10 Dirty deeds done dirt cheap Act.3
後藤希は都内にあるスタジオで江崎グリコの撮影を行っている。
グリコはグループ6発行のサバゲー雑誌の表紙を撮影していた、身体のラインを生かしたピッチリスーツにバストを強調したギアを装着し銃はAR系の未来的なカスタム銃である。装備と差し色の赤が眩しい。
それをカメラの後方から椅子に行儀よく座ってぼけーっと眺めている、付き人という名目で高屋仁と一緒に撮影の手伝いをしていた。
グリコは初対面のものぐさな性格の少女の印象とは正反対の利発な女性そのものの動きでスタッフにも積極的に対応や提案をしていた。にこやかな笑顔で際どいセクシーポーズを自ら提案してくる。プロ根性。
「オツカレー高屋クン」
「お疲れさまです、アランさん」
グリコのヘアメイクのアランという女性が高屋に話しかけてくる。高屋はアランに一礼をする、グリコに対して何というか扱いが雑なものの高屋は基本的に誰に対しても腰が低く、希に対しても礼儀正しく接してくれている。
2人は込み入った話をする、希は聞き耳を立てるつもりではないが「ストーカー」という単語がちらっと聞こえた。警護を任されている以上聞き捨てならないワードだ。
そもそも他の適任者でなく希が指名された理由は希とグリコの年が近く同じ大学の一年生同士で、先方からの指名も入り、一番重要なのが希が民間軍事会社で一通りの軍事訓練を受けている人材であったからだ。
「キミ、新人?」
無関係を装っていた希にアランは声をかける。希は慌てて椅子から立ち上がる。
「ふえっ、はい。後藤っス、江崎サンの警護を任されてます」
希はアランに一礼をする。そしてバカ正直に警護であることを言ったのは失敗だなと言ってから気がつく。やらかし。
「アラン・ランドーです、これお名刺ね」
アランは部外者である希にもにこやかに応対し名刺を渡す。グループ6でなく個人的な名刺らしくSMSのアドレスなど載っていた。
アランは希の顔を見たり測ったりして何やら見分をしている。こそばゆい。
「キミ、少しメイクしてみない?」
「えっ、は、ハイ?」
「と、いう事で高屋クンこのコ借りていくねー」
アランに手を引かれ控室へ向かい化粧鏡の前に座らせる。改めて自分の顔をまじまじと見ると恥ずかしく感じる。理由は医療整形で得た借り物の顔だからだ。
「キミー、普段化粧しないでしょ?」
「そっスね。普段は化粧水で顔を整える程度しか……」
「だめだよー、こんなカワイイんだから。というわけで今から講義を行います、先ず人にはパーソナルカラーという物があります」
「パーソナルカラー?」
聞き慣れない単語が出てくる。
「そう! パーソナルカラーは色相、明度、彩度、清濁という4つの色の要素と自分のキャラクター性と自分をどう表現していきたいか、それにシーズンという5つ目と6つ目と7つ目の要素で決められます。基本はイエローベース、ブルーベースの2つがあってどちらかを基本として表現したいキャラクター性やシーズン等でメイクに使っていく色を替えていきます」
アランは希の右頬と左頬に別々な色のチークを塗る。
「んー、キミはブルーベースだと思っていたけどニュートラルっぽさもあるね。色を確認する時は顔を見せる場所と似た色の光源を使うといいよ。屋外なら昼白色照明、今日みたいなスタジオなら昼光色照明みたいにね」
アランはにこやかに説明を続けて最後にこう締める。
「まぁ忘れてもグリコちゃんに聞いてくれれば教えてくれるし」
「あの人教えてくれますかね……」
はじめて会ったときのものぐさな少女という感覚が抜けてない。チャットを送っても多分平気で数日無視するタイプ。
「あら、キミあのコに結構気に入られてるわよ、少なくとも加藤クンと同じぐらいにはね。あのコ表情に出さない代わりに行為で好き嫌い示すタイプだから」
