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Wine・Red  作者: 雪白鴉
三章
27/70

25、喧嘩の仲裁

 五階に着いた水瀬は、あのメロンパンカップルの部屋へ行った。

三回ドアをノックし、部屋へ入った。


「わぁ、来たー!」


アホほどハイテンションの二人から水瀬はちょっと目を逸らしている。


水瀬はスマホを渡され、大きな窓を背景に二人の写真を撮った。


それからも、二人の要望通りの写真を撮りまくっていった。


時間なんて過ぎたきゃ過ぎていけば良い、そんな感じの二人には相容れない水瀬であった。


「ホテリエさーん、ありがとう〜。」

「・・・いえ、・・・。」


やっと解放されたと、水瀬が二人の部屋を出ようとしたとき、突然、女性の方が怒鳴った。


「さっくん!?この女、誰!?」

「勝手にスマホの中見るなよ!!」

「そんな事言うんならやっぱり私に隠したい女なんだ!!」

「違うって!前話しただろ!同僚だって!!」


どうやらよくあるパターンの喧嘩らしい。


せっかく解放されると思っていた水瀬は突然の出来事に頭を抱えるしかなかった。


 ホテルでの隣の部屋からの苦情といえば大半が喧嘩。喧嘩の声が五月蝿いと、ホテリエへ苦情が入るのだ。そのまま隣の部屋へ苦情を言ってほしいものだが、客の気分を害したくない。


このホテルでの喧嘩や事件はすべてホテリエ達が解決するようになっている。


特に、喧嘩といえば男と女。おしどり夫婦であっても、いつもと違う環境に置かれるせいか、いつもと違った行動を取りやすい。そこから大喧嘩が始まるのだ。


その大喧嘩をホテリエが止める。


「お客様、隣のお客様にご迷惑がかかりますのでお静かにお願いいたします。」


水瀬がそういうも、二人には聞こえていない様子。


もう少し大きな声でもう一度言うが、伝わらない。


 喧嘩というものは恐ろしい。

一度喧嘩が始まれば、周りが一切見えなくなり、周りのことなんて気付かえるようなものではない。


水瀬は大きなため息を一つつき、二人に近寄ると大きな声で、


「お静かに。」


と、冷静に言った。


二人は石のようにピタリと固まり、喧嘩が収まった。

いや、収まったと言うより、強制停止されたのに近い。


「ここはホテルです。貴方方の家ではございません。周りのことが見えないお方はどうぞお帰りください。」

「・・・。」

「・・・。」


二人は固まったまま、水瀬の言葉を聞いていた。


「では、また何か御座いましたらお電話を。失礼致しました。」


水瀬は後ろを振り返り、廊下へ出た。


(・・・疲れたぁ・・・。)


少し斜めになっていたネクタイを調え、歩き始めた。


 今まで長い間ホテリエをしてきた水瀬が得意とするのは喧嘩を止めること。


得意といっても、同僚曰く、なんか圧が凄いとのことだったので水瀬自身が喧嘩を止めることが得意なわけではない。水瀬の切れ味のある言葉と圧がいい感じに滲み出ていて結果、いつの間にか喧嘩が止まっている。


喧嘩が起きれば水瀬を呼べ、と言われるくらいだ。


(別に喧嘩に立ち会いたいわけじゃないんだけど・・・。極力、喧嘩なんて見たくない・・・。)


毎度毎度、大変な水瀬である。



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