36、世間の夏休み
誰も手を挙げることなく悶々と流れる空気の中、一人が一人の腕を掴んで手を挙げた。
「はい!!」
「え!?」
手を挙げたのは白井だった。
そして、その道連れとなったのは白井の隣にいた水瀬だった。
真剣な眼差しで手を挙げる白井の横で水瀬は渋い顔で見るからに嫌がっていた。
「そうかぁ〜、白井と水瀬がやってくれるのかぁ〜」
「助かるわぁ〜」
「ありがとうございますぅ」
水瀬が嫌な顔をするのでみんなでグイグイと水瀬を担当に押し込んでいく。
先輩後輩、支配人、白井が一致団結して水瀬にやらせようと企んだ。
「水瀬さん、一緒にやりましょっ!」
「うっ・・・・・くっ・・・了解しました・・・」
「やったぁ〜!!」
みんなからの輝く瞳に充てられ、水瀬は渋々了解した。
「それで、一体どこのアイドルグループなんですか?」
「夏休み特別企画というわけで最近有名な四人アイドルグループSERIOUS−4です」
「世間を知らない私でさえ知っているグループですね」
「全員もれなくイケメンと噂でして、女子に大人気なんですよ。老若問わず人気で」
今、日本の中心グループである。
「ちゃんとした方たちだったら文句は言いませんけどね・・・」
「水瀬さんってそういうとこ、キツイですよねぇ」
白井も色々と細かい部分があるので水瀬のことは言えないが白井は水瀬とは違い、すぐ顔には出さない。
「夏休みなので人が多く来そうです」
「それよりも、絶対にそのなんとか4グループがこのホテルに来ること、世間は知っていますよね」
「ファン達が大勢押しかけるでしょうね」
「他のお客様の迷惑にならなければいいのですが・・・」
このホテルに来るお客は全員芸能人であるわけない。単なる普通の家庭か医者の家庭、お金のことを考えない客がやってくる。
芸能人が来るたびにホテルの周りは大賑わいでホテリエもなかなか中に入れないほどである。
それを踏まえ、数年前からホテル常駐の警備隊、つまり警察官がつくようになった。
「いやぁな予感しかしないんですが・・・」
「水瀬さんの嫌な予感ってなんだか当たりそうですね〜」
「当たって欲しくないんですが・・・」
子どものような笑顔を浮かべて水瀬と話す白井は今日もハーフアップである。
「最近、常にハーフアップでいらっしゃいますね」
「変ですか?」
「い、いえ」
白井が水瀬を見上げる。
身長の低い白井は身長の高い水瀬を見上げるには上目遣いのような形になってしまう。
「髪飾り、水瀬さんが買ってくれたんですよ?ハーフアップにしないでどうするんです?」
「常にその髪型は暑くないでしょうか?」
「もしかして、項の見えるポニーテールが良いんですか?エッチですね〜」
「そ、そういうわけじゃありませんけど・・・」
おそらく、水瀬は人生初めて一本取られた気分を味わった。
水瀬は一生、白井には勝てないのだろう。
私はハーフアップの方が好きです。
なんたって、絵が描きやすいので!!




