表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/67

第011話 虚無の空間

 ダンジョンの奥を探索する前に一つやることがある。


 魔法を実際に使ってみることだ。


 ステータスパネルによるとハジメは魔力を持っている。

 渇望して止まなかった魔法が使えそうな力を持っているらしいのだ。


「ふふふ……ライト」


 ステータスパネルの出現方法で具体的にイメージするのが重要であった。

 なので、懐中電灯をイメージしながら唱えてみた。

 しかし、光はどこも照らさなかった。何度かやってみたが同じである。


「うーーん……」


 ハジメは悩んでいた。

 魔法を発現させる方法が分からないのだ。


『ふぁいやあぼぉぉぉる!』


 大声で叫んでみた。何も変化が無い。

 眼の前には虚無の空間が広がっているような感じだ。


「何故だあああぁぁぁ」

『……だあああぁぁぁ』

『…………ああぁぁぁ』

『………………ヌルポ』


 ハジメ(16歳童貞)の心の叫びがダンジョンの中を木霊してゆく。


「……」


 絶叫しようと何だろうと使えないものは使えない。

 諦めたハジメはトボトボとダンジョンの中を進んでいく。


「あっ、スライム……」


 うっかりすると見落としてしまいそうな拳大のスライムがウネウネと動いている。


「コレをやっつけても経験値が激低何だよなあ……」


 ハジメはエクスカリバー(枯れ枝の棒っきれ)でスライムを突いた。

 するとペタリとスライムは木の棒に取り付いてきた。


「お、やるのか?」


 落とそうと木の棒を振っても、スライムはべたっという感じでくっついて離れない。


「あ、忘れてた」


 ダンジョンの中の魔獣は、ダンジョン由来物でなければやっつけることが出来ないと思い出した。

 ハジメは昨日使った石を持ってきて、張り付いているスライムの上に落とした。

 ところが隙間が出来てしまったせいなのか、石の下からスライムが這いずって出てきた。


「隙間があると駄目なんだね……」


 石を再度持ち上げてスライムに落とすと黒い霧状の物が出てくる。


「ふむ……」


 石を持ち上げると魔石が残り、スライムが居なくなっているのを確認した。

 するとハジメは奥に向かって歩き出した。魔石は拾うのも面倒なのでそのままだ。

 木の棒を再び持ち直す。石はそのまま置いておいた。持ち歩くには重すぎるのだ。


「火炎放射器ならどうだろう?」


 物理的に駄目なら火の放射熱でやっつけることが出来るかも知れないと思い付いた。


「そういや、スプレー缶に火を付けて噴出して燃やしてみるのもアリだな」


 この使い方は大変に危険なのでやってはいけません。

 それ以前に洞窟の中で火を燃やすのは、酸欠の恐れがあるので大変に危険だ。


 ハジメは持ってきた懐中電灯を点けた。

 昨日は途中で帰ってしまったので奥まで行けなかった。今回はこの階層を見て回る予定であった。


「な、何も無い……」


 洞窟が真っ直ぐに伸びているだけであった。

 持ってきた懐中電灯の光では奥まで照らすことが出来なかったのだ。


 横穴らしきものが有ると中に入ってみたが百メートルも行くと行き止まりであった。

 そんな感じの横穴や小部屋が五十メートル間隔で左右に開いている。


 気になると確認しないと気が済まないハジメは律儀に一つ一つ入って確かめていく。

 一番奥と思われる場所まで来たが見える光景は変化が無い。


「ええええ……階段とか転移用魔法陣とかあるもんじゃないの?」


 洞窟の奥は行き止まりであったのだ。

 懐中電灯に照らされる壁面は横の壁面と代わり映えしない代物だ。

 近付いて叩いてみたがやはり壁であった。


「…………」


 行き止まりの上下左右を照らしてみても何も無い。

 このダンジョンはこの洞窟だけなのか、若しくは途中に階段があったのを見落としていたかだ。


「全部見て回ったはずなんだがなあ……」


 ハジメは腰に手を充てて考え込んでしまった。


ぐぅ~っ


 ここで自分が空腹である事に気が付いた。ダンジョンに入って結構な時間が経過している気がする。


「あっ、そろそろ帰るか……宿題しないといけないし……」


 辿ってきた道を引き返し始めた。

 途中、スライムを踏んだりしたが入口まで無事に辿り着いた。

 だが、外界に出て違和感を覚えた。


「まだ、陽がある……だと?」


 時間がさほど経過していない感じを受けたのだ。

 ダンジョンの中では機械が正常に動作しないとはいえ、歩いた距離を考えると三時間は経っていると思っていた。

 だが、外に出て時計を見ると中に入ってから一時間も経過していなかったのだ。


「え? どういう事??」


 ハジメはダンジョンの新しい謎に気が付いたのだ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