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Wine・Red  作者: 雪白鴉
三章
26/70

24、メロンパンカップル

 バカップルというべきだろうか。

水瀬と石川は呆れた感情を頑張って押し込んでいた。


「さっくんと」

「もっちぃーで、」

『さくもちカップルでぇ〜す!』



 焼き立てのメロンパンかな?



イチャイチャラブラブと目の前で見させられたら男は心が折れる。


 このカップルは前に一度、このホテルへ来たことがあった。その時、二人の部屋の隣の部屋からホテリエへ苦情が入ったという。

理由としてはイチャイチャラブラブが五月蝿いとのことであった。


「では、お部屋の方へご案内いたしますので───」


石川が二人を案内しようとしたが、さっくん(彼氏)が拒否した。


「一度来たことがあるからね。このホテルのことはわかるよ。」

「きゃあ!さっくんかっこいいぃ〜♡」


ハートがとんできそうなほどイチャつきに水瀬はため息が出た。

石川はどう反応して良いのかわからず困った表情をしていた。


「先輩、この場合、どうしたら良いですか?」

「そうですね・・・。」


石川がこそっと水瀬に聞いた。


「一度、本人たちの申し出に応えてみましょう。嫌な予感はしますがね・・・。」

「わかりました。」


二人はこのカップルを好きなようにさせることにした。


そして案の定、水瀬の予感は的中した。


「あれぇ〜。部屋どこだっけ。」

「もう、さっくんったら〜。おっちょこちょいなんだからぁ〜。」

「ごめんって〜。」


部屋がわからないのにイチャついているのはなぜだろう。


しかし、嫌な予感を察知していた水瀬は石川を連れて、カップルを見張っていた。

ついてきていて良かったと思っている。


「あのお二人の部屋って、七階ですよね・・・。」

「えぇ。」

「ここ、六階ですよね・・・。」

「・・・はい・・・。」


まず階から違った。

勿論、部屋が見つからないわけだ。


どれだけ経ってもここが六階とは気づかず、ずっと六階をぐるぐると回っていた。


それを見ていた水瀬はため息を一つつくと、二人の前へ出ていった。


「お客様、こちら、四階でございます。」

「四階?」


キョトンと二人が首をかしげ、階段近くにある階を知らせる看板を見た。そこにははっきりと「6」と書いてあった。


「・・・四階だ・・・。」


水瀬に言われて気付いた二人はエレベーターに乗って、もう一階ほど、上がっていった。


二人はもう良いだろうと思い、休憩室へ行った。


「あのカップル!?」

「・・・はい。」

「そりゃ災難だったなぁ〜。」


帰るや否や、あのカップルの担当になったことを聞いた水瀬たちの先輩は大笑いしていた。


その先輩は前来たあのカップルの担当だった。


(あき)って最近災難ばっかじゃない?」

「・・・そうですね。」


珈琲を淹れてくれた同僚にも笑われた。


先輩や同僚と休憩していると、電話が鳴った。

水瀬が出ると、その声の先は先程のさくもちカップルだった。


「あ、さっきのホテリエさん?ちょっと来てもらいたいんだけど〜。」

「はい。何でしょうか。」


たいていルームサービスなので水瀬はペンとメモを手に持った。しかし、そのペンとメモは必要なかった。


「ちょっと、写真撮ってほしいんだけど。」


「は?」という声が出かけたが、ぎゅっと抑え込んだ。

ホテリエにルームサービスのような感じで写真を撮れと指示をするだろうか。


「あの、お客様・・・。等ホテルでそのようなサービスはございませんが・・・。」

「知ってるよ。でもさ、自撮り用の棒も忘れちゃったし、やっぱり他の人に撮ってもらったほうが良いよね〜っていう話になって、じゃあどうするかってことで電話したんだ〜。」

「・・・。」


これではホテリエはわざわざ五階まで上がってカップルの写真を撮らなければならない。


「・・・しかし」

「えぇ〜。撮ってくれないのぉ〜?ケチ〜。せっかくこのホテルの売上に貢献しようと思ったのにさぁ。」


電話の向こうから女性の声がした。


ここで写真を撮らなければたった一人の証言でホテルの評価が下がりかねない。水瀬は自分のせいでこのホテルの評価が下がるのは嫌だった。


「・・・・・・承知、いたしました・・・。」

「やったぁ〜!!」


水瀬は承諾してしまった。


電話を切った後、水瀬は熱々の珈琲を一気に飲み干して五階まで上がっていった。




メロンパンって美味しいですよね〜。

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