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Wine・Red  作者: 雪白鴉
四章
40/70

38、帰りなさい

 アイドルグループがやってきてから二日目、いつものように小さな欠伸(あくび)しながら仕事を始めようとした水瀬が見た光景は昨日の安堵とは打って変わった光景だった。


 ホテルの警備に当たっていた宇山たちは押しつぶされる寸前。

自動ドアの前にはスマホ片手に大騒ぎする女子の群れ。

番組スタッフたちはどうするべきかとどこかへ電話をしている。


「これは一体・・・」


とにかくよくわからなかったのでなんとなく危なそうなアイドルグループの四人を外に出さないようにした。


「もしかしてネット上にここでの写真や動画をアップしましたか?」

「いいえ。仕事中はスマホを出してません。スタッフもそういうところは心がけてるんで」


アイドルグループがこのホテルにやってくるのを知っているのは余程のファンかホテリエの家族くらいのはずだ。

公に晒していいことではないのでアイドルグループの四人もスタッフもそういうところはちゃんと心得ている。


「ホテル側もそういうプライバシー等のことに関しては注意をはらってますし、お客様にも情報漏れないように注意していただいています。情報が漏れるとすればホテリエかお客様・・・」


五月蝿い玄関を見ながら呟いていると白井が水瀬を呼んだ。


「水瀬さん!これ、見てください!!」


白井の言う通りに白井のスマホを覗き込んだ。


アイドルグループ四人と水瀬、白井の姿がある写真がいくつか投稿されていた。

写真と共に書かれてあった言葉でホテリエやスタッフではないことがわかったが投稿者の身元がわかるようなものは何一つなかった。


「・・・これは、どこかに約束を破るお客様がいるわけですね・・・」

「おそらくは」


厳重に注意喚起はしていたものの、このような事態が発足したのは紛れもなくホテル側の責任でもある。


「こういうこともありえたのに・・・」


これが水瀬が恐れていた事態である。

最近、事に巻き込まれすぎてすでに水瀬は倒れる寸前である。


「水瀬さん、ひとまずあの女子盛りをなんとかしましょう。帰りたいお客様や入りたいお客様もいらっしゃるので」

「・・・そうですね」


ホテル内にいる客は西野たちに任せて二人は外へ出た。


「宇山さん」

「・・・おう、水瀬か・・・。もう手一杯でな。俺たちでは沈められそうにもないんだわ」

「・・・なんとかしろと?」

「大正解」


面倒なことを投げ捨てられてきた水瀬は面倒臭いながらも声を張った。


「皆様、どうかお帰りください。お客様やホテルの多大な迷惑となります。お帰りください!」


精一杯の声でそう叫んだ。


するとどうだろう。一瞬女子たちの騒ぎが静まったかと思えば全員の首が水瀬の方を見た。


「え・・・?」


そしてまた女子が騒ぎ始めた。


「ねぇ、あの写真に写ってたホテルの人じゃない?ゆうくんとまなぴー担当の!」

「え〜実物もかっこいいんだけどぉ〜」


ギャイギャイと今度は水瀬に寄りかかる女子たち。女子に囲まれた水瀬は身動きが取れなくなっていた。

助けを求め、宇山たちに視線を送るが御愁傷様というような目をしてくる者や睨んでくる者、哀れだなぁと眺める者がいた。

一向に助けてくれない警備隊を水瀬が睨むと全員が目を背けた。


どうしようかと身じろぎをしていると誰かに服を引っ張られた。


「うわっ・・!」


思ったより力が強く後ろへ倒れるように水瀬は女子の群れから解放された。

体勢を立て直すと横に白井が険しい顔で立っていた。


「・・・白井さ」

「水瀬さん!」

「はいッ!!」


突然の白井の大声に水瀬は驚いた。


「水瀬さんって馬鹿なんですか?」

「・・・はいぃ?」

「自分から自分の居場所を知らせるようなことして。それからどうなるかとか考えたことないんですか?」

「・・・?」


いまいちピンときていない水瀬に白井はため息をついた。そして水瀬を自動ドアの中へ押し込むと大人数の女子の前に勇ましくたたずんだ。


そして一言。


「帰りなさい!!」


周りに響くような透き通り棘のある声は女子たちと警備隊、客を黙らせた。


「・・・何、おばさん・・・」


一人の女子が白井に言った。

おそらくこの女子はまだ十代か二十歳だろう。


「あなたたちから見たら二十六歳はおばさんの部類に入るの?」

「当たり前でしょ。二十五歳からもうおばさん。あぁあ、おばさんになるのやだなぁ〜」


そう言われて堪忍袋の尾が切れない人はよっぽど優しい人なのだろうが白井は優しい人なのでよっぽど優しくはない。


「そうね。あなた理論だったら私はおばさん。それならあなた達はまだ赤子ね」

「はぁ?もう大学一年なんだけど?大学は赤ちゃんだったら行けないでしょ」

「だから私理論の話。あなた理論が通用するなら私理論も通用するわよね?」

「だからって赤子は馬鹿でしょ?」

「人それぞれ価値観があるのよ?今あなたは自分の価値観を否定しているわ」

「何?そのふざけた冗談。面白くないんだけど」

「あら、私もあなたが面白くないわ。私の目には営業妨害するお子ちゃまにしか見えないんだもの」

「・・・なんて?」




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