「っていうかあの人何なんですか? アイドルにしてはミョーにサバゲー強いし」
「ただの女のコだよ、キミと同じね。他人よりちょっと我が強いだけ。じゃ、講義を続けるね。先ず重要なのは化粧は一言で言えば地面を整地してアスファルトを敷くのと同じです、掃除して整えて塗ってのくりかえしになります。はじめにクレンジングで顔全体の油分をとります、ここは洗顔でもいいよ。次に下地作りで化粧液、乳液、必要なら乳液のあとで日焼け止め、化粧下地を塗っていき、コンシーラーでクマを消します。ほら見て、可愛いくなったよ」
アランの手際の良さもあるが僅かな時間でかなり印象がよくなっていた。
「キミ位の可愛さなら普段ならここまでで終わってリップを追加するぐらいでいいけど今日のわたしは容赦しませんのでもっと可愛いくなってもらうよ。次にファンデーションを使い土台を作ります、そうしてから眉毛を作るためにアイブロウを引きます、この際に気をつけるべきは左右を均等にそして色ムラがないようにするという事です。顔の中心側の眉頭は小鼻の付け根、天辺の眉山は鼻の頭、眉尻は下唇の中心に向かって線を敷く位置がいい感じのポジションです、コレ以降のメイク全般に言えるけど顔全体が映るサイズの鏡を使うと左右対称にメイクを敷きやすいです、あとコンシーラーはじめこういうペン型や小さいブラシの道具使う際のコツとしてはペンの中央より後ろを持って書くよりも塗っていくというイメージで行います。次にアイライナー、初心者のキミはペンシル型がいいと思いますが今日は可愛いくなってもらいたいのでプロ仕様を使います」
アランは希の目元でブラシを回す。
「そうしてから冒頭で話したパーソナルカラーの話になります、キミはニュートラルだけど今日はアランさんがブルーベースな気分なのでブルーベースを基本に使っていきます、アイシャドウはチップで塗っていきます。ちょっと目つむっててね。アイシャドウはこのようにまぶたに塗っていきます、この際に目頭から真ん中まで目のキワまできっちりやりますが目尻は少しゆるくしておくことで可愛く仕上がります」
目をつむりながら解説を聞いていく。
「次はチークになります、キミの場合はチークは頬骨に沿ってに軽く敷く程度でいいです。リップは今日持ち合わせないので、ノーズシャドウはキミは鼻の形が最高なのでキャンセルします、最後に白粉をかるくやれば。ホラ、可愛いキミがとっても可愛くなりました」
鏡の前には明確に美人な希がいた。希であるのだが全体的にハイトーンになっている感じであった。驚きと同時にこっ恥ずかしさも感じる。理由は希の顔は整形であるからだ、元の顔はもっと地味で平凡だ。アランの可愛いもこっ恥ずかしく感じる。
「その……可愛いってのやめて……」
「美人系目指してるの?」
「えっと……その……実は整形なんスよね……」
アランは少し考えてから口を開く。
「んー、キミってもしかしてズルして今の顔持ってるって思ってる?」
恐る恐る頷く。顔どころか学歴も経歴も存在すらもズルして得たものだ。
化粧も整形もしていない彼女は薄汚い犯罪者だ。
なんとなしに聞かれたがそれを認めるのがとても恐ろしく、ツバを飲む音が全身に回っていきのどが痛いほどに渇く、顔から血の気が引き後ろめたさから顔に熱を持つ。
「なるほど。今日キミお弁当食べてたと思うけど、アレはズルして食べたものだったりする?」
「いえ、わたしの分って渡されたので食べました」
「うん、でしょうね。整形の代金の支払いとかバックレた?」
「えっと……支払い自体私じゃないんですよね」
「親御さんとかが理解ある感じ?」
そこから先は答えられなかった。色々なトラウマを短期間で何回も踏まれて希のメンタルはズタボロになった。顔は真っ青になり頭は割れそうなほど痛くなり胃は悲鳴を上げる。
