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17.WILD CHALLENGER Act.3

 吾妻円はプログラム1つ目、セカンダリシュートの競技を終えた。

 全弾必中でそこそこいい結果を出せたと思ったものの現状で最下位に甘んじた。円が初心者であるのも理由であるが今回は特に参加者のレベルが高かった。


「おつかれー、初めてだからまぁこんなモンでしょ」


 入れ替わりに陸奥ハルトがなぐさめてフィールドに出る。

 確かに現状最下位であった、その結果に対し後藤希や真壁まりが結果を労う。しかし円はそれを気にする事はなかった。事前に武者小路から初心者であることを自覚するよう忠告されたし、何よりも様々なガンの射撃を眺められるだけで楽しかった。円みたいなシンプルなガンもあればカスタムを施されたガンもある。


「やぁやぁキミ初心者?」


 隣の卓から声をかけられる円と希とまりは振り返る。隣は中年の男3人組と筋肉質な男の混成の卓でその3人組のほうから声をかけられた。3人組は円の見立てだと装備類は整っているベテランであり、実は使っている銃も気になっていた。


「ええ初心者ですね」


 円はその質問に正直に答える。


「箱出しの銃からしてトーシロ丸出しだもんね」


「いるんだよね、こういうとりあえず装備だけ整えましたみたいなマヌケって。ぶっちゃけ進行の迷惑だからこういう場に参加してほしくないよね」


「わかる、今どきタクティカルマスターとP90なんて初心者丸出しだわな」


 その時点で円はようやく侮蔑されている事に気づく。


「ここもこんな素人入れるなんて格が落ちたなぁ」


「キミたちもつるむ仲間ぐらいは選別したほうがいいよ」


「初心者とつるむぐらいなら少なくとも僕らみたいなベテランと組んだほうがいいね、初心者が感染るから。何なら今からでも乗り換える?」


 男たちは希とまりに諭すように言う。


「初心者が感染るって何スか? オジサン達いい大人なのにわたしより日本語ヘタクソっスね」


 それに対し希は返す。男たちは予想外に言い返されムッとする。


「それに初心者は初心者同士仲良初心者向けの大会楽しむんで、そこんトコよろしくっス」


 希がそこに正論を返す。確かにこの会がベテラン勢達が集う競技性の高いものであるなら中年男たちの言い分にも一理あるかもしれない、しかし名目上は初心者向けの自由エントリー型の大会なのだ。ベテランもいれば初心者もいる、この場にいる時点で対等の立場である。

 まりはおろおろしながら「やめましょうよ」と弱気にいう。


「おん、皆さんでなんか楽しいことでも話してる?」


 ハルトが競技から戻った、男たちは先程の雄弁から一転黙ってしまった。円は小柄で体躯も貧弱であり順位も最下位、陸奥は格好は平凡なものの顔が良く声が通り身長も高く順位も男たちよりも上だ。一言で言えば円は人としてオスとしてナメられてるのだ。

 まりの順番を終えて次の競技に入ろうとしていたが。3人組と同じ卓にいたハードマッスルが挙手をし「居心地が悪いから空いてる席に移っていいか」という質問をした。たしかに周りが全員チームだと居心地はよくないだろう。

