第004話 強敵の出現(?)
全速力で自宅に帰り、消毒液を持ってきたハジメは謎のコンニャクの前に居た。
「ふふふ…… 俺の無敵伝説の始まりだ」
ハジメがニヤリと笑いながら手した消毒液を謎のコンニャクに向けた。
「必殺! マ*ロンフラッシュぅぅぅぅ」
プシュッ
勢いよく消毒液を噴射した。
「……」
スライムは気が付かないのかモゾモゾと動いている。
どうやら効き目が無かったようだ。
「え……」
満面の笑顔を浮かべながらスライムを見つめていたが、徐々にスンといった感じで覚めてしまった。
根拠のない自信に満ちていただけに落胆が大きかったようだ。
「ええ~……」
もう一回、掛けてみたが結果は同じであった。消毒液は謎のコンニャクに通用しないようである。
「しょうがない……出直しだあ」
ハジメは一旦自宅に帰り台所に有った調味料を一通り持ってきた。
「どれか効くべさ……」
何故、調味料なのかというとWeb小説に書かれていたからだ。他に根拠は無い。
家に帰る最中にスマフォで検索してみたがスライムの倒し方は掲載されていなかった。
「まずは塩……」
食塩の入ったビニール袋から一摘み振り掛けてみた。
しかし、スライムは気が付かないのかモゾモゾと動いている。
これも効き目が無かったようだ。
「ええ……」
ラノベだとプチュンといった感じで弾けると書いてあったはず。
「次は砂糖」
砂糖の入ったビニール袋から一摘み振り掛けてみた。
しかし、スライムは気が付かないのかモゾモゾと動いている。
やっぱり、これも効き目が無かったようだ。
「えええ……」
ケチャップ・マヨネーズ・ソースに小麦粉・天ぷら粉などなど持ち込んだ調味料を次々と試していく。
だが、台所から調味料一式を持ってきたが何一つ効果が無かったのだ。
「………………」
最後にアンコを載せた時にはちょっとだけ美味しそうに見えた。
餡ころ餅を想像したのだ。
「いやいやいや……」
ハジメは頭を振って余計な考えを追い出した。
スライムは何でも溶解して吸収してしまう魔獣だ。食用に適さないのは小学生でも分かる。
「でもなあ…………」
調味料まみれのスライムの横でガックリと肩を落としている。
用意した攻撃手段が総て無駄だったからだ。
そんなハジメの感情など気にしていないのか、スライムは自分にかけられた調味料を吸収しているようであった。
よく見ると外からやってきたらしい虫なども吸収している。吹き込んだ枯れ葉すら吸収している。
「ダンジョンの掃除屋ってのは本当なんだな……」
その様子を関心したように見ていた。
「どうしたもんだか」
手詰まり状態になってしまっている。
「なんだよ~……」
全身に黒いオーラを纏ったまま帰宅していった。用意した物が総て無駄だったのだ。仕方あるまい。
もちろん、自宅に戻ってから母親に激怒されたのは想定内だ。
翌日も帰宅後にダンジョンにやってきた。
今度は鍬とバットとトンカチを持ってやってきた。
「まあ、相手はスライムだし何とかなるでしょ」
世界最弱と名高い『スライム』だ。ハジメは気楽に考えていた。
打撃に対してもめっぽう弱く、時折飛び掛かってくる事さえ気を付ければ子供でさえ容易に倒せてしまう魔獣だ。
と、ラノベで書かれていた。
「さあ、伝説を作るぞぉ~」
ハジメは手に持ったトンカチ(サビだらけ)を手に持って意気込んでみる。
懐中電灯を取り出して変な物を照らした。
ゼリー状のようで突っつくとプルプルした弾力を感じていた。
ぼよんぼよんと跳ねてから、いきなりハジメ目掛けて飛び込んで来た。
「ちょっ!」
スライムはハジメの腹に打ち当たり、ハジメはダンジョンの壁まで飛ばされてしまった。
「おっふぃ……」
ハジメはシュートされたサッカーボールを受け止めたような衝撃を感じていた。
「うっぷ……おげあぁぁぁぁ……」
攻撃を無警戒な腹で受けたハジメは、ゲロを吐きながら地面の上をのたうち回ってしまった。
人と殴り合う習性など無いハジメには衝撃的な出来事であった。
(ま、拙い……)
ちょっと息が止まるくらいの勢いだ。少し漏らしたのは内緒だ。
連続で受け続けると命の危険さえ感じる。
「な、何なの…………」
涙目になりながらスライムを睨み付けた。
スライムはダンジョンの通路の上でボヨンボヨンとしている。
直ぐには向かって来そうになかった。
(ちょっと、体勢を立て直そう……)
ハジメはそそくさとダンジョンの出口に向かう。また撃たれたら嫌なので腹を抱えている。
襲ってきたスライムは追撃するわけでも無く、ノソノソとハジメとは反対方向に動いていた。
(襲う時は一定の距離に入らないと攻撃してこないのか……)
ハジメはスライムの習性の一つを学習してダンジョンを後にした。