希は六畳一間の和室にいた。すえた匂いの部屋の中央には電灯がぶら下がっていて虫がたかっている、目の前には血まみれの男がうずくまって希を恨めしい目で見上げていた、右手にはナイフが握られていた。
「……ねえ、大丈夫?」
「ハ、ハイ、大丈夫っス!」
アランの呼びかけのおかげでなんとか戻ってこれた。そこはすえた匂いも血まみれの男もナイフも無かった。
「んー、ちょっと休もうか?」
アランは希にカウチに横たわるように言ってから備え付けの冷蔵庫から冷たいミネラルウォーターを取り出して希に渡す。希はそれを一息で飲み干す。
「さっきの整形の話の続きって、やっていい?」
希はそれを認める。アランは少なくとも希を傷つけて楽しむ手合いでない事がわかる。
「要は美しさってのをお金で買うのって別に悪いことじゃないと思うんだよね、わたしは。ほしければジュースだって買うし大体の物はお金で買えるしね」
「わたしは。いろんな自分を偽ってます」
希は落ち込みながら少し水の入ったボトルを握る。クシャッと小気味いい音が手から感じる。
偽りの顔、偽りの過去、偽りの名前、彼女は一体何者なのか自分ですらわからなくなる事がある。もはや涙すらも流ない、そう躾されたから。
「むしろありのままの自分を誰かに認めてほしいってそれは身勝手じゃない? それが許されるのは赤ちゃんだけよ。みんな誰かに認められたくて醜さを隠して着飾っていくの。お洋服着たりお化粧したり髪の毛整えたりボディメイクしたり……整形だってその1つだし今撮影してるエアガンもそうよね。そうやってみんな色んなものを利用して虚飾していくのよ。アイテム、経歴、階級、美貌、人格、交友関係、etc……ってね」
「そうですか……ね」
ありのままの自分は薄汚い
「んー、キミばかりアランおねえさんに秘密を告白するのも不公平な気がするのでわたしも秘密を1つ告白しようかと思います!」
アランは希の目線にまで屈んでから話を続ける。
「実はキミの前にいる美人で優しいアランおねえさんは、実はおじさんだったて言ったら驚く?」
希は最初言ってる意味がわからなくて「家でおじさんって事?」ともはや言語として怪しいに訳のわからない質問をする。
「やっぱり混乱するよね! ね!」
アランは希の反応に楽しそうに喜び、意地悪そうな笑みを返す。
「アラン・ランドーという人物の生物学上の性別は男です。性別を偽っているし、元から可愛いけど可愛さもお化粧とちょっとだけの整形で成り立たせています。さらに言えば犯罪を犯して自分の国に帰れません」
「何やったんスか?」
「破廉恥でキモいオカマやって可愛い女の子を誑かしてる罪!」
希は少し笑った。こんな美人で優しい人を破廉恥でキモいとは思えないし希は可愛くないし、諭されはしたが誑かされてもない。
「目の前のロクでなしを見て少しは自分はマトモだと思えた?」
自分をマトモだと思わないがアラン・ランドーという人物の言う事を信用していいと思えるようになった。
「アランさんはどうして女性になっているんですか?」
「おおー、いい質問だね。アランおねえさんが特別に答えてあげよう、実は可愛いを突き詰めた結果ある日おねえさんになってしまったのです。以上!」
「それもエゴっスよね」
「そうよ。そういう自分本位はキミの持っている不安だって消せるし欲しい物を手に入れたりややりたくないことを終わらせるのに必要な力よ。少女よ、ついでに少年も世界を手に入れろってね! ほら、もうアガってるから行っていいよ」
希はスタジオへ戻る。男衆が少し驚いたような表情で希を見る。
「オフショット入ります!」
いきなりの湧き様に希は戸惑いを覚えるがグリコが手を引き背景の前まで引っ張って「ホラ、顔キメて」と言う。
