第031話 魔蘇エレメント
学校から帰宅したハジメは早速ダンジョンにやって来た。
シン・スライムプレスを直すのと魔法の鍛錬のためだ。
授業中は『傀儡廻し』の項目をずっと探っていた。
どうやら人形を操るのに魔力を使うらしい。
何とかして魔力を操れるようにならないと人形を使えないのだ。
「折角のスキルだから使えないとつまらん……」
シン・スライムプレスを修理しながら魔蘇を練る訓練方法を考えていた。
「昨日やったトラタカで瞑想を一発決めるか!」
シン・スライムプレスの板状パネルを縛り終えて再び動作するようした。
次に防鳥テグスを繋ぎ直す。洞窟内に垂れ下がっていた防鳥テグスは半分吸収されているのだ。
「やはりダンジョン由来の物じゃないと吸収されてしまうんだな……」
半分溶けかかった防鳥テグスを回収しながら呟いた。
分かってはいるが何とか工夫できないかと考えてしまう。
「あっ…………」
思い付いたことがある。
「防鳥テグスを草部屋の草と一緒に編み込んでしまえば誤魔化せるんじゃね?」
以前、石斧を作成した時には一晩で木の部分がダンジョンに吸収されてしまった。
ならば全体を覆うようにすれば良いのではと思い付いたのだ。
「よし、魔法の修行の前にサクッとやってしまおう」
草部屋にやってきて再びリポップした草を抜き出した。
それを縄を撚り上げる時に一緒に防鳥テグスを編み込んだ。
五メートル程編み上げたのでハジメは鑑定してみた。
『ダンジョン紐w』
鑑定の名前欄にはそう書かれている。
「草付いてるし……」
まるで此方の意図を読み込んでいるような鑑定欄の記述である。
「いや、確かに草だけどさ……」
ブツブツ独り言を呟いている。
オヤジギャグのようなダンジョンのノリにハジメは『うへぇ』となってしまったのだ。
ハジメは編み上げた『ダンジョン紐w』をシン・スライムプレスの横に置いた。
本当に吸収されるのかを検証する為だ。いつか何かの役に立つと思っている。
次に石部屋にやってきた昨日のトラタカの修行を続行するのだ。
「光よ灯れ……」
指先が光るのをイメージしながらロウソクの炎を見つめ続けた。もちろん指先が光る事は無い。
五分ほど経過して休止の為にロウソクを消した。その時に床に書かれている魔法陣が目に入った。
「あれ? ここだとスライムはやって来ないけど草部屋には居たよな?」
似たような魔法陣だが魔獣を寄せ付けるのと付けない何かがある。
ハジメの頭にひらめいた物があった。
「魔法陣の中に魔獣を寄せ付けない機能があるのか?」
魔法陣には丸印が五個と五角印が五個ある。
そのどれかが役割をはたしているに違いないと思った。
「比べてみるか……」
ハジメは草部屋に行って床の魔法陣を書き写した。
そして石部屋の魔法陣と見比べてみた。
丸印は五大魔蘇エレメント(聖霊・火・水・風・土)と鑑定に出ている。
その中で精霊エレメントと鑑定に出ていた丸印が活性化となっていた。
「草部屋の機能が状態の回復なのは聖霊のおかげなんだろうな」
石部屋の丸印を鑑定すると土エレメントが活性化していた。
やはり丸印が魔法陣の魔蘇をどう使うかを決めているらしい。
ならば、五角形の印で様々なオプションを決めていると推察出来た。
・五大魔蘇エレメント(聖霊・火・水・風・土有効)
・名称:ダンジョン名称(原初の迷宮)
・機能:階層転移
・状態:一時停止
・加護:有効
・■■:■■■■■■
五角形をそれぞれ鑑定してみた結果だ。文字化けした項目もあるが概ね読めた。
三箇所は魔法陣の役割を決定付ける物なのは明白だ。
しかし、最後の加護に着目した。
「加護が機能してない可能性があるな」
再び草部屋にやってきたハジメは魔法陣の各印を鑑定した。
・五大魔蘇エレメント(聖霊有効・火・水・風・土)
・ダンジョン名称(原初の迷宮)
・機能:状態回復
・状態:一時停止
・加護:無効
・■■:■■■■
五角印の同じ場所。共通しているようなのに違っている箇所があったのだ。
「やっぱり加護が無効だから、草がリポップするしスライムがうろつけるのか!」
ハジメは原因が判明して納得してしまった。
「うん、それなら石部屋と同じになってれば加護が有効になるんだな?」
ハジメは加護を有効にしろと念じてみた。
すると、無効の文字が消えて有効に変化したではないか。
文様も同じに見えている。
「ちょ…………魔法陣を操作出来たんですけど」
意外な結果にハジメは唖然としてしまった。あっさりと出来たからだ。
改めて五角印を見ると石部屋の物と同じになった。
後はダンジョン草がリポップするかどうかを確かめる必要がある。
「うん、魔法陣そのものを改変出来るのが分かったのはデカイな……」
エアメガネをクイッと上げながら呟いた。
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