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Wine・Red  作者: 雪白鴉
一章
4/66

4.シャンデリア

「白井さん、警察を呼んでください」


一瞬戸惑った白井だが、すぐにフロントへ駆けつけ警察に電話をかけた。


「も、もしかして殺人未遂ってやつ・・・?」


新婦の友人が声を震わせて言った。


「その可能性は大いにありますね」

「・・!!」


水瀬は会場内を見渡した。

ナイフはあらかじめ仕込まれていたものだ。当然誰かが仕組んだのだろう。

仕込むことができるのはホテリエ、招待客、一般の客。新郎新婦は着替えなどをしていたため、まず会場に入ることはできない。

ホテリエの場合、準備過程で仕込むことは容易いが、水瀬、白井、西野が最終確認をした際には発見できなかった。更に、水瀬等が通常の仕事に手を回せないため、従業員が不足しているこのホテルで、手の空いているホテリエは一人もいなかった。


(白井さんと私は新郎新婦の準備を手伝っていたからまず無理だ。西野さんはムービーなどの準備で忙しかったらしい。アリバイもちゃんとある)


そう考えると招待客、一般の客に絞られる。


(そういえばカーテン・・・)


ナイフが仕込まれていたカーテンだ。ナイフが落ちる時、カチャという音がしたのを覚えている。

水瀬は垂れ下がったカーテンの裏側を見た。


(磁石・・・?)


そこにあったのは強力な磁石だった。


(磁石が外れてカーテンが落ちた・・・?)


そう考えるのが一番だろう。

見た感じ、電動で外れるものではなさそうだった。そうすると、犯人は招待客に絞られる。


何かに引っかかっている水瀬がふとシャンデリアを見ている時、会場のドアが開いた。


「どうも。警視庁捜査一課の宮河です」


思ったより早く、警察が到着した。


「水瀬。お前の担当か?」

「そうです」

「お前の周りでは事件が起こりやすいな」

「余計なお世話です」


警視庁捜査一課、宮河恭介。水瀬の唯一の親友である。


「白井っていうホテリエの話を聞く限り殺人未遂ってところか」

「そうですね」


警察の捜査が始まった。


「凶器はこのナイフか。誰か触ったか?」

「私が触りましたが、手袋をしているので指紋もついていませんし、私以外に触った人もいないと思います」

「そうか。おい、指紋検査だ!」


宮河の指示でナイフの指紋検証が始まったが、結果、誰の指紋も検出されなかった。


「準備の過程からだいぶ時間があったみたいだな。それか、元から手袋か何かをしているか・・・」


そんな事考えたら女性の半分が手袋をしている。正装のときは手袋をするのだろう。おしゃれな手袋をしている人が多い。


「水瀬。他に違和感はなかったか?」

「違和感ですか・・・。そういえば白井さんが後部からシャンデリアを通り、前まで繋がる光る何かを見つけていました」

「光る何か?」

「細い線のような気も・・・」 


二人でシャンデリアを見上げたが、何も光ってなどいない。何かと見間違えた可能性もある。

今のところ何も確証は無いのでそれは後回しにすることにした。


「何かわかりましたか?」

「白井さん」


慌てた様子で白井が水瀬の方に走ってきた。


「他のホテリエにも話をしておきました。一般のお客様の説明はこちらでやると」

「ありがとうございます」


一般の客に関しては他のホテリエたちが対応してくれるらしい。


「それはそうと、こちらは何も・・・」

「困ったものですねぇ・・・」


警察の方も進展はなく、時間が過ぎていくばかり。

新郎新婦の不安はどんどん募っていく。


警察は招待客への事情聴取を執り行った。


アリバイのある人が多いが、ない人もいる。アリバイのない人を中心に捜査を行ったが、何も出てこなかった。


「水瀬。他になにか違和感はないか?俺等は現場にいなかったから何もわからないんだ」

「そう言われても・・・」


困った水瀬と宮河。そこに、救世主、白井夏希が現れる。


「そういえば水瀬さん、カーテンが落ちる前に、一番後ろのテーブルの位置がおかしいって言ってませんでした?」

「え・・・。あ、言っていた気が・・・」


だからといってそれが何に関係するのだろう。


(カーテンの磁石、光る何か、テーブルの位置・・・。何か手がかりは・・・)


こう見えて水瀬は学生時代の成績は良かった。愛想は悪いが・・・。


水瀬が頭を回転する。出てきた不自然なことを元に犯人をつきとめていく。


「あ」


水瀬がぱっと顔を上げた。


「どうした、水瀬?」

「どうしたんですか?」


水瀬はシャンデリアを見上げた後、新郎新婦が座る席から、まっすぐ、一番後ろの壁を見た。


水瀬は何かを確信したように、ほんの少し、口角を上げた。


「犯人、特定できました」





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