第015話 魔石の効用
ダンジョンにやってきたハジメは、昨日のスライムリポップ現場にやってきた。
「うむ……」
スライムは想像した通りリポップしていなかった。やはり、邪魔な物があると駄目らしい。
しかし、問題はそれでは無かった。
石斧の枝が無くなっているのだ。石斧の石だけ取り残されて、下に魔石がポツンと置かれていた。
「ビニール紐も無くなっている……」
ダンジョンに吸収されてしまったのだろう。
やはり、ダンジョン由来のものでないと、洞窟内に設置出来ないのかと思い始めた。
「また、石斧を作り直すか……」
ハジメはダンジョンから一旦出て、家から大きめのハンマーを持ってきた。
石などを砕くのに使う奴だ。
今度はハンマーの先っぽに石を括り付けるつもりだ。
「まあ、吸収されないように外に出しておけば良いだけだしな」
普通の木の棒だと握る所の強度が足りない気がしていた。
製品として売られていたのだからある程度の強度は大丈夫だろう。
ハジメは石の小部屋に入って、ハンマーで適当な石を叩いてみる。
きんっ!
音は派手に響くが手が痺れるだけで一向に割れなかった。
「うーん……」
ハジメは思案顔になる。外世界の物ではダンジョン産の物に効果が無いのかも知れない。
魔獣には通用しないのだと思っていたが、それだけではないようだ。
(待てよ……ダンジョンの石同士なら割れるんじゃないか?)
思い付いたら試さないと気が済まないハジメは石を手に持った。
大きめの石を手に待った小型の石で叩いてみる。すると、端が欠けていく事に気がつく。
「おお、やっぱりか……」
そこから石を石同士で削る作業を行った。
「どっこいしょー」
小さい石だと少ししか削れないので、大きい石同士で削る作業を行う。
一抱えもある石なので重い。
「うんこらしょー」
それでも期待したような削られかたでは無い。希望している形に近付かないのだ。
「しおこしょー」
専門の石工という訳では無いので、やり方が拙いのかも知れない。
偶然に頼っているのは事実だ。
「思ったよりシンドイ作業だな……」
ある程度の時間を掛けて見てくれは悪いが、適度な大きさの石が削り出せた。
「こんなもんかな」
石は五センチ位の物と十五センチ位の二つ作った。
何かを括り付けるのが前提なので、両方とも四角っぽい石だ。
「コレを木に縛り付けて……と」
五センチ位の石はハンマーに接着剤で貼り付ける。
実験的な意味合いが強い。
「打撃面にダンジョン産の石があればきっと大丈夫……かな?」
十五センチ位に削り出した石に木の棒を二本括り付け、整地などで使うタンパーのような形状にしてみた。
大きさもあるし車を付ければ持ち運びに便利になりそうである。
「良し、コレは雷鎚と名付けよう」
ハジメは早速『ハジメの雷鎚』を使ってスライム退治に乗り出す。
スライム上に落とすだけなので何度も叩かなくて良いかもと考えたのである。
「そりゃ!」
スライムはプチュンと弾けたようだ。そっと雷鎚を退けるとスライムは魔石に変化していた。
重さで魔石が割れるかもと心配したが大丈夫なようである。
「やったね!」
実際にやってみると一撃でスライムを倒せたのだ。
考えたとおりになったのでハジメはニンマリと笑った。ガッツポーズまで決めている。
「残りも片付け……る!」
次々とスライムを叩き潰していく。垂直に持ち上げて落とすだけなので簡単であった。
「最後はコイツで決める!」
最後の一匹はハンマーで叩いた。折角作ったのだから試したかったのだ。
こちらは一撃とはいかず二回ほど叩く必要があった。やはり、質量のある『雷鎚』の方が有利であった。
「その内、石斧も作っておくか……」
『雷鎚』は便利だが、変な格好になってしまうので腰が痛くなりそうなのも欠点だ。
それに持ち運ぶのにちょっと不便である。旅行カバンのように車を付けると良いかも知れない。
「まあ、それは追々改良していこうか……」
それでも一撃でスライムをやっつける事が出来るのは有り難かった。
「それとステータスを表示してみるか」
ハジメは魔石を全て外の物置の中に仕舞ってからダンジョンに入った。
ダンジョンの中なら魔石に頼らなくても可能だと検証する為だ。
「鑑定!」
ステータスパネルが現れた。
名前:石垣一
階級:1
HP:5/5
MP:1/1
BP:1.041
状態:正常
職業:謎こんにゃくと闘う者
筋力:2
頑丈:2
敏捷:3
魔力:1
知力:1
幸運:1
特技:(鑑定:初回特典)
やはり、ダンジョンの中だと魔石に依らずに出せるようだ。
「よしっ!」
とりあえずVポーズを決めてからダンジョンを後にした。