第014話 謎展開
学校の昼休み。
ステータスを確認するのを思い出したハジメは屋上に来ていた。
リポップの事をアレコレ考えて確認するのを忘れていたのだ。
そこで人が少ない屋上に来ていた。ここなら独り言を言っても安心出来るのだ。
(自分を鑑定……)
ハジメは柵に手を掛けたまま、風景を眺めてるのを装ってステータスパネルを呼び出そうとした。
しかし、何時ものステータスパネルは現れなかった。
「え?」
毎度お馴染みの謎展開にハジメは驚愕してしまう。
「なんでやねん」
ここでハジメは一旦深呼吸をする。
焦りまくって斜め下の方向に努力が向かってしまうのは何度も経験済みだ。
(くぅ、今度はなんだよ……)
最初の時は鏡を見ていた。つまり、自分を認識出来ていたのだ。
それが原因かも知れないと、ハジメは昇降口にある姿見の鏡に行った。
「鑑定」
今度は自分の姿を写しながら唱えた。しかし、ステータスパネルは現れない。
(あれ?認識じゃないのか……)
残る可能性はダンジョンとの距離と服装であった。
学校とダンジョンの位置は自宅を挟んで真逆の位置になる。当然距離がある。
鑑定能力がダンジョン由来の力であるとすれば魔蘇とやらの関連があるはずだ。
(魔蘇って……魔石って魔蘇が固まった奴だったよな)
ステータスを出していた時には何時も部屋着であった。
(服装……あっ!)
風呂あがりの時はスウェット上下を着ていた。あのスウェットは探索の時に着ていた奴だ。
着替えないのかよと思うかも知れないが、面倒くさがりのハジメは家に居る時スウェットの格好なのだ。
『高校生になったのなら自分のことは自分でする』
という教育方針の元、自分が着るものは自分で洗濯するというルールが石垣家にはある。
もちろん、母親が決めたルールだ。逆らうという発想はハジメには無い。
なので、洗濯の回数を極力減らすために毎日同じものを着ていたのだ。
妹に『臭い』と猛抗議されると、嫌々洗濯をする始末であったのは言う迄も無い。
(確か……スウェットのポケットに魔石が入っていたはず……)
帰宅したら早速検証してみようとハジメは考えていた。
午後の授業を上の空で過ごしたハジメは終業と同時に自宅に向かう。
『帰宅部』所属の精鋭であるハジメには隙が無いのだ。
自宅に戻り、部屋のベッドの上に乱雑に脱ぎ捨てられたスウェットのポケットから魔石を取り出す。
それを右手に握りしめ自分の姿を頭の中に浮かべなが叫んだ。
「鑑定!」
事情を知らなければ、重度の厨二病を患った痛い奴である。
本当は頭の中で考えるだけで出てくるのだが、ここは格好良く決めたいと右手を振り上げながら唱えた。
お馴染みのステータスパネルが現れる。
名前:石垣一
階級:1
HP:5/5
MP:1/1
BP:1.031
状態:正常
職業:謎こんにゃくと闘う者
筋力:2
頑丈:2
敏捷:3
魔力:1
知力:1
幸運:1
特技:(鑑定:初回特典)
BPがスライムをやっつけた分だけ上がっていた。
「成る程……」
どうやら外世界で特技を使うには、魔石を身に着けている必要があるようだ。
これでステータスパネルを表示出来なかった理由が分かった。
「外世界では魔蘇が無いのかもしれないな」
魔石は魔蘇が凝結したものだと理解していた。
なので、魔石から魔蘇を得てスキルが使えるのだと思い至ったのだ。
「よしっ」
一つの謎が解明出来て嬉しくなった。拳を握ってガッツポーズを決める。
だが、ここで有ることに気が付く。
「ああっ、ダンジョンで拾った魔石がリポップするかもしれん……」
ダンジョンから魔石を持ち帰り机の引き出しに入れっぱなしだったのだ。
リポップするのには魔蘇が必要で、その塊である魔石同士なら条件を満たしてしまうのではと思い至ったのだ。
「…………」
ハジメは部屋中を見て回った。自分の部屋の中でスライムが徘徊する様子無い。
しかし、懸念していたスライムのリポップは発生していなかった。
「だ、大丈夫か……」
スライムに殺される気はしないが、奴らには打撃という地味な攻撃がある。
それにダンジョンの掃除屋とネット小説に書かれている。
事実、ハジメが木の枝を差した時には、消化するように枝を飲み込んでいたのだ。
家族に危害を加えられる可能性を心配していた。
「魔石はダンジョン入口のボックスに仕舞っておくか……」
机の引き出しに入れておいた魔石を段ボール箱に入れた。
それを持ってダンジョンまでやってきた。小型物置に仕舞っておく事にしたのだ。