 運営は許可をしハードマッスルは荷物を持ち円たちの反対側の隣の卓に移動した。


「そこ競技見えづらくないですか?」


 円はハードマッスルに聞いた。確かに真正面でなく柱と撮影用カメラに邪魔されて競技が見えづらい。


「あんな連中と同じ空気を吸うよりはマシさ」


 ハードマッスルは人懐っこい笑みで円にそう答えた。円はハードマッスルが居心地の悪さ感じたのは中年男たちの女性陣に対する態度を見たからだと思っていた。

 競技を見ながら円は小声で皆にある提案を相談をした。


「いいと思うよ、賛成」


 陸奥が円の意見を肯定したため、まりも賛成し希は「仕方ないな」とその提案に同意した。


「あの、こっちの席で競技見ませんか?」


 円がハードマッスルに声を掛ける。ハードマッスル驚いた顔をした。


「いいのか?」


「ええ、僕たち全員賛成です」


「じゃあお言葉に甘えるとしよう」


 ハードマッスルは円と希の間(お誕生日席)に座る。


「鶴田健吾だ」


「吾妻円です」


「よろしく」


 ハードマッスル改め鶴田はプロテクター付きのライダースジャケットと太ももがはち切れんばかりのジーパンを履いていて左太ももに大型のホルスターのみが装着されている、体躯は陸奥よりも身長が高く屈強で上半身も下半身も筋肉質だ。加藤拓郎を一回り大きくした感じだ。

 鶴田の使っている銃は銀色のマズルコンペンセイターが搭載されたデザートイーグルでグリップには赤い木のグリップが装着されていて横向きの髑髏が刻印されている。


「デザートイーグルかっこいいですね」


「うむ、実は自慢したいね。是非に見ていってくれ」


 鶴田はスライドを引きホールドオープン状態にして円に銃を渡す。迫力のあるスライドオープンに円は圧倒され両手でそれを受け取りまじまじと見る。円のタクティカルマスターよりもずっしりと重い、そしてかっこいい。


死を想え(メメントモリ)……」


 グリップの髑髏の頭部にはmemento moriと書かれていた。サイトを覗くとリアがゴーストリングサイトで発光体(トリチウム)の入っていないシンプルなかさ増し(ハイ)サイトであった。


「僕も見たい」


「いいとも」


 競技の傍らで鶴田の銃を見て回している。


「んーこれ結構お金かかってるね、ベースはWE-TEC?」


「いやライラクスだ。これともう一丁で諸々20万近くはかけた」


 気の遠くなるような金額に円は目が眩む、同時にそんな大金をかけて大切に使っているであろう銃を他人に快く見せる鶴田の心意気にも感心する。


「そろそろ出番の様なので失礼する、また後に」


 鶴田はデザートイーグルを回収するとデザートイーグルとストックを持って競技に向かった。あのデザートイーグルにはストックを装着するアダプターらしきものは無かった。


「はじめよう」


 ストックとデザートイーグルを握り込む。円はそこで鶴田の意図が理解できた。

 米国の銃規制は複雑怪奇で拳銃にストックを装着したらその時点でその拳銃はライフル扱いになってしまう、そしてそれを回避するためにストックを装着せずにストックを使う方法が編み出された。

 至極単純なもので拳銃と一緒にストックを握って使う、装着がされていないため法的には拳銃という理論だ。

 鶴田はそれを自作したらしくARカービン特有のバッファーチューブのガワを装着したものを使用しそこにチークピースを装着したクレーンストックをはめている。

 鶴田の競技を見ていて円は前日にテツ兄に渡された画像を思い出し反射的にスマートフォンを確認する。そこで彼女(・・)が今の鶴田と同じ考えに至ってる可能性を見つける、ただし彼女の場合は20年近くも前である。

 その可能性を見つけた後に円の番が来てしまい慌てて支度をするもののP90でなくタクティカルマスターを持っていってしまった。

 隣の卓から野次が聞こえるが、今のは完全に円のミスであった。反省。

 気を取り直しP90を持っていく。しかし彼らの言葉が頭を過ぎり自分の全力を出しきれなかった。


――――――――――――――――――――――――


 陸奥ハルトは表面上は取り繕っているものの2回戦までの吾妻円の競技の戦績を見ていて萎えていた。円は初心者そのものであった、戦績もだが何より所作が素人で見どころがない。隣の親父連中に揶揄されて当然、十把一絡げ(三下)有象無象(モブ)と同程度。

 例の動画は偶然かと思い自分の嗅覚もあまり信用できないなと思っていた。ただ動画を見た時に可能性を感じたのも事実だ。

 当て馬如きを根気強く育てる義理もないし根気もなく、そもそも可能性がない人物に投資をする事自体がナンセンスだ。しかしユキヲみたいに不義理で以て応対すれば足元をすくわれる、故にこのシューティングマッチだけは最後まで世話をしてそこで切る。

