第025話 D草の活用
シン・スライムプレスに防鳥テグスの端を結びつけてリールは腰に付けている。
これならダンジョン探検の邪魔にならない。
今日は草部屋から草を採取する予定だ。
とある実験をしてみるつもりなのだ。
外世界の物はダンジョン内では役に立たなかった。
「ダンジョンの外ではダンジョン由来の物には物理的に干渉できないはず」
ダンジョン草は外では腐ったり枯れたりしないのではないかと踏んでいた。
「茅葺き屋根みたいに使えると思うんだが……」
つまりダンジョン草でハジメの秘密基地を強化しようと考えていた。
「おっ、吸収されている……」
ダンジョンの中に入ったハジメは、実験の為に立てて置いた物干し竿が沈み込んでいるのが見えた。
吸収されたのは五十センチくらい。どうやらダンジョンに接している部分が徐々に吸収されていくようだ。
外からダンジョン内に差し込んだ物干し竿は無事なので間違いない。
「やっぱり、空中にある部分は吸収されなかったな」
ハジメが睨んだ通りに、ダンジョンに接しているかどうかが判断基準のようだ。
ダンジョンの謎が少しだけ分かってニヤリと笑っている。
「わたしの辞書に不可能の文字は無い」
もちろん、エアメガネをクイッとするのは忘れなかった。
「あれ?」
草部屋に来たハジメは違和感に気が付いた。
草が生えている様子に変化が無かったのだ。
「ダンジョン草もリポップするのか……」
前回、来た時に縄を作るのにかなり引き抜いたのを覚えている。
その場所が元通りになっているからだ。
「他に考えられないしね」
ハジメ秘密基地を藁葺屋根にするのに、足りないかなと思っていた。
だが、リポップするのであれば時間を掛ければなんとか成りそうである。
「これはこれは誤算でしたねぇ」
そんな事をブツブツ言いながら、ダンジョン草を引き抜きながら屋根の部分を制作していく。
制作といっても抜いたダンジョン草を縦横に編み込んでいくだけだ。
これを下地にして上層に草を縦に敷き詰めるのである。雨を流す為だ。
「さて、次は板状パネルの収集だ」
ハジメは石部屋にやってきた。そして、板状パネルを集めていく。
すると、床に謎の模様が書かれていることに気が付く。
「?」
床の模様は円形になっており部屋の大部分を占めているようだ。
不思議に思い、更に床に落ちている石などを避けていくと全体像が見えてきた。
「これって魔法陣じゃないのか?」
アニメやラノベなどで見かける魔法陣そっくりであった。
早速、それを紙に写し取り掲げてみた。だが、何も起こらなかった。
「くぅ、やはり呪文を唱えるとしなきゃ駄目なのか」
ハジメのステータスに魔力という項目がある。
なので自然に発動するのかと期待していたのだが違っていたようだ。
中々、楽に攻略させて貰えないようだ。
「これが何の魔法陣なのかを調べないと……」
だが、ハジメの人生で魔法陣など使ったことも聞いたことも無い。
「調べようにどこから始めれば良いんだよ……」
途方にくれてしまったが、有ることを思い付いた。
「そうだ、あの人に聞いてみるのもアリだな」
翌日、ハジメは写し取った魔法陣らしき物を学校に持っていった。
「これ何の魔法陣か判る?」
尋ねたのはラノベ仲間の鳥居だ。良く自分のノートに自作の怪しげな魔法陣を書き殴っている。
ハジメがラノベ小説にハマった切っ掛けを作った人物でもある。
「どれどれ……ふむ、古代ヘブライ文字っぽいね」
「そうなのか」
流石は鳥居だ。一目で文字の種類を見抜いた。
「何の本に出てきたの?」
「いや、ネット小説の挿絵に使われていたんだよ」
「へぇ、今度タイトルを教えて……」
「分かった」
ダンジョンの事を伝えるつもりは無い。
知ればダンジョンに籠りっぱなしなるのは目に見えているからだ。
「……数字かな?……移動」
「……ミシュマル……守護」
「ぐらいしか分からないな……」
魔法陣に書かれた文様を指で辿りながら首を傾げている。
そんな鳥居の様子をハジメは見つめていた。
「あー、それでも助かるよ」
どこを調べれば良いのかの切っ掛けがあれば、そこから探り出すことが出来る。
ハジメは家に帰ってから魔法陣の詳細を調べてみるつもりであった。
「ヘブライ語って中東だっけ?」
「そう、ユダヤ人の先祖が使ってた奴だね」
彼女の話ではヘブライ語っぽいだけで違うかも知れないとのこと。
まあ、自分にも違いが分からないけど、大まかな言語が分かっただけでも収穫であった。
「自分で魔法陣でも作るつもり?」
「うん」
拗らせた仲間が増えたと思ったのか、彼女は嬉しそうであった。
「出来上がったら見せてね」
「分かったよ」
そういうと鳥居は自分の魔法陣の作成に没頭を始めた。
彼女が作成しているのは、晩ごはんが鶏の唐揚げになる魔法陣なのだそうだ。




