44、メデューサ
アイドルグループの情報投稿者、板浜雨佳。彼女が宿泊する472号室へ夕方、撮影が終了した後、支配人の許可をとり、水瀬達は板浜雨佳の部屋まで行くことになった。
1412号室まで来ると、まずは水瀬がドアを三度ノックする。他の白井、西野、山田はドアスコープではわからない位置に立ってスタンバイである。
しばらくして部屋のドアが開いた。
「はぁ〜い、なんですかぁ?ルームサービス頼んでないと思うんですけどぉぅ」
出てきたのは茶髪ロングの女性だった。おそらくこの女性が板浜雨佳であろう
。
「ホテリエの水瀬ともうしまー」
「うあっ!イッケメンホテリエさんじゃん!!うわ、まじでイケメンだわぁ」
「・・・はい?」
名乗ろうとした水瀬の言葉を遮り突然板浜雨佳が水瀬の顔をまじまじと見つめて大声で叫んだ。
「写真より全然イケてるんですけどぉ〜。ねぇ、写真一枚いい?」
板浜がスマホを笑顔で構える。水瀬は驚きの顔から水瀬の真顔中の真顔にした。
「よくありませんが」
「えぇ〜なんでぇ?いいじゃん、一枚くらいさぁ。ケチんぼ」
「・・・」
彼女のいう「写真よりイケてる」とはおそらくあの野次馬を退けた時にあの中の誰かが水瀬を撮影して投稿したものだろう。
「あ、じゃあさ、あの綺麗なお姉さん。ほら、ハーフアップの。あの人は?」
「・・・駄目です」
「なんでぇ?本人じゃないじゃん」
ぷくっと膨らませた顔を見た水瀬はため息をついた後行った。
「本人が嫌な顔をしてらっしゃるので駄目です」
「え?本人って?いないじゃん」
水瀬の不思議な言動に疑問を持った板浜はキョロキョロと廊下を見渡した。するとどうだろう。すぐ横の壁にしゃがんでもたれかかってとても嫌そうな顔をする白井がいるではないか。
「うわっ!!」
流石に驚いたのか板浜が変な声を出す。
「よく見たらあと二人いるじゃん!!え?もう何?あんたらなんなの!?」
流石にここまできたらバカでも普通と違うと思うだろう。別に水瀬は何か仕掛けるようなことをしようとしたわけではない。ただ、怪しまれないようにするために少し三人を隠れさせただけである。
写真を撮ろうと先ほど誘われた時、水瀬の目に飛び込んできたのはいかにも嫌そうな白井の顔だった。断れ断れというような強い念が水瀬に強く伝わってきたのである。
「だからなんなの?人が投稿動画作ってる時にさ、突然押しかけてきて!」
怒るのも当然だ。しかし、怒っているのは板浜だけではない。
「迷惑なんだけど!」
「それを貴方が言うんですか?」
「!」
美人の怒った顔は怖い。これは水瀬のために作られた言葉のようである。
長いまつ毛の下に浮かぶ赤いハイライトを浮かべる黒い目。板浜はメデューサに睨まれたの如く硬直した。
「板浜雨佳様、少々お話よろしいですか?」