 ハルトはボケーっと競技を見学し、手抜きで競技を行いつつトータルスコアでそこそこ(3位)の順位につけた。親父連中は2位、4位、5位、円の戦績は現状だと最下位。

 そして3回戦シャープシュートの競技の時にそれは来た。大半はメインアームで行っていたが円はサイドアームを選んでいた。

 見どころがあまりなくボケーっと見ているもののハルトはそれを見逃さなかった。

 全弾必中していたのだ。ハルトは誰かが競技をを行う際には本人でなくターゲットを見て音で感じ取るクセがあった。運営は別のことに気を取られ競技を確認していなかった。


「3発だけ命中ですね」


 運営は単眼鏡で確認してそう言った。的を確認すると穴が中央より少し上に3発空いていた。しかし音では5発命中していた。


「あのー、すいません。そのペーパー確認してもらっていいですか?」


 ハルトが言う前にせながそれを言う。運営はせなの言う通りにターゲットペーパーを確認する。

 せなと円と運営とハルトを含め気付いたであろう他何名かがそれを確認する。


「これ一見すると3発しか当たってないようにみえるんですけど……ここ、ちょっとよく見てみてください」


 せなは的の穴の部分を指差してから自分のターゲットを見せた、円のターゲットは3つだけ穴が空いていてせなのターゲットペーパーはレトロなM4パトリオットの電動ガンを使っていてバレルの短さやストックが無い都合上ターゲット全体にバラけて当たっていた。


「わたしのターゲットの穴はコレなんですけど、この人のターゲットのここの穴大きいし連射当てたみたいに千切れそうになってますよね、多分ここに3発、こことここに1発ずつで全弾命中してますね」


「んー確かに、偶然3発当たったとしてこんな中心にきれいに当たって2発が全く当たってないとは思えないね」


 SR-25で競技に挑んだおちてるまがじんもそう指摘した。確かにその辺に数発かすっていたら偶然と思うが円の弾が当たっていた場所はほぼ正中線上であった。


「運営サン、ビデオ判定とかないの?」


 ハルトは運営に聞くが無いと言われてしまった。

 これが例えば優劣で得られるものが無ければ問題はないが、今回はある(・・)のだ。円が初心者であると皆が侮った結果問題が発生してしまった。


「運営サン、提案なんだけど」


 ハルトはこの場を収めるある提案をした。円の競技をもう一度行い1度目の競技の得点と2度目の競技の得点の平均点を得点とする案だ。一見すると合理的なハルトの提案を運営は飲まざるを得なかった。


「そんな事する必要ないだろ!」


「初心者のくせに時間取らせすぎだろ」


「次だ次」


 隣の親父連中が野次を飛ばす。


「それは違うな、これは彼の問題でなくあくまでスタッフ側の不手際だ。彼を責めるのはお門違いだろう? それにもう一度行ったとしてもたかが数分だろう」


 鶴田が親父連中にピシャリと言ってのける。体格もあり親父連中は押し黙った。


「それに2度目の方が良い得点出したら、吾妻くんの得点は相対的に低くなるし。吾妻くんがヘボならヘボでそれを確認できるならオジサン達としても損のない話なのでは?」


 ハルトは言い聞かせる様に親父連中にいい、その場の全員を納得させ異例の2度目が行われることとなった。

 ハルトは集中して競技を見る。可能性が芽生えたのだ。


――――――――――――――――――――――――


 円は自分の結果に疑念を抱いていた。

 落ち着いて競技に挑み、部長の助言を忠実に守り前の競技より良い結果を出せターゲットに全弾命中していたのを確認したがそのターゲットペーパーを見た結果は異常だ。SR-16と同程度に集弾率がいい事になっている。

