第3話
対人関係で地球で山奥に居を構えていた40絡みの作務衣男
彼はひょんな事から半ヘルジャージの宇宙人と出会う。
キャンディ曰く、地球は隕石衝突寸前!!
未知のパワーを発揮し、自分の身体に宇宙のパワーを宿し、《ティラノザウルス座》を発撃する事により、見事隕石を粉砕せしめたジテンくん。
彼は彼自身のキャラクターでは収まり切れぬ地球に別れを告げ、宇宙へ冒険!物見宇宙に繰り出したわけなんですなぁ~
ひゅるるる~ッッ!!
〝ぼひゅん!〟
〝ぼひゅん!〟
〝ぼよう~ん!!〟
みっつほど白い雲を突き抜けて!
火星にひとつの来客物体到来ッ!!
周囲に衝撃波を伴ったそれはッ!!
俺達のバイクゥッ!!??
そう!俺達の乗ったバイクが火星の成層圏を抜けて――ッ!!
ず おおん!!
が お !
ど お
ご お
お
地面に大激突!!
ジテン「し……し、強かに大激突ッ!!」
地面が生み出したガレキ布団をめくりつつ、ジテンはよっこらとそこから上半身を這い出してくる。
ジテン「がっ……がが……」
腕に力を入れ、右・左と着実に前に。前進っ。
ずりずり……ずりずり……すり鉢状――或いは、お酒のひと味にと、半分になったグレープフルーツのような
穴ぼこの中で、土のかまくら(さっき布団って言ったやつ)の中から這い出てくる。
ジテン「ひぎいいい……ふう……」
ひたいの汗を腕でふきふき。
頭上に控える反り返る断面を見ては、これは昇り切れんとあの娘の名前を呼ぶ。
ジテン「キャンディさ~んっ」
辺りを窺えど、先ほどの衝撃の余波で、土埃が舞い散っている。
ジテンはそこにキャンディの姿は見つけられない。
ちぎれた畳のように大小一枚々々折り重なった――先ほどまで地面だった土の板が作るかまくらだ~け。
「んほ~イ!」
そこに先のジテンの返事が返ってくる。
ジテン「お~。無事ですか~良かった~」
キャンディの声「悪ぃな~。なんかハンドル持ってかれちまってヨ~」
ジテン「いいっスよ~別に~なんともなかったんで~……しかしあれですねえ。ここ三日四日で俺も屈強になったもんだ~」
〝よっ〟〝ほっ〟と次々形をかえ、マッスルポーズをとるジテン。
しかしそこにあまり筋肉の感触を感じないジテン。二の腕を触り――次にふくらはぎを触ってみれど、そこに大した筋肉の返りはなし…
ジテン「あれェ?筋肉ついたワケじゃあねえのか~??」
首を傾げるジテン。そこに、
キャンディの声「うおおお~い。なんだっかよくわかんねえけど、ウマくこっから出れNE~ゼぇ~。ちぃとお力貸しておくんなましぃ~」
と、茶色いかまくらの中から声が聞こえてくる。
よよいと、ジテン立ち上がり――「しかたないスね~」と土かまくらを掘り起こす。
そこにむにゅ。柔らかな感触手触り。
キャンディの声「ンもう!エッチ!どこ触ってんのよ!」
慌てて手を引っ込めジテン「ごごご、ごめんなさい!!」
キャンディの声「……まあ、腹だからイイけど――」
ジテン「腹なんかい!謝って損したっ。全然エロくねーじゃねーか」
キャンディの声「その発言マジに?よ~く考えてみ?」
ジテン「いや、エロいけどね!?でも思ってた所よりだいぶランクダウンしてたってゆーか、第八位くらいだったってゆーか」
キャンディ「腹八分っていうもんね。〝地球辞〟で」
ジテン「どうせならおっぱいとか触らせてくださいよ……ってか、意外とおデブですね」
「ナンダト~~~ッッッ!!」
すぴいいいいとヤカンが沸騰するような音。
たまらずジテンは周囲を窺う。しかし何も変わっていない。土煙はある程度収まってはいるが。
すぴいいいいいい!!
その音の正体はこれだった。
土かまくらの中から吹き出した煙。それもふたつの白い湯気。
たじろぐジテンはその正体に気付いた模様であった。
後ろに手を突いて尻餅をつくジテン
「も、もしかしてキャンディさん……」
「ぅお、怒ってらっしゃ――」
「るッ!!」
その大声ひと文字と共に飛び出したのはキャンディ!!
であろう、ピンク色の丸い球体!!
ジテン「うえええええ!!ピンクの悪魔あああああ!!」
一度空高く飛び上がったそれは勢いのままにジテンの顔に向けて飛び落ちてくる!!
ぼしゅううううううううう!!
BOYOOOOOONN!!
それがジテンの顔面にアツアツのピザ、あるいはお餅のように飛び乗り、とろ~りと顔中を包む。
して。
そこからジテンの顔目掛けて、くさ~いガスが噴出する。
ぷしゅうううう~♡
そこからまろび出たピンク色の気体をジテンはモロに浴びる。
ジテン〝もご〟「ぐっはあああ……」〝もご〟
キャンディ(丸形)「どうじゃい!初ガスは!レモンの味がするだろがいッ!!」
「桃色屁息じゃい!!」
「天にも昇る気持ちじゃろがい!!」
ジテン「じ、地獄に落ちる……」
キャンディ「うそつけい!雲の切れ間から天使が数匹見えるじゃろがい!!」
ジテン「み、みえなみえない……閻魔!これは閻魔!閻魔が数体!!」
ギブギブと、ジテンは見えないバルーンキャンディをタップする。ぼよぼよん。
キャンディ「うおうい!だいじょぶかい!閻魔が複数は致死量超えとるよ!!」
しゅたた~んむ!
そこから飛び退いたキャンディ(丸形)は少し離れた位置に着地☆
キャンディ「乙女の純情――心の花園に触れよるからヂャ」
ジテン「……だ、だいぶ香料の必要な花園というか……」〝――芳香剤〟
そこに現れたのは、青ざめた顔に、脂汗、おまけに首元に手が巻き付いている我が主人公――だったモノの姿であった。
つんつん、それに短い触手を繰り出したキャンディは、
キャンディ「う~ん。地球人の状態ってイマイチよく分からんから対処法分からんよな。これ至福感じてる状態かも知れんし」
「ほら、この白目涙目なとことかそういう節あるし」〝うんうん〟
キャンディはそう全身(丸形)を使って頷くが、自分を納得させようとしているようにしか思えない。
上空を見上げるキャンディ。
そこには昼時にも関わらず赤い空(火星なので)と、遠くの方にちらりきらりと光った地球の姿があった。
キャンディ「ま、イーカ」
ずりずりと推定至福のジテンを引きずりながら、キャンディはすり鉢の外へと登り出す。