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Wine・Red  作者: 雪白鴉
三章
31/70

29、無欲の彼


「なんか悪ぃな。(あき)。」

「別に。いつものことだし宮河にはいつもお世話になってるから。」

「お前ってそういうとこちゃんとしてるよな。」


早番で仕事が早く終わった水瀬は宮河の車で宮河の家へ向かっている。宮河の子どもが水瀬と遊びたいんだとか。


「父親としてなんとなく悲しい。」

「ごめんごめん。」


父親である宮河よりも懐かれる水瀬にちょっと嫉妬する宮河であった。

水瀬には全然笑わないし面白くもない自分がなぜ懐かれるのかはさっぱりわからない。


「俺も懐いてほしい・・・。」

「お母さんっ子なんだろ。」

「だよなぁ・・・。」


こうまでもやるとさすがに宮河が可哀想になる。仕方のないことではある。

世間のお父さん方はさぞ悔しく悲しいんだろう。子どものいない水瀬にはあまりわからないが。


「暁も自分の子ができたらわかるよ。」

「そういう相手いないし興味もない。」

「そんなこと無いだろ。お前が子ども好きなこと知ってんだから。」

「変なところだけ観察力があるな。」

「一応捜査一課なんだけど!?」

「そういえばそうだった。」


宮河はこれでも警視庁捜査一課の一員である。


「お前より観察眼はないかもしれないけど一般人に比べたらなかなかあると思うが。」

「そうだね。」


税関の仕事につくためにはその観察眼と察知能力、重さ、触り心地、匂い、全ての五感が凝縮されなくてはならない。どんな細かいミスであっても許されない。それは宮河も同じであるが水瀬は税関の指導によりその力を身につけた。


「お前が完璧すぎて俺が霞んで見える。」

「大袈裟だなぁ。世の中完璧な人なんているわけないじゃないか。」

「そうか?お前は俺の中では充分完璧だぞ?」

「お前の中ではな。」


決して水瀬は自分が完璧だと思ったことはない。

確かに、人より賢くあることに自信はあるし運動神経にも自信がある。

が、水瀬には人間らしさという人間にとって最も重要といっても過言ではないものがかけていた。


人が面白いと感じたものでも笑うことはなく、そんな人達の中に入ることができない。友と呼べるものも作ろうとは思わないし、彼女が欲しいだなんて考えたことも思ったこともない。


「なんていうかさ、欲が無いんだよなぁ、欲が。」

「・・・そうかもね。」


 水瀬には欲がない。とはいえ全く無いわけではないが表に見せる素振りが無さすぎるだけなのである。


「もっと欲がないあったほうがいいんじゃね?欲があってこそ人間だろ?」


 人は必ず一つは好きなもの、ことがあるはずだ。どんなに小さな子どもでもおままごとが好きだとか、その中で子ども役は嫌だからお姉さん役になるだとか、子どもは自分の意志を抑え込まずそのまま放出するため喧嘩が絶えない。

 その一方で大人は(おもて)に見せず欲にまみれた行動をする。それが一般社会の中での問題になる。


「昔っから本当に欲のないやつだったよな。お人好しなのか考え無しか、たんに面倒くさいのか。」

「多分面倒くさかったんだ思う。」

「それはそれで問題だぞ・・・。」


久しぶりに長話をしてたどり着いた宮河の家の前では宮河の奥さんと娘が立っていた。



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