 それをもう一度やるのだ、皆の期待と不信が円の背中を焦がす。

 円は一旦落ち着いてからもう一度競技を行った。


「右手は銃の中心線が手首を通るよう握り左手を右手に添えて……うむ、それで手首ではなくて肩や身体のひねりを使って腕全体で照準を合わせるようにして、銃と腕が一体化するように構えて」

「射撃中は心臓や呼吸の動きでブレないように息を止めて」

「そうしてから両方の目でリアサイトを見てフロントサイトと合わせ、丁寧に狙う」

「引き金を引くときは人差し指の先の中央、爪の付け根の裏側を意識して引いて、引くときは肉じゃなくて骨で丁寧に押し込む」


 あの時と同じ(・・)感覚で1人で撃つ。違う点があるとするならば部長がいない事だけであった。基本に忠実(オーソドックス)なアイソセレススタンスで競技を行い綺麗なモーションをとる。

 円がここまできれいなモーションを保てる理由が3つあった。

 1つは部長の教えを忠実に守ること。肩や身体のひねりを使って照準を合わせ、爪の付け根の裏側を意識し骨で押し込む。それを守っていた。

 もう1つは円が日夜トレーニングに励んでいたからだ。たったの2ヶ月に満たない間であるが毎日継続的に筋力トレーニングを行い銃を構えるだけの最低限の筋力と体幹をつけていた。

 最後の1つはそのトレーニングの中にタクティカルマスターを用いた銃を構え続けるトレーニングを行っていたことだ。円は平衡感覚を鍛えるべく自分で考えてリアサイトに新品の消しゴムを乗せて左右をピッタリ合わせる事だけに心血を注いていた。これを行った理由は長くない期間で円がエアガンの事を調べ、その中で弾が飛ぶ理由をガスやモーターの力でなくHOPUPシステムであると理解しHOPUPシステムが最大限に活躍するのが銃の左右を平行に合わせたところであった。ベテランであれば無自覚に行えるほど当たり前の事であるが円はそこに自分で気づきを得たのだ。

 視界がスローモーになり射撃のブローバックからくる衝撃によるブレを目視で微修正しながら射撃を行う。上へ下へ揺れる銃身が真正面を向く直前にトリガーを丁寧に引き次の弾が飛んでいきペーパーターゲットにゆっくりとのめり込みBB弾がペーパーターゲットに穴を開けるのをスローモーで見る。部長の教えとトレーニングの成果と円の気づきが1発1発をターゲットペーパーに当てていく。

 射撃を終える、最初に周りの時間が早くなり、次に肺が悲鳴を挙げ、最後に息をするのを忘れていた事に気づき肩で息をする。今回も全弾当てた(・・・)がどこに当てたかは的を見ないとわからなかった。

 係員がターゲットペーパーを持って来る、その紙には中央に大きな穴が空いているだけであった。それ以外はまっさら。

 皆が驚く、明らかな初心者であるはずの円がガスブローバックハンドガンでここまでの好成績を残したのだ。

 ここでようやく自分の身体に熱が入っているのに円は気がついた。しかし次のプログラムは小休止であった。


「2人共疲れたでしょ、なんか奢るよ。何がいい?」


「じゃあお茶で」


「ポカリがいいっス」


「ミルクティでお願いします」


「君は?」


 陸奥は鶴田にも聞いた。


「ありがとう。では、ポカリを頼む」


 鶴田は自分の財布から200円を陸奥に渡す、断るのも面倒なのでありがたく貰っておく。陸奥は1人で自販機へ向かった。

 円は落ち着きを取り戻してからある人物に謝礼を言う。


「先程はありがとうございました」


 円はせなのところへ向かう。


「んー正当な評価がされないのは気分がよくないから」


 せなは水筒から温かいお茶を淹れながら少し思案して「いや」と独白する。


「君、多分今日デートでしょ? そのうえで部外者のあの筋肉を卓に入れて、あまつさえはわたしにもお礼を言う。多分そういう周りをよく見た労りや誠実さが気に入ったのかもね」


