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Wine・Red  作者: 雪白鴉
四章
49/70

47、誘惑の夕日

結構、遅くなりました!

「皆さん、バーに行きませんか?」

「ば、バー?」


 ホテルの中には結構いろいろなものがある。ちょっとしたカジノやそれこそ本格的なバーも。バーテンダーも一流であり、ホテリエ同様、お客様を楽しませるよう指導されてる。


 そんなバーだが、このホテル・グランド・リリスは夜の大人たちの溜まり場である。大人っぽさとそれに見合うカクテルに音楽。一度は行ってみたいと思わせるようなそう、誘惑の最上級だ。


 とはいえ、バーテンダーという仕事はなかなか推薦されない。特に彼氏、彼女がいる人はやろうと思う人は少ないだろう。収入に関しては悪いとか云々カンヌン言われているがそれとは全く違う問題がある。

 バーとは、大人の男性女性の溜まり場、そしてやはり誘惑の溜まり場である。酔った客と接することもしばしば、恋仲に落ちることだってあるかもしれない。酒とは何とも罪なものである。


「バーなんて、いったことないです・・・」

「そうですか?結構楽しいですよ」


 水瀬がそうは言うが、アイドル四人は行ってみたい気持ちもあるが身分的にありなのか、とか「お酒弱いし・・・」とか、不安な様子である。そしてやはりはあれである。バーテンダーと他の客との接点である。酔えば酔うほど、ボロが出る。それを撮影なんかされたらたまったものではない。


「お心はありがたいんですが・・・」


 四人は流石にと断ろうとしたが、水瀬が続けた。


「ご心配を。この時間はバーは開いていません」

「え?」

「このホテルのバーが開くのは二十時ですから。バーテンダーの方に話は通してあります。貸切状態なので大丈夫ですよ」


 つまり、今行けば話の通してあるバーテンダーと自分たちだけの貸切状態である。それは喉から手が出るほどの代物であり、若者の憧れが集う場所に行ける。


「ち、ちなみに、バーテンダーの方は・・・」

「三十の男性ですよ」


 男性ならば話し相手にもなるし下手に気を使わなくても済む。それに、水瀬曰く、アイドルには興味がないとのことだったので全員完全一致でバーにこっそり行くことになった。


 バーがあるのは五階の奥。ホテルの客階とは一風変わった風景に驚きながらも進んでいくと大人っぽくバーのそれっぽい看板が目に入った。

 看板には「バー・サンセット・ラウンジ」と書かれてあった。営業中の看板は無く、代わりに「誘惑の八時に」と書かれた看板がぶら下がっていた。


「そういえば、お酒は飲んで大丈夫でしたよね?」

「あ、はい。一番下でも二十歳なので。それによくみんなで飲んでいるので」


 今日、車や自転車の運転、この撮影以外での仕事の予定が一切ない四人なので水瀬はこのバーに連れてきた。

 本日、テレビの企画四日目だが、まだ四人はこのバーに足を踏み入れたことがないし、入る予定もさらさらない。そんな大チャンスを逃してしまうのはいささか切ない。


 本日、日勤の水瀬は本来、もう帰宅の時間だが、今日は少々バーで楽しもうと思っている。


 水瀬がバーのドアを開ける。からんからんと上品な鐘の音が鳴り、中へ入ると暗く雰囲気のある想像していたより大人っぽいバーの世界が広がっていた。初めて来たバーに目が眩んだのか、櫻田も一緒にポカーンとドアの前で口をあんぐりと開き、硬直している。


「いらっしゃい」


 唐突に男性の声が聞こえ、正気に戻ると、まるで水瀬のように前髪を捲り上げ、きちんと整えた服を来た三十歳くらいの若い男性がカウンターに立っていた。


聶園(じょうえん)さん、相変わらずお一人ですね」

「それを言うんじゃないよ。マスターは基本一人なんだから」


 グラスを丁寧に拭く男性に水瀬が親しそうに話し始めた。

 話の内容から、このバーテンダーの男性はバーのマスターで、聶園という名らしい。水瀬が二十七なので歳の差はあまりないように見える。


「さて」


 すると聶園はポツンと立つアイドル四人と櫻田を見て微笑み、話しかけた。


「どうぞ、おかけください」


 綺麗なカウンターに恐る恐る座る五人。しかし、水瀬はそのカウンターには座らなかった。

 代わりに水瀬はなんと聶園のいるカウンターの中へと入っていった。しかし、何だか違和感は全く感じられず、本当にバーテンダーかと思うほどだった。


「み、水瀬さんは・・・?」


 そこで櫻田が問いかける。その問いに聶園が答えた。


「水瀬はここのバイトをしていましてね。本業のホテリエの仕事が終わった後、こっちに来てバーテンダーのバイトをしてくれます」

「バイト!?」


 驚く五人の前に水瀬がやってきた。


「はい。ホテリエとして働く前にもバーでバイトをしていまして、一応その道を進むために試験を受け、協会にも入っているんです」

「そんな協会が・・・」


 水瀬の経歴は圧巻のものであった。

 高卒でありながら空港税関の研修まで行き、それと同時にバーでのバイト。そして、この一流ホテルでホテリエとして働いている。二十七歳とは思えないほど社会に順応していた。


「あれ、そういえば白井さんは?」

  

 アイドルの一人が白井がいないことに気がついた。先ほど、水瀬と櫻田が休憩室に来た時、白井も一緒にいたことを覚えている。しかし、いつの間にか白井は消えていた。


「白井さんはまだ仕事がありまして、そちらに行っておられます」

「そうなんですか」


 よって、今ここには若い男しかいない。ついでに櫻田もまだ二十代である。


「水瀬、白井は来ないのかい」

「はい。もしかして、来て欲しかったんですか?」

「いや・・・、まぁ、紅一点は欲しかったねぇ。バーには花が欲しいから」

「そうですか」


 水瀬と聶園は話しながら色々と準備をしている。


 すると、水瀬によって五人にサッと黒い紙が渡された。見てみると「tequila vase」や「beer vase」、「wine vase」などと書かれてあった。意外にも安く、これがメニュー表だということがわかった。


「さぁ、ご注文をどうぞ」


 これから夜の酒に溺れる誘惑が待っている。

 お酒に溺れるのはご注意ください。

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