18、無意識
昨日に引き続き、投稿させていただきます!!
3章に入りました!!
これでも一応、オフィスラブストーリーです!!
朝、六時。我が家のインターホンが鳴った。
「宮河。おはよう。」
「よっ。」
ドアの前で紙袋を持った宮河が立っていた。
いつもならもっと小さな紙袋で、その中には高確率で辛い麻婆豆腐が入っている。
しかし、今日は宮河が水瀬に用があるのではない。今日は、水瀬が宮河に用があるのだ。
「お前が着れそうな俺の服、いくつか持ってきた。」
「どうも。」
今日はもともと仕事があったが支配人に無理やり休みにされたので、白井と外出することになった。
しかし、お洒落に無頓着の水瀬には外出用の服は一切ない。外へ出かけたこともほとんどなく、買い物は全て宮河がやってくれている。
一見、宮河がこき使わされているように思われるがそうではない。赤ん坊の頃に親を亡くし、叔父と叔母に引き取られてから、外のことをさほど教えてもらっことはなく、なるべく外出を控えるようにと言われ、バスも電車も買い物だって上手にできないのだ。
それを見兼ねた宮河がいろいろとお世話をしてくれているし、今回は外出のために宮河が仕事へ行く前に水瀬に服を貸してくれている。
「お前、身長高いしスタイルいいから俺の服が入るかわかんねぇ。それに、お前にはネクタイとスーツしか合わない気がする。」
「他に着たこと無いし、仕方ない。」
宮河が持ってきたのは水色っぽいカッターシャツに薄い黒のズボン。どれも清潔で質素な水瀬に似合う服装である。
「嫁が選んだ。」
「へぇ〜。」
何かと水瀬は宮河の嫁に気に入られているらしい。
「嫁曰く、弟みたいだってよ。」
「なるほど。」
宮河が持ってきた服に着替え、黒のカラーコンタクトを付けた。
引き出しから髪ゴムを取り出し、長めの髪を一つに結んだ。
その髪は男子にしては長く、宮河もちょっと気になっていた。
「お前さ、髪、切ったら?」
「・・・どこで?」
「美容院とか。」
水瀬の髪が長い理由として、外に出ないからである。
いつも髪が長くなったら自分で切るか、宮河や宇山に切ってもらっている。
「この際、切ってきたら?」
「でも、白井さんが・・・。」
「どうせ行く場所、はっきりしてないだろ?その夏希ちゃんって子も優しい子だろうし。」
「・・・まぁ・・・。」
水瀬は自分の長い髪に触れた。
「夏希ちゃんが乗ってくるバスって八時前に来るだろ?なら俺が言っておいてやる。」
「・・・なんで。」
「お前じゃ頼りないから。」
宮河の仕事は八時半からである。
「それに夏希ちゃんにも会ってみたいし。暁をよろしくって言わなきゃだろ?」
「宮河が言うことじゃないでしょ。」
「いやいや、俺はお前の唯一の友達だろ?」
「・・・まぁ。」
時間は過ぎ、七時五十分になった。宇山が誕生日プレゼントでくれた腕時計を付け、バス亭に二人で立った。
「ここから二人で歩いて行くんだろ?」
「そうだけど。」
「逆ナンに気をつけろよ。」
「・・・白井さん居るし、まず無いでしょ。」
「そうかなぁ?」
仲の良い友達のように長々と話していた途中、白井を乗せたバスがやって来た。
「あ、あれか?」
「多分。」
バス亭の前でハスが停まり、白井が降りてきた。
「お待たせしました、水瀬さん!」
「いえ、待っていませんよ。」
白井らしくふんわりとした白のワンピースを着て、いつものポニーテールの髪は風になびかせたいと言うように結われていなかった。
「あれ、水瀬さん、お隣の方は?」
白井は水瀬の隣りにいる宮河に気づいた。
「私の同級生の宮河です。」
「どうも、宮河恭介です。今日はこいつを頼みました。」
「いいえ。初めまして、白井夏希と言います!」
水瀬と宮河の一つ下だというのに宮河の方が幼く見えるのは何故だろうか。
「それでですね、今日はお願いがありまして。」
「お願い、ですか?」
宮河が白井に言った。
「暁の髪、長いのでどこかで切ってもらいたいんすよ。床屋でも美容院でもどこでもいいんで。」
「確かにそうですね。わかりました。じゃあ、私が通っている美容院に行きましょう。それからお買い物ですね!!」
宮河のお願いに白井は了承し、はじめは美容院で散髪をしに行くことになった。
その後、宮河は車で仕事へ向かった。
「その服、宮河さんの服なんですか?」
「ええ。お恥ずかしながら。一切持っていませんでしたので。」
「そうなんですか。」
「似合っているかどうかはわからないですがね。」
白井は水瀬を下から上にかけて見上げた。
「いえ、似合ってますよ。水瀬さん、赤っぽい方ですが青もよく似合ってます。」
「・・・そうですか?」
「はいっ!!」
赤っぽいというのはよくわからないが服装で褒められたのは初めてである。ちょっと嬉しくなった水瀬は白井に言った。
「白井さんは可愛いですね。」
「・・・っ!!」
白井の着ていたワンピースは白井によく似合っていて、彼女そのもののようにも見えた。
水瀬は思ったことをそのまま伝えたが、無意識に滅多にすることのない微笑みを浮かべており、その笑みの破壊力に加え、「可愛い」の一言。女子が言われて嬉しくないわけのない言葉。それに白井は耐えられずもともと桃色の頬は赤色に変わった。