 せなは温かいお茶を飲み干して「日生もも」と自己紹介をした。


「吾妻円です」


「さすがに彼女さんいる前でアドレス交換なんて不誠実な事はしないだろうから、次も会えたらよろしくね」

 

――――――――――――――――――――――――


 ハルトは自分の嗅覚が正しかった事を知った。

 箱出しのガスブローバックガンでブルズアイの中心のみを普通の(・・・)連射速度で綺麗に穴を開ける、普通のサバゲーマーなら真似の出来ない神業に近しい。その理由はエアガンの性能にある。

 東京マルイの新品箱出しは性能は、良くて中の上程度。初心者向け用ないしカスタムベース用とハルトは割り切った評価している。

 吾妻円の使う東京マルイ・タクティカルマスターは機種としては初版は2000年に発売されたエアガンで、東京マルイのラインナップとしては古参である。撃てて当たればいいサバゲーでは一線級の実用は出来ても、精度がモノをいうシューティングマッチで使うには、かなりのディスアドバンテージだ。

 吾妻円がベテランであればまた違う評価を下した。しかし吾妻円は今年の4月以降にサバゲーを始めた人物でつまり初心者なのだ。   

 そこから導き出せる結論は吾妻円の実力は平凡でもその素地ないし何かしらが普通でないということだ。

 ハルトはこの時点でゾクゾクした、早く企画を練って動画に編集してアップしたい欲求に駆られる。つい数分前とは違い全身に血流が周り下半身は勃起すらしている。

 そんな事を思案し興奮しながら自販機で皆の飲み物を買う、もしここで吾妻円をヒーローズに加入させられるのであれば自販機丸ごと買ってやるのもやぶさかでない。が、しかし巡り合わせが悪くヒーローズのパーティーから弾いてしまったし、ユキヲの日頃の行いや態度を鑑みるとファーストインプレッションは最悪と見ていい。

 ツカサと円をぶつけて面白い動画にする、ハルトの脳裏に一筋の光が浮かんだ。ツカサの敵愾心も利用できるしお互いに何かしらの因縁もある、都合がいい。

 そうなるとヒーローズとしてではなく一個人として付き合っていく必要がある。

 ハルトは何本もボトルを抱えながらそう考えていた。


「何本か持ちましょうか?」


 横から円か出てきた、どうやら先程物言いをした女の子の席にいたらしい。


「ありがとう、じゃあキミたちの分を」


 ハルトはお茶とポカリ2本を渡した。


「いやーすごいね、吾妻くん実は高校からサバゲーやってた?」


「いえ、教えてくれた人達が優秀でしたので」


 円は謙遜して答える。席につき皆に飲み物を配る。


「へぇ、誰に教わったの?」


「部活の部長です」


 ハルト達の通う大学は複数の大学が合併して出来た大学で、同じ活動の部活動やサークルが複数あり、サバゲー関係にのみ絞れば、30以上のサークルを有している。2人は席に戻り皆に飲み物を配る。


