19.安息の地を目指すのだ!
土日の投稿はお休みします。
4/29 改変済(ポンヌ登場)
「名を聞くに、戦闘が得意そうだな」
「それがその、全員が実存強度1の者たちでありまして。確かに力仕事は得意なのですが、どちらかといえば戦闘ではなく畑仕事が得意なのですじゃ。自村にいたときは畑仕事ばかりやっていたとか」
豚豪族を遠目で見た限りではずいぶんと屈強そうな体だったが、畑仕事が得意か。しかし、鍛えれば戦士として活躍の場がありそうだと思う。飼育場で獣人は肥料扱いされてしまう彼らだが、肉体能力は人間種族よりも優れているのだ。
「確かに畑も大事だが、一団の事を思えば戦士として鍛えた方がいいだろうな。そうすれば一団の守備力は向上するはずだ」
「なるほどですじゃ。今は村にいるのではなく、一団として旅をしているわけですからな。畑仕事よりも戦士であることの方が一団としても利のあること、まさにその通りですじゃ。彼らもベルジェ様に鍛えられることこそ誉れと思うに違いないでありましょう」
身を乗り出すようにしてキナノ翁が同意を示す。ベルジェは腕組みをして「ここまで賛同してくれるのならば、豚豪族以外にも戦う術を教える事もできそうだな」と胸中で頷いた。あとは、一団の核心である旅の目的場所を知ることか。
「安息の地を求めて旅をしていると言っていたが、どこにあるのかは見当がついているのか?」
「いえ、残念ながらどこにあるのかは分からないのですじゃ。安息の地は聖霊の導きによるものですので。ですが、安息の地とは別に聖地に寄ることは決まっております。聖地とは、ここが黒ノ信徒の飼育場となる前に、村々共同で10年に一度行われた礼拝祭事の場所でございますじゃ」
キナノ翁が説明するには、各村々に伝わる口碑伝承を搔き集めた結果、礼拝祭事の場所が浮上したのだという。それは飼育場の南方にそびえ立つ山脈にあり、大昔に天から舞い降りた聖霊がその地を祝福したのが始まり。それ以後、その地を聖地として崇められた。しかし、数百年以上も昔の伝承で、集めた口碑が正確に事実を伝えているとは限らない。そうはいっても、興味をそそられる話だ。ベルジェは奴隷としてずっと一つの場所に縛り続けられたままの生活をしてきていた。だからこそ心がうずく。初めて異世界に来たのだと知った日、ファンタジーならではの遺跡を見てみたいという幼き頃の憧憬がベルジェに蘇った。
「ならば行くしかないな、その聖地に。善は急げというが、ここからどの程度の距離になる?」
「おそらく25ミーレ(≒40kim)程ではないかと、愚見いたしますのじゃ」
25ミーレか。剣奴に見つからないように道なき道を進むことも考えると、20日以上の行程になるだろうな。それに高き山を登っていくわけだから、相当に過酷だ。「魔獣との戦闘にも備えなければならない。さっそく各自の持ち場と連携を考えるべきだな」独白にも似た呟きに、キナノ翁も大きく頷いた。
「言い伝えでは、聖地は試練の旅路とも言われておりますじゃ。しかし、皆で力を合わせれば必ずや聖霊の導きがありましょう」
「そうだな。楽な旅路でないだろうが、皆で力を合わせればきっと辿り着けるはずだ。俺も護衛を十全に果たすし、その間にモモとリリが聖霊魔法を覚えてくれれば戦闘も楽になるだろう。そうなれば戦術にも幅が出てくるからな。まずは各自の連絡網構築に、先ほどの狸鬼族の通信糸の使い方を把握しておきたい」
「分かりましたのじゃ。では、直ちにポリーヌとポンヌを呼びまーーー」
ちょうどそう言いかけたとき、先ほどの未亡人であるエルマが、リリとモモを連れ立って顔を出した。ベルジェを前にして、エルマが恭しく片膝をつき首を垂れる。
「ベルジェ様、キナノ様。夕餉の準備ができましてございます」
「ベルおじ~、傑作料理が作れたんだけどっ!」
「は~、リリってば本当に独創的な料理をしちゃうから、本当に大変にゃんよね。ベルジェさん、一団のみんなと一緒にエルマさんの村の郷土料理を作ってみたのです。香草も使ったので是非味わって欲しいにゃ」
「モモは香草について色々と言ってたもんな。エルマのとこの郷土料理か、楽しみだな。さて、そういうわけだからキナノ翁、話は飯を食べてからにしよう」
「はっ、仰せの通りに。ベルジェ様」
◇
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