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Wine・Red  作者: 雪白鴉
四章
47/70

45、元空港税関志望

「板浜雨佳様、少々お話よろしいでしょうか」

 

 嫌な空気が流れる廊下で、水瀬は平然と言った。

 板浜はあからさまな動揺を見せた。


「な、なんですか?話って・・・。ホテルで動画配信するなとかですか?別にそんな事言われて・・・」

「誰が動画配信の事を言ったんです?」

「っ!」


 細い目が板浜を睨みつける。


「ここではなんですので、ついて来てもらえますか?」

「ど、どこに・・・?」


 不審いっぱいの板浜とよくわかっていない白井、西野、山田を連れ、水瀬は支配人部屋へ行った。


「支配人部屋・・・?」


 水瀬がドアを開けると案の定支配人がいた。


「・・・水瀬・・・、何やってんだお前・・・」

「支配人、少しお部屋お借りいたします」

「は!?」


 今ここで驚いていないのは水瀬だけだ。突然押しかけられて部屋を貸せと言われては支配人も同様する。頭が混乱しているのか白井は開いた口が塞がっていない。


「せ、先輩・・・なんでここなんですか?板浜様のお部屋でいいんじゃないですか?」

「元空港税関志望者な者故、部屋は変えたくなるんです。それに、女性の部屋に上がって良いものではありませんよ」

「そ、それはそうかもしれませんけど・・・」


 水瀬は板浜をソファに座らせると反対側に座った。


「だから、なに?部屋に帰りたいんだけど」

「それは事を済ませてからでお願いします」


 板浜はだんだんとイライラし始めていた。しかし、水瀬がそれに動じるような存在ではない。これこそ空港税関である。


「ではまず、状況把握から話を入らせていただきます」

「よくわかんないけどどうぞ〜」


 水瀬は西野からスマホを預かるとそのスマホを板浜に見せた。


「・・・これが?」


 至って反応は正常であある。


「貴方は現在、アイドルグループseriousー4の四人がこのホテルに来ていることをご存知ですか?」

「勿論。だって結構ホテリエからの忠告あったし?別にそんなんなくてもわかるよ」

「・・その、忠告はどのような内容でしたか?」

「な、内容・・・?」


 何かを察したのか今までの平然とした正常な言葉が少しずつ乱れてきた。これは冷や汗というべきか、明らかにこの話に動揺をしている。


(目が泳いでいる・・・)


 女優でもない限り、水瀬の目に映るものに狂いはない。小さなどんな細かなものでも見逃さない鍛えられた驚異的な水瀬の目から逃げられない。


「そ、そんなちゃんと覚えてないけど・・・、なんかあれだったかなぁ〜・・・個人情報を漏らすな〜とか勝手にアイドルとって拡散するな〜とか・・・そんな感じだったんじゃない?」

「・・・なるほど。では、そのホテリエはしっかり約束を守り自分の仕事を果たしてますね」

「どういうこと?」


 水瀬はスマホを下にスライドし、問題のアイドルが映った写真を見せた。ビクッと板浜の肩が跳ねる。


「こちらを見て、どう思われますか?」

「え・・えぇっと・・・だ、誰でしょうね・・・こんな約束を守る人は〜・・・いけないですねぇ〜・・・」


 態度どころか口調も変わる。この分かりやすさでは誰も騙せない。まして、水瀬は。


「そうですね。この投稿のせいでアイドルグループの四人のお方は勿論、我々ホテリエも結構な被害を受けました」

「そうなんですねぇ〜・・・」


 板浜は今にでもここから逃げ出したいような顔で水瀬から顔を逸らしている。


「そしてこちらなんですが・・・」


 そう言って何事もなかったかのように水瀬がまたスマホの投稿をスライドすると、山田が映ったルームサービスの写真が現れた。板浜はちらっとその写真を見ただけでも大きな動揺が見られた。


(ビンゴ・・・)


「この写真、貴方のお部屋ですよね」

「・・・っ!?」


 全てを見透かしたとでも言うような鋭い目つきに圧倒され板浜はガタガタと震え出した。


「反論は、なし、ですか?」

「あっ、え、いや・・・えっと・・・そ、その根拠って・・まずあるんですか・・・?」

「えぇ、なければ言いませんよ」

「っ・・・」


 そこで山田が自分のメモを板浜に見せる。


「これ、俺がルームサービスをした人の名前が載っているメモです。そこに貴方の名前がちゃんとあるんですよ」


 大きな付箋と付箋の間に挟まれて可愛げのある文字で書かれた自分の名前を見つけて板浜は前の机に置かれるスマホに目をやると、小さく隣でメモを見せる男が写っているのを発見した。


「な・・・!」

「それだけではありませんよ」

「えっ・・・」


 静かに喋る水瀬の方をパッと向いた。


「確かに先ほどのルームサービスのものが一番の証拠になりました。しかし、この投稿者の写真を見ると意外にも結構ヒントがゴロゴロ出てくるんですよ。まずは部屋に置かれている鏡、先ほど貴方の部屋に行った時、少し見渡したらこの写真に写っている鏡と同じものが同じ場所にありました」

「あ・・・」

「あと大きかったのは外の景色ですね」

「景色?」

「はい」

 

 水瀬は少し前の投稿まで遡った。


「こちらの風景はお部屋から撮ったものでしょう。この写真を見る限り、十四階の部屋が妥当でしょう。そしてこの写真が投稿されたのは夕方。この写真に映る太陽はまさに西に沈もうとしています。さらに、こちらのビルですがこのビルがど真ん中に来る写真は東寄りの西。これらから四階の東寄りの西のどこかの部屋だというのはあらかじめ予想がついていました」

「・・・っ!」


 長い説明を聞いていたキャパオーバーした白井は放っておき、西野、山田、支配人はそれを早く言えよ!と叫びたくなっていた。


「再度問います。これは貴方の部屋ですか?そして、この投稿者は貴方ですか?」


 完全に追い詰められた板浜は声は出さず、小さく下を向いて首を縦に振った。


「そうですか」


 水瀬は息を吐くようにそう言った。



このホテル、何号室まであるんでしょうか・・・。

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