そこから写真を何枚か撮る。グリコの指導もあり後半になると身体の動かし方も上手くなり本職に負けず劣らずの写真も出来上がった。
最後にポラロイドを2枚撮る。グリコが口元でピースをする、希も真似をして口元でピースをする。
グリコは写りの良い方を希にわたす。
希はその写真に惚れ込んでいた。
「みんな、そろそろ時間だから撤収しましょう」
アランが手を叩いて撤収を促す。その後の予定は高屋は本社に直帰、グリコは希と新天地に移動となる。
希は今日は鏡子の軽自動車を借りている。
「アイドル乗せるのに軽自動車はないでしょ」
「アストンマーチンの方がよかったっスか?」
軽口を叩きながら2人で乗り込む。この後は地元まで直帰だ。途中でガンショップに寄ってグリコの部屋に送って終わり、デッカーズは今日は休み。
「途中でドラッグストア寄って」
「うい」
希は街道沿いにあった黄色い看板が目立つドラッグストアに車を入れた。止まると同時にグリコはドアを開ける。グリコに同行する形で希もドラッグストアに入る。
「ナニ買うんスか?」
「キミの化粧道具、アランちゃんからお願いが来てた」
グリコはスマホを希に見せた、化粧道具に明るくない希が見た限りではクレンジングオイル、コットン、化粧下地、乳液、日焼け止め、クマ消し用のコンシーラーとチークと書いてありクレンジングオイルとコットン以外にはメーカー指定があった。
買い物かごを持ったグリコはそれらを無造作に入れて会計を済ませる。レジ袋を希に持たせて車に戻った。
「ああ、それから家に帰ったらクレンジングで化粧落とせって」
「知ってまスよそれぐらい」
「そう、知らなそうな顔してたけどね」
グリコはシートを倒した。そうしてからまた運転。
「そういや小耳に挟んだんスけど、ストーカー被害遭ってるんスか?」
今のうちに小耳に挟んだ事を聞いておく。
「あー、アホの高屋からでも聞いた? うん、そう。今のトコ何人かいる」
「話を聞いても?」
希はハンドルを握りながら聞く体制に入った。
「私が言える限りの情報送った」
次の瞬間希のスマホに通知が入った。なるほど確かに合理的だ。
「もっと、こう……ストーカーに襲われてる情緒みたいなのないんスか?」
希はグリコの神経の太さに呆れる。
「めんどくさいじゃん、そういうの……疲れたから寝る。店ついたら起こして」
そう言うとグリコは助手席で眠りについた。
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希はグリコの指定の店についた、四角い箱型の一棟建てなのはデッカーズと同じなのだが赤い壁に金のモールドの入って一面にガラス張りの一言で言えば成金趣味なお店だ。エアガンじゃなくクルマか腕時計でも売ってそうな店構え。ハイソサエティというよりも成金趣味、居心地がわるい。
店名はLIMITLESSと言う。成金趣味な店構えとは似合わない店名。
駐車場には普段見ないタイプの高級SUVやラグジュアリーセダン、2台ほどスーパーカーも停まっている。
それらの車と不釣り合いな軽自動車から下りた2人は出迎えの顔のいい女性店員に連れられ店に入る、店というよりもラウンジみたいな感じであった、床は赤い絨毯敷で希が使っているのと正反対の高そうで座り心地の悪そうなカウチが間仕切り越しに幾つもありちらっと見ただけでも身なりのいい腹の出た中年が別な胸の大きい女性店員に促され入っていく。
希達はそれを横目に仕切りで区切られた場所じゃなくもっと高級な場所へと案内された。
部屋はいわゆる個室ラウンジ風でカウチソファの応接セットに間接照明とフリードリンク用の大量に缶ジュースが敷き詰められた窓付き冷蔵庫がある。壁は内装と一体化していて調和しているものの明らかな後付のボードで区切られている、最大の特徴は入り口と反対側が一面ガラス張りでガラス張りの向こうにシューティングレンジがある事だ、端に操作盤があり命中を確認する用のモニターが天井からぶら下げられている。つまりカウチソファで銃を見てそこからシューティングレンジで試射という流れなのだろう。に、しては照明が暗いのが問題だが。