「そういえば鶴田さんは普段サバゲーやってるんですか」


 円が鶴田に聞く。


「ウム、基本的には個人勢だが月イチは行っているね」


「動作とか見てて思ったけど結構ベテランよね、どれぐらいやってるの?」


「ウム……15の頃からやっているから10年弱だな。吾妻、君は?」


「僕は今年の4月からはじめました」


「今年の4月からアレって10年分の自信を無くすぜ。そういえばキミ達はどういう関係だ?」


「こことここがカップル」


 ハルトは自分とまりを指さして説明をする。


「それで吾妻くんと後藤ちゃんもカップル」


 後藤希が飲み物を吹き出す。


「アレ、違った?」


「そそそ、そんなわけじゃないっスけど……」


「うむ、デート中であったか。邪魔をして申し訳ない」


――――――――――――――――――――――――


 円はムービングシュートのスタートグリッドに立っていた。

 セカンダリムービングシュートのルールはフィールド内にあるターゲットをセミオートで撃ち、全ての行程を終えるまでの時間を競う。ターゲット数は合計で11あり、フェーズ1はターゲット1と2をバリゲード越しに左右から撃つ。フェーズ2はセダンの廃車越しにターゲット3から6を撃つ。、ターゲット3と4をトランク(車体後方)側から5と6をボンネット(車体前方)側から順番に撃つ。フェーズ3はグリッド上からターゲット7から10を順番に撃ちタイマーストップと兼ねた11を撃って終了、前後にターゲットが配置されターゲット7及び9は正面、ターゲット8及び10は背面に設置されている。最後にタイマーストップを兼ねたグリッドの真下にあるターゲット11を撃ち終了。今回は電子式のターゲットを使用し正確に時間を測れるらしい。

 武者小路の「自らが経験のない初心者であることを自覚する」という事を心に刻み競技に入る。奇抜なことはせず正々堂々と負ける。

 開始のブザーが鳴る。

 フェーズ1のバリゲードまで走り、左、右と撃つ。ここは下手ながらもよくできた。

 フェーズ2は先ず手前側のトランクに隠れ、ターゲット3とターゲット4を、ボンネットに移りターゲット5とターゲット6を手早く撃つ。

 フェーズ3のグリッドに立ちターゲット7、8、9、10と撃ちタイマーストップの11を撃つ。

 現状だと最下位であった。がんばった。


「おつかれ」


 希が円を労いげんこつを合わせる様にジェスチャーする、円は慣れないながらもそれに返す。

 円は席に戻り希の競技を見学する。

 希はフェーズ1は普通であれば真正面を向いたままバリケードの左右から顔を出してを撃つところバリケード右側に右を向きながら隠れ身体をひねって顔と銃口を出してターゲット1に1発、左側に1回転させてターゲット2に1発撃つ。

 フェーズ2の廃車にはスライディングで射撃位置につき、トランク側を手早く終わらせてボンネット側も終わらせる。

 フェーズ3は前後前後と撃ちタイマーストップを撃つ。

 現状で落ちてるまがじんの次につけた。すごい。

 円はふと希の動きを思い出しかなり洗練されていたなと感じた。

 円は射撃位置につく、狙う、射撃という3アクションで撃ち、大半のサバゲーマーは射撃位置につく、射撃と2アクション、希は射撃位置につくと射撃がセットになった1アクションになっている。それが出来ていたのは現状だと希と希よりもタイムが早かった落ちてるまがじんだけであった。

 それ以外にも移動や位置取りがかなりスムーズかつアグレッシブで、走りの最後の1歩を軽く滑り距離を伸ばす、バリケードの移動を身体の回転の分で稼ぎつつ次の行動に繋げる。


「すごいね、2位だって」


「どんなもんじゃい」


 希はニッコリと笑って円の前にげんこつを出した円は自然とそれに合わせる。


――――――――――――――――――――――――


 ハルトは円のおまけ程度にしか考えていなかった後藤希のスゴさにも当てられた。

 特に感心したのはウィーバースタンスとアイソセレススタンスや左手(オフハンド)をノーモーションで適時適切に使い分けている部分だ。動きの1つ1つがスムーズでかなり慣れた動きだ。

