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第019話 虐殺機関

 ハジメは再出現したスライムたちを次々とやっつけた。

 手にしているのは十一個の魔石。それを洞窟の中に並べて置いた。


「これでリポップしても探し回らないで済むはず」


 今日は時間が許す限りスライム駆除を行う予定である。少しでもBPを上げたかったのだ。


「さて、納屋から持って来たぶら下がり健康器具を使ってスライム・プレスを作ろうかね」


 ハジメの雷鎚が有効なのは分かったが一々持ち上げるのが面倒だった。

 そこで、器具を自作する事を思い付いた。

 まず、ぶら下がり健康器具に滑車とロープで雷鎚を持ち上げる。

 後は、スイッチ一つで落とすようにすれば楽する事が出来ると考えついたのだ。


 組み立てたぶら下がり器は高さが二メートル、幅と奥行が七十センチぐらいだ。

 これならスライムを四匹☓四匹の十六匹ぐらいリポップさせても平気なはず。


「ん?」


 今、持っている雷鎚では全部をカバー出来ない事に気が付いた。

 雷鎚の大きさは十センチ四方ぐらいなのだ。


「底が広めの石を都合しなくちゃ……」


 ダンジョンの石を加工するべく通称『石小部屋』に向かった。

 ここには石が沢山落ちている不思議な部屋だ。他にも『草小部屋』も存在する。

 平たくて薄めの良さ気な石を物色していた。余り大きいと持ち上げるのに苦労してしまう。


「これで良いかな?」


 盛り上がった石の小山の端に板みたいな石を見つけた。

 その板状になった石を持ち上げてみた。重さもそこそこ有り理想的に思えた。

 小山を掘り進むと次々と板状の石が見つかっていく。


「コレってタイルなのか?」


 タイルと言うか厚み的にブロックのような印象もあった。

 板状の石に付いた泥を払ってみると何か模様が刻まれているのが分かった。


 壁を見ると元はタイルが在ったであろう形跡が見て取れる。

 きっと、壁一面を埋め尽くしていたのであろう。


「ダンジョンが出現した時の地震で崩れたんやろうねぇ」


 小部屋の大きさは十二畳くらいだ。大きさからすると広間ではなく控室みたいな作りのようだ。


「んー、元々はお洒落な部屋だったんだねぇ」


 ハジメは掘り出した板状タイルをぶら下がり器の前に運んだ。

 そして、持ち上げられるようにロープに縛り付けてぶら下げた。

 ロープの先は電工リールに取り付ける。リールを巻き上げることで石を持ち上げるのだ。

 最初は手でロープを引こうかと思ったが、大変そうだったのでリールを活用する事にした。

 他にもスライムたちが逃げ出さないように周りを石で囲って置くのも忘れなかった。


「じゃじゃーん!」


 『スライム・プレス』の完成である。出来栄えは素人感丸出しだがハジメは満足していた。

 そして、誰も見ていないがVポーズを決めてみた。


「ふふふ……」


 この装置で哀れなスライムたちは、リポップした瞬間にプレスされていくのである。

 『虐殺機関』という名称がぴったりな装置だ。


「科学の前に犠牲は付き物なのだよ明智くん……」


 そう言ってニヤリとする様はマッド・サイエンティストのようである。


 ハジメは再び石部屋にやってきている。

 先程見た文様が気になったからだ。


「他にも有るかな?」


 板状タイルを一枚づつ裏返して回った。

 そして、全てのタイルに文様が彫り込まれていることに気が付いた。


「全体を見てみたいな……」


 石部屋は、その名前の通りに石が散乱している。

 文様が判るようにする為には、少し片付ける必要が在った。


「まあ、後でやろう……そろそろ時間になる」


 タイマー時計を見るとリポップしている時間のはずだ。

 ハジメは急いでスライム・プレスの所に戻った。


「あちゃー、リポップした後だったか」


 出来ればリポップする様子を見たかったが遅かった。

 石部屋で時間を取られたせいである。


「まあ、いいや」


 スライム・プレスの下にはスライムが十一匹居る。全てリポップしたようだ。


「ふふふ……じゃあ、始めるか」


 電工リールのストッパーに手を掛けた。


「3・2・1。 くらえ!」


 ハジメがストッパーを外すと板状パネルは勢いよく落下した。


「あれ?」


 板状パネルは少しだけ浮いているように見える。重さが足りなかったようだ。


「あああ、拙い……うりゃっ!」


 ハジメは落下した板状パネルの上に乗っかった。嵩増しで止めを刺すためだ。

 今度は上手く行ったようで、スライムが潰れる感じが足元から伝わってくる。


「もう少し高い位置じゃないと駄目なのか……」


 威力が不足していたようだ。

 ハジメは電光リールを巻き上げて、板状パネルを再び持ち上げた。


 中を覗き込もうとした時にスライムが一匹飛び上がって攻撃してきた。


「をっと、危ない……乱破集の末裔を舐めんなよ?」


 祖父に才能が無いと言われたのは内緒だ。

 それでも鍛えられていたせいか躱すことは可能であった。


「まあ、最初の時には攻撃されると思ってなかったから食らったけどな」


 鳩尾に直撃を食らって、吐きながらのた打ち回ったのは忘れることにしてある。

 スライムは追撃すること無く草部屋の方に逃げて行った。


「後で探し出して始末してやる……」


 スライム・プレスの下に残された魔石は十個であった。

 逃げたのは一匹だけだ。



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