7/8(+1)
BP:0.782
状態:正常
職業:謎こんにゃく線引き野郎
筋力:4
頑丈:4
敏捷:5
魔力:5(+1)
・生活魔法(初級)
・クラフト魔法(線引き)
知力:2
幸運:3
特技:(鑑定:初回特典)(傀儡廻し:初級)
装備:(ミナカヌシの仮面:初級)
魔力の欄に新しい項目が増えていた。
「はあ?線引きってなんだあ??」
線引き:線を引いたり消したり出来る。
「いや、なんなのその地味過ぎる魔法は……」
ハジメはゴーレムを作成したり土を操作出来たりの魔法を期待していた。
「或いは魔道具を作成出来るとか……」
どうやら違っていたようである。