 彼女に関しても動画にしたい欲求が生まれる。

 ハルトはそんな事を思案しながらフィールドに入る。左手を挙げ準備が出来た旨を運営に伝える。

 競技が開始される、ハルトは手際よくすべてのフェーズを終わらせる。結果は3位に落ち着いた。

 まりが競技を行っている間に円と希をどうやって動かすか考える。

 競技が終わり設営を兼ねた休憩時間に入ってもハルトは思考を巡らせていた。

 まりが目の前で手を叩く。自分の世界で思考に耽けていたらしく周りが急に騒がしくなる。

 騒ぎは反対側の卓で起こっていた、何事かと思い向かいの卓まで覗きに行くと例の親父連中と円が揉め事を起こしていた。円の横には希と何故かもう1人の女の子のせながいる。


「これ、なにが起こってんの?」


 ハルトは野次馬をしていた鶴田に聞いた。


「彼らがあの子に連絡先を聞きたかったらしく執拗に絡んできて、それを咎めた吾妻と対立したという話になるな」


「流石に見過ごせないですよ、あのひどい言いぐさは」


「うるさい!」


「騎士気取りでいたら痛い目みんぞ」


 せなは泣いているし、希は円を宥めている。運営も仲裁に入ろうとするが小柄な女性でどうにも出来ず、残りは面倒事に巻き込まれたくないらしく、作業に没頭している風を装い気づいていないフリをしている。


「はい、そこまでー」


 ハルトは手を叩き仲裁をする。


「話の全容は把握してないけど、要はオジサン達は女の子とねんごろになりたいってコトでしょ?」


 ハルトは的確に物事を指摘をする。


「だったら僕たちとオジサン達で対決ってのは? 対決方法は、そうだな……最後のデュエルで1位取ったほうの勝ち。オジサン達が勝ったらウチのまりと希ちゃんとの連絡先を入手ってのはどう?」


 ハルトが親父連中と勝手に話を進める。円は納得せず親父連中とハルトの間でやり取りを済ませその場はお開きになる。

 その後に円の首根っこを掴み裏に連れ込み壁ドンをして円にドスの利いた声で話す。


「今日はさみんなで仲良く遊び(・・)に来てんだよ、遊びにはある程度の割り切りってのも必要だとは思うけどね僕ァ。みんなで仲良く遊びましょうって部長サンは教えてくれなかったのかい?」


 円が何かを言おうとする前にハルトが遮り言いたいことだけを言い切る。そして声色をいつものに戻す。


「とはいえ吾妻くんの言い分もわかるよ。吾妻くんやせなちゃんも楽しく遊べなかったろうし、吾妻くん自身だけならともかく何故後藤ちゃんも巻き込むんだってね」

「だからこそ僕と君は連中をぶちのめして勝たないといけない、今日のことを何の憂いもなく楽しかった思い出にするには」


 ハルトは円に反論の余地すら与えずに自らが思う方向へ発破をかけた、ここで円が負けたとしてもハルトは負けない自信があった。親父連中は年数をこなしている以上その辺のサバゲーマーと比べ頭一つ抜けているだろうが見た感じで行けばハルトの敵ではない、むしろソロで来ている落ちてるまがじんの方が脅威だ。

 むしろ円が負けてハルトが勝ったとしたら円はハルトに貸しが出来る、それをダシにヒーローズに参加させてもいい。

 吾妻円は陸奥ハルトの毒牙にかかってしまうのか? 後藤希のアドレスは男たちの手に渡ってしまうのか?

 乞うご期待!

サバゲー解説


サバゲーギアについて、2


収納装備

自分のエアガンやマガジン等を収納するホルスターやポーチ類

基本的に銃を収納するホルスター

マガジンを収納するマガジンポーチ

空マガジンを収納するダンプポーチが挙げられる

この中で特に優先して調達したいのがダンプポーチであり

理由は雑に様々なものを収納できるため、空マガジン以外にも使い切ったハンドガン、ゲームに必要だけど入れる場所がないもの、フィールド上等にあった誰かの落とし物などを入れられる

またホルスターやマガジンポーチを調達する際には自分の機種にあった物を選ぶといい


電子装備

いわゆる電子機器類というもので

アクションカメラや無線機、スマートフォン、音楽プレイヤー、軍用サーマルビジョンなどがある

使用する際に注意する点は、先ずフィールドによって使用できるか否かを確認する点である

フィールドによってはプライバシーや装備の破損によるトラブルを回避するため、ゲームの公平性の観点から許可をしていない事が多く使用に関して細心の注意が必要だ

それ以外では破損しやすい物が多いので壊れても泣かないというメンタリティが重要である

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