第010話 鑑定
学校から帰宅して直ぐにダンジョンにやってきた。
もちろん、ステータスパネルを再び出現させる為だ。
学校ではステータスパネルの事ばかりを考え、上の空になり教師に叱られてしまった。
もちろん、ダンジョンにやってくる前に浴室でも試していた。
だが浴室では駄目だったらしい、ならばダンジョンの中ならいけるはずと意気込んでいた。
「ふふふ……鑑定…………」
ならば問題の発端である、ダンジョン内であれば簡単に出せるであろうと考えたのだ。
「……」
ワクワクしながら待つが何も起こらない。予想に反してステータスパネルは出現しなかった。
「へ?」
呪文(?)を唱える場所が問題なのかと考えていたが違っていたらしい。
「か、鑑定」
もう一度叫んでみたが、やはりステータスパネルは現れなかった。
「えええ~……」
ガックリと項垂れてしまった。
今度こそと期待が無駄に大きかっただけに落胆が酷かったのだ。
「場所じゃないの?」
違いが分からなくなってきている。
可能性を考え過ぎて同じところをグルグルと回っている感じだ。
ハジメはステータスパネルが出現した時の状況を必死に思い出していた。
「たしか……あの時は脱衣所で……」
そう脱衣所であった。
勿論、帰宅してから浴室でも試した。その時には念の為に扉を閉めて行った。
家族に(また)変なことをやっていると思われない為だ。
ステータスパネルは現れなかったのは言う迄も無い。
「あっ……」
ここで気がついたことがあった。
あの時は鏡に自分を写して『鑑定』と言ったのだ。
(自分を鑑定……)
ステータスパネルが目の前に現れた。悶絶するほど悩んだのにあっさりと出現したのであった。
「うぇ~い」
某芸人みたいに腰をクネクネさせながら全身でVポーズを取る。
消すことが出来なくなって困り果てた事を忘れてしまったのか嬉しそうだ。
「そうか、何を鑑定するのかを思い浮かべないと駄目なのか!」
それは思ってもいなかった単純な理由であった。
ハジメはちょっとだけ唖然としてしまった。
「くそぉ、俺っていつもこうだよなあ……」
落ち着いて考えれば解決するのに焦って失敗してしまう。
これは子供の頃から変わっていなかった。
「ふぅ……」
ハジメは消した時と同じようにパネルをスワイプして消した。
「……」
ちょっとだけ考えてスワイプで消せるのなら、逆の操作で出来るのではないかとやってみたが出来なかった。
朝方にも似たような事をやって出来なかったのだから当然であろう。
(鑑定)
自分のステータスを思い浮かべながら、頭の中で『鑑定』と考えてみた。
先程と同じようにステータスパネルが出てきた。
「よっしゃっ!」
ハジメはガッツポーズをした。
やり方が分かったのだから嬉しくなったのだ。
「まあ、考えてみたら理屈通りだよな……」
分からない物は鑑定しようがないのだ。だから、表示されない。
何気ないことだが気付いてみれば当然であった。
「じゃあ、これも鑑定出来るのか?」
ダンジョンで活躍する石を手に持って鑑定してみた。
名前:ダンジョンの石
小さめの半透明なパネルが現れた。
「おおっ!」
無事に鑑定出来た。ハジメは小躍りしている。
嬉しかったのだ。
「じゃあ、外ならどうだろう……」
ダンジョンから出て入口付近の適当な石を拾って鑑定してみた。
名前:石
『ダンジョンの』という言葉が付いていない。
どうやら、ダンジョン内と外では区分しているようであった。
「よし、自分を鑑定」
続いて外でもステータスパネルが出せるのかを試した。
「良いんじゃね?」
お馴染みのステータスパネルが出現した。
名前:石垣一
階級:1
HP:5/5
MP:1/1
BP:1.002
状態:正常
職業:謎のコンニャクと闘う者
筋力:1
頑丈:1
敏捷:1
魔力:1
幸運:1
特技:(鑑定:初回特典)
何も変化していないようである。
「特技の力を使ってもHPやMPは消費しないのか」
これは新しい発見であった。
ダンジョン由来の力は、外の世界では行使出来ないと思っていたが違っていたようだ。
入り口の所に立て掛けておいたエクスカリバー(枯れ枝の棒っきれ)を肩に担いで入り口を睨みつける。
「よし、ダンジョンに潜って探索の再開だあ!」
ハジメは気合を入れて再びダンジョンに入っていった。