「少々お待ちくださいませ、江崎様」
従業員は部屋から去った後に希は隣に座っていたグリコに話を聞く。
「ここ、どんな店なんスか?」
「1センチ集弾性上げるのに5万使う店」
「へぇ、江崎サン集弾性なんて気にするタチだったんスか?」
先のサバゲーを見ていて彼女は銃本体の性能より、技術と経験で戦うタイプだと希は見ていた。
「いんや、別に」
グリコは素っ気なく答える。ますます謎だ。
待っている間に希は机上のマガジンラックにあったカタログを覗いた。
どうやらこの店は自社ブランド製のエアガンを販売していてそれ以外にもパーツ単体の購入と組み込みプランもあった。
カスタムの事に明るくないが、その値段は明らかに異常であった。最低ランクで50万も取られるし色々なオプションを加えた上位機種だと200万はゆうに超える。
しばらく待っていると先程の女性従業員が台車と共に戻ってきた。台車の上にはシンプルなPDW風の短いM4カービンが置かれていた。M-LOKの穴の空いた短いハンドガードとアイアンサイトのない銃身にバッファーチューブに沿うように装着されたワイヤーストック、フレームのマガジン装着部にフォアグリップを兼用されたマガジンハウジング、手で触るセレクターやボタン類は全てカスタマイズされ大型化されている事を見るに外装からカスタムガンとわかる銃だ。レシーバーのメーカーや型番が掘られている部分に「LIMITLESS」「TAR4.5」と描かれている。ベース銃はモデル、メーカー共に不明だがM4カービンかその派生をモデルにしている事はたしかだ。
「こちらLIMITLESSオリジナルのTAR4.5になります……」
女性従業員はそこから説明を続けようとしたがグリコはそれを無視して「試射」とだけ言う。
「ご用意させていただきます」
女性従業員は面食らいすらせず台車の下から準備していたであろうマガジンとバッテリー、人数分のゴーグル等を出す。
女性従業員は銃の支度を手早く行い3人でシューティングレンジへ向かう、操作盤を弄ると30メートルの辺りから的が上から下りてくる。
女性従業員はTAR4.5で狙い、そして撃つ。天井にぶら下げているモニターには的の中央付近に穴が開いているのが確認できる。この短さであの距離を一発で当てるとなるちなるほどグリコの説明した通りの店らしい。女性従業員の腕も中々のものだ。
に、してもグリコの反応が薄い。感嘆の声も驚愕の表情もない。女性従業員から銃を受け取り狙い撃つ、女性従業員ほどではないものの的によく当たる。
「ま、いいんじゃないの?」
反応が薄いままグリコはフルオートで一斉射してマガジンを抜いて空撃ちを一発行い、バッテリーを抜く。
「そういや、加藤は?」
「そのような従業員は当店におりません」
「ふーん」
グリコは興味なさげに返事を返した、希はそのやり取りに違和感を覚えた。
「お写真の方を……」
「そうだね、いいよ」
グリコは営業スマイルでAR-Sを抱えて何枚か写真を撮った、従業員は気づいていないだろうが先程のオフショットはともかくグラビア撮影と比べても大分やる気が無かった。身体も棒立ちだし笑ってるように表情を作ってるだけだ。やる気が無いのは明白だがグリコはそれを表に出していない。
「お連れ様も是非ご一緒に」
蚊帳の外にいた希に声をかける。
「ふえっ!?」
「その子は契約外」
「ですが、写真を撮っていただけると……」
「そっちの都合でしょ」
グリコは頑として希を写真に撮らせなかった。
写真を撮り終えて箱に入ったTAR4.5やバッテリーなどの付属品一式と共にクルマに戻る。
