48、合法カクテル
四人と櫻田は水瀬に渡されたメニュー表とずっとにらめっこをしていた。バーの経験のない五人はメニューを見てもさっぱりと言ったところで頼むべき正解を探している。
そこへ聶園が話しかける。
「お決まりでないのならこちらでそれぞれにあったカクテルをご用意いたしましょう」
「え、いいんですか!?」
五人のパッとした嬉し笑顔を見て聶園は柔らかく笑った。
「では、アルコールに弱い方はいらっしゃいますか?」
聶園がそう聞くとアイドルの四人中の二人、土江と永谷が手を挙げた。この二人は四人の中で一番歳下と歳上である。
「では、まず土江様。甘いオレンジはお好きですか?」
「柑橘類は比較的好きです!」
「承知いたしました」
二人の会話を聞いていた水瀬は聶園が何を用意するのか予想がつき、タンブラーグラスを取り出した。
グラスを受け取った聶園は氷をグラスに入れ、カシスリキュールを注いだ。
続いてオレンジジュースを冷蔵庫から取り出し、ゆっくりとグラスにつたわせるように注ぎ混ぜずにそのまま土江に提供した。
「土江様にはこちら、カシスオレンジを」
目の前に出された橙色の甘いカクテルを見て土江はよだれが垂れそうになったのを必死で阻止した。
「カシスオレンジはアルコール度数の低いカシスリキュールを使っており、その上、適量の甘いオレンジジュースを使ったまろやかで飲みやすいカクテルです。どうぞ、ご賞味あれ」
土江と同様、周りの四人はその出来の凄さに圧倒され、美味しそうに見つめている。
「では、お次は永谷様。炭酸はお好きですか?」
「はい。あ、あと、アルコールに弱いんですけど僕、ワインも好きで・・・」
「なるほど。ワインですか。であれば今回は水瀬にお願いしましょう」
「水瀬さんが?」
そうして、聶園と水瀬が場所を入れ替え、先ほどの聶園と同じように作業を始めた。
まず最初にフルート型と呼ばれるシャンパングラスを取り出し、白ワインを取り出した。
「聶園さん、炭酸を」
「はい」
炭酸を受け取った水瀬がすることはもうほんの少しだけ。ただ、白ワインと炭酸を注ぎ、軽く混ぜるだけ。そして、最後に切っておいたレモンを入れ、あまりをグラスの縁に噛むような形で添えた。
それは夏にピッタリと言わんばかりのカクテルであった。
カランとなる透明の氷が爽やかな気持ちにしてくれる。
「白ワインを炭酸で割ったスプリッツァーです」
ほんの少しの作業しかしていないというのにとても美しいカクテルに永谷は感動を覚えた。
白ワインの甘さとさっぱりした炭酸が組み合わさり、ワインを飲んでいる感覚もあるし炭酸を飲んでいる感覚もある。
「これなら家でできそう!!」
「はい、簡単ですからね」
こうやって、一人一人にカクテルを用意し、聶園と水瀬達はアイドル四人の話で盛り上がっていた。
「梅近って小学校にある謎の白い箱のこと鳩小屋って思ってて〜」
「ちょっ!!」
「あぁ、百葉箱のことですか」
「え、あれって百葉箱っていうんですか!?」
「はい。中を見ると温度計が入ってますよ」
「す、すごい・・・物知りなんですね水瀬さん!」
アイドル、岳山、梅近、土江、永谷の四人はなかなかに中が良く、櫻田に対しても友達感覚で接している。
確かに面倒な騒動がありはしたがそれなりにテレビ局のこの企画は楽しかった。
この企画も明日で終わりだと思うと少々、さみしく感じてしまう水瀬だった。
皆さん、カシスオレンジは聞いたことがあるかもしれませんがスプリッツァーは聞き馴染みが無いですね。私もです。オトナになったらやってみようかなと思います。




