58、婚活
「・・・スーツだな」
「悪いか」
「いや、別に・・・」
本日は別に待ってもいない合コンの日である。合コン会場に行くために、宮河が水瀬を迎えにきてくれた。そんな水瀬の格好はラフなものでなく、控えめなスーツであった。仕事着とさほど変わらないネクタイにベストを着用して。
「多分一人だけレストラン用の服だぞ。なんだ、ドレスコードってやつか?」
「服持ってない」
「前、夏希ちゃんと買いに行ったろ?」
「そうだけど・・・」
ラフな服を集会のようなところで着る習慣は水瀬にはない。それに、合コン会場は特に食べ物の匂いがつくような場所ではないらしい。そうなると、余計きっちりとした服を着てしまう。
「ま、いっか・・・。キャラ付けは大事だもんな」
「キャラ付け?」
「あぁー、いいわ。車乗れ」
宮河の車に乗り、水瀬は合コン会場へ向かった。その間、水瀬は宮川に今日、合コンに集まる人の話を聞いておいた。
男女三人ずつの小規模な合コンで、宮河の警察の後輩とその友達、そして、宮河の妻である蕾の知り合いで構成されている。おそらく一番接点がないのは水瀬だろう。
「お前、絶対浮くな」
「うるさい。元から乗り気じゃないし」
そうこうしている間に会場へ到着した。夜だというのに昼より明るい。
宮河と水瀬が車を降りると、すでに男性二人は集まっていた。女性メンバーも集まっているらしい。
「先輩!」
「おお、早いな」
宮河の職場の後輩が宮河を見つけて呼んだ。水瀬も宮河の後ろのついていくように歩いていたが、宮河に腕を引っ張られて宮河の後輩たちの前に出された。
「今日はこいつをよろしくな」
そう言われて出てきた水瀬を見た二人は驚いた。スーツがよく似合った誰がどう見てもイケメンとしか言わないイケメンが立っていた。身長も高く足も長い。
「こんばんは・・・。水瀬暁と言います」
ぺこりと礼儀正しい綺麗な所作でお辞儀をされては反応に困る。
「あ、こんばんは」
「こんばんは・・・」
気まずい空気が流れ出したことを察した宮河はいそいそと車に乗って去っていった。宮河がこの気まずい空気から逃れて去ったことを察した水瀬は余計どうしようか困惑した。
「あの」
気まずさに耐えきれず、一人が口を開いた。
「すんごいイケメンですね!」
「!!」
水瀬の目を見ながら、店の中まで聞こえるほどの大きな声で言われると驚く。それに、なんて答えれば良いのかわからなくなった。
とりあえず、謙遜することにした。
「・・・いえ、そんなことはありませんよ」
こんなことを言えば、男たちは水瀬を敵として見るだろうか。水瀬はそれが心配だった。しかし、二人は笑顔で、水瀬を歓迎しているようだった。宮河の後輩で、その友人なだけある。
「じゃあ、女性陣を待たせちゃけないんで、入りますかー!」
「おー!!」
「はい」
お店の入り口を開けて三人で入店した。
こういうお店は水瀬は慣れておらず、色々と他の二人に頼ってしまった。
「あちらのお席でーす!」
店員が場所を案内してくれている最中、終始水瀬はやたらと視線が痛かった。
席につくと、女性陣は座って三人で会話を楽しんでいた。
「お待たせしました〜」
「あ、こんばんは!」
元気よく女性陣が挨拶をして、三人とも腰を下ろした。合コンなんて初めての水瀬は何を話せば良いのか一切わからず、ずっと口を閉じていたが、自己紹介をしなければならない。順々に自己紹介をしていき、ついに水瀬の番がやってきた。
「水瀬暁と申します。よろしくお願いします」
たったそれだけの自己紹介で終わらせてしまった。本当はもっと話したほうが良いのだろうが、水瀬にそんな面白い話なんて備わっていない。
「えっと、暁くんだっけ?歳いくつか聞いていい?」
聞いていいか聞かれている。これはイコールで何歳なのか問われている。
「二十七です」
「え、やば!先輩じゃん!!」
「そりゃ宮河夫妻の知り合いだから俺らより年上だっつーの」
「あ、そっか〜。じゃあ、くん付けはダメか・・・」
女性陣は宮河の妻である蕾が集めているのでもちろん女性陣も宮河恭介のことを知っている。
「別に構いませんよ。タメ口でも構いませんし」
「それ、こっちが言いたいよ〜」
人懐っこい性格の女性陣に男性陣。本当にこの中で、水瀬が合コンをやり過ごせるのだろうか。