ハンドルを握ってしばらくしてから銃の代金を払っていない事に気づく。
「そういえば支払いは?」
「スポンサー提供だから大丈夫」
「使うんスか?」
「遊びで使う、一応契約だから」
「ふーん」
アイドルともなると使う銃1つとっても指定されて大変なのだと思った。
隣の少女の過酷とも形容できるほどの自由の無さと生き馬の目を抜く様なやり取りは希には耐えられない気がした。
シートを倒そうとした隣の少女はガバっと起き上がる。
「後藤ちゃん、あの黄色いの追って!」
「ふえっ!」
「いそげ!」
目の前の交差点を黄色いSUVが横断していく。希は軽自動車を右折レーンに無理くり押し込み信号が変わると同時に追跡する。
「なんなんスか?」
「アレ、知り合いのクルマ」
自分にもあまり自由が無いことを再認識して黄色いSUVを追いかける、すると見知った場所へ停まった。
そこはデッカーズの駐車場であった。
エアガンの使用目的別の注意事項
エアガンにはサバゲーで使う以外にも多くの使い方がありそれらの目的と注意事項を解説していく
・サバゲー目的
これは言わずもがなであるが個人的に心得ておきたい部分が2点ある
1点目はフィールドやシューティングレンジ等からセーフティに戻る際にはマガジンを抜き空撃ちを1発行い残弾が無く撃てない状態にして、セーフティ内では常にエアガン本体に残弾が無いようにする、これはハウスルールで決められている事も多いが珍しい銃や新しい銃を使う際には今一度確認をしておくといい
2点目は敵弾や障害物などに当たって傷ついたり壊れる事があり、銃本体や装備品類は傷ついたり壊れても問題のない物を使う事だ、光学機器にはシールドを装着するなど自衛をし多少の擦り傷や部品の破損はアジとして認めるおおらかさも必要である
・シューティングレンジ、シューティングマッチ目的
シューティングレンジ等も基本的にサバゲー目的と同じであるが、シューティングレンジやシューティングマッチ会場にはセーフティがない場合が多いためシューティングレンジではゴーグル等を外さない、シューティングレンジをまたぐ際に外に出る事も多いため撃てない状態を維持して本体に残弾が無いようにしておく
またそれに加えシューティングマッチの際には銃口の向きを常に意識しておく事でベテランの仲間入りができる
・コスプレ小道具目的
先ず銃を用意する際に会場でなく自宅ないしエアガンを使っていい場所での残弾確認は必須である、未使用品であっても輸入検査やショップでの弾速検査時に弾が装填されている事がありその残弾が入っている事もある
会場に搬入する際にはむき身で持ち込まず理想はガンケース、最低でも外箱に入れて持ち込む
そして重要なのがそのコスプレ会場ではエアガンの持ち込みが可能であるか、可能であった場合どのようなエアガンが持ち込み可であるか事前に運営に聞いておく
また、新品購入時にエアガンの銃口に安全保護キャップという赤いプラスチック製のカバーが付属してる事があるがガンケースに忍ばせておくと急なレギュレーション変更時等にも対応が出来るかもしれず何かと便利であるし、撮影時以外に常時はめておくとガンマニアやサバゲーマーなどから感心される
・収集、資料、保管目的
あくまで保管場所が自分が管理してる部屋のみで入室者が全員エアガンないし銃の知識がある前提で語る
エアガンは実銃より軽いもののあくまで大半が重量物で質量の塊である
金網などにフックにかけて載せている場合は金網の倒壊と銃の落下に気をつける、またガンラックに陳列や事情があり床置きする場合は定期的に手に取って違和感が無いか確認をする、通気が悪いと金属部品の錆につながり、床面等を傷つけている場合には銃にもある程度のダメージが入っているとみていいため改善が必要となる