第020話 向き不向き
「鑑定……俺!」
ハジメはステータスパネルを表示させた。
本当は言葉に出さなくても表示は出来るのだが、やはり雰囲気が大事だよなと思うハジメであった。
名前:石垣一
階級:1
HP:5/5
MP:1/1
BP:1.082
状態:正常
職業:謎こんにゃくスレイヤー
筋力:2
頑丈:2
敏捷:3
魔力:1
知力:1
幸運:1
特技:(鑑定:初回特典)
ストッパーの紐を引っ張っただけなのにBPは増加していた。
これは魔獣を倒した攻撃に参加したとみなされたと思える。
「うん、間接的に攻撃してもBPは貰えるんだな」
スライム・プレスは間接的な攻撃になるのでBPは取得できないかもと考えたのだ。
だが、杞憂で済んだようだ。
「後は距離によって取得制限が有るかどうかだ」
もし、距離が無関係ならタイマーを使って、リポップ・スライム狩りが出来るようになると踏んでいた。
これなら、セルフ・パワー・レベリングが可能となるのだ。
出来ればダンジョンを離れても取得が可能であるのが望ましい。
流石にそれは無理だろうなと思っていた。
「ステータス上げ放題まであと少し……」
それでも、まとめて経験値が入るのは嬉しいものである。
「ふふふ……」
そんな事を考えながらスライムプレスの高さを調整した。
先程の失敗を踏まえて高めにするのを忘れない。
「んー、つっかえ棒を倒す紐の長さが足りないな……」
スライムプレスを落とす為に電光リールが回るのを止めているストッパーの事だ。
今回はBPを得られる距離を計測するつもりだ。
「ちょっと長さが足りないかな……」
持ってきた紐の長さが足りないと感じていた。
「そうだ、草部屋にある稲わらみたいな奴を撚り合わせて紐を作ってみるか……」
一旦、帰宅してビニール紐でも持ってくれば良いのだがそうしなかった。
自分で作ってみたかったのだ。リポップまで時間が有るという事もある。
藁紐の作り方は祖父に教わっていた。忍者は自前で何でも作れるようになるべきとの教えだ。
忍者の才能は大したことは無かったが、何かを工作するのは得意で祖父に褒められていた。
「まあ、人には向き不向きが有るってことで……」
何本かの草を根本から抜き寄り合わせていく。最初は鎌で刈り取ろうとしたが出来なかったのだ。
そこで引っ張ってみたら抜けたので、切ることは出来ないが抜くことが出来ると知った。
「三本を一本にスリスリと寄り合わせる……」
複雑に見えるが慣れてしまえばどうということのない作業だ。
最初に作ったのは草鞋の紐であった。
「忍者の修行で唯一褒められた事なんだなあ」
それでも祖父に褒められた事はうれしかった思い出。
施設で寝たきりになってしまったが、今度会いに行こうと考えていた。
「今、繋いでいるのが二メートルだから……三メートルぐらいあれば良いかな?」
ダンジョンの出来事だから五の倍数縛りがあるに違いないと考えていた。
なので、まずは五メートルの距離で試してみようと思ったのだ。
「さあ、あと少し……」
もうすぐ編み上がるというタイミングで、次の草を引き抜こうとしたハジメの目に或る物が写る。
ポヨポヨとした丸い物体。
「ん? スライムだ……」
まだリポップの時間では無い。きっと、逃げ出したスライムであろう。
「草の陰に隠れていたのか……」
だが、次のリポップの時間が迫っている。構っている時間が無かった。
「後でね……」
そう言ってスライム・プレスの所に戻った。改めて見てみると魔石は十個あった。
やはり、先程のスライムは逃げたスライムであった。
「ん、始まった……」
魔石の上に渦が出来、やがて魔石に吸い込まれたかと思うとスライムが出現していた。
何度見ても不思議な光景だ。
ハジメはストッパーの紐を持って五メートル程離れ引いた。
板状パネルが落下し、スライムたちを潰す。今度は高さが十分であったので全て潰せた。
自分を鑑定してみるとBPの値が0.01上がっている。スライム十匹分の経験値だ。
これで遠隔でも経験値が取得できることが分かった。
「次は洞窟の外で操作しても取得できるかだな」
これが可能であれば、自宅まで紐を伸ばしておけば寝ている間にレベルアップが出来る。
時間ごとにストッパーを外す作業と巻き上げの作業を自動化しないといけない。
それは、出来ることを確認してから悩めば良いかとハジメは考えていた。
誤字報告ありがとうございました
助かります!




