2.幸せの始まり
(はぁ。ワインが飲みたいなぁ)
腹を刺されて病院送りになった水瀬はすぐに退院し、仕事に戻った。
強盗が起きたものの、被害は無く、大事には至らなかった。
「水瀬さん!」
玄関先の掃き掃除をしていた水瀬に話しかけたのは同僚で一つ年下の白井夏希だった。
「おはようございます」
元気よく話しかけてくる白井に水瀬はいつも元気だなぁと、思っている。
「今日、結婚式があるんでしたよね」
「そうですね」
このホテルには結婚式会場があり、そのスタッフは全員がここのホテリエなのだ。今日は一般人の結婚式があり、そこのスタッフに白井と水瀬は選ばれた。
「戻ってきたばかりなのに大変な仕事、受けちゃいましたね」
「仕方がないです」
結婚式の準備はとても大変だ。新郎新婦が着替える部屋もしっかり綺麗にしなくてはならないし、お色直しや撮影場所の準備もある。料理ももちろんホテルが用意するし、広い式場の掃除、セッティング、さらにはずっと式場に居なくてはならない。
「よく考えたら面倒くさいですね」
ホテルであるどのイベントよりも大変かもしれない。
「ほとんどセッティング、終わっているのであとは見直しだけなので玄関掃除が終わったらいきましょう」
「わかりました」
掃除を早く終えるために、白井も水瀬と掃除をした。
掃除を終えて、二人は式場にやって来た。
「白井先輩、水瀬先輩!」
二人に気づいて駆け寄ってきたのは後輩の西野壱丸だ。水瀬にとって、可愛い後輩である。
「一応、ほとんど終わりました」
「ありがとうございます」
最後に水瀬と白井が式場のチェックにあたった。
「テーブルクロスに少しシワがありますね」
「あ、本当だ。すみません」
一つのテーブルのクロスにシワがあるのを発見した水瀬はそれを直した。
「多分大丈夫ですね。これなら支配人に文句は言われないでしょう」
「そうですね」
直すところは他にないと判断した三人は結婚式開始まで、休憩をとった。
数時間後、黒い車が前にやって来て、そこから若い男女が降りてきた。
「いらっしゃいませ。お待ちしておりました」
深々と水瀬と白井は頭を下げた。本日、晴れて夫婦となる新郎新婦である。
「新郎様とお父様方はこちらへ」
水瀬と白井は男性陣、女性陣にわかれ、それぞれの部屋へ案内した。
「このホテルのホテリエ、水瀬と申します。何かあれば私に言ってください」
「わかりました」
新郎は水瀬に手伝ってもらいながら着替えた。
一方、白井の方は・・・。
「とてもお綺麗です!!」
「そ、そうですか?」
ウエディングドレスに着替えた新婦をベタ褒めすると新婦が恥ずかしそうに笑った。
「私もいつかは着てみたいです」
白井の口からつい出た本音を新婦は逃さない。
「結婚していらっしゃらないんですか?」
「えぇ。恥ずかしながら」
「恥ずかしいことではないですよ」
白井の年齢は二十六歳。新婦の年齢は二十五歳である。白井の方が一つ歳上だ。
「私、親が離婚してまして、離婚が怖くて結婚しないんです」
「そうなんですか」
親しそうに話す若い女二人を老婦二人は笑顔で見つめていた。
「若いっていいですわね」
「本当ですわオホホホ」
その頃、男性陣は、
「水瀬さん、お手洗いを貸していただきたいのですが」
新郎の父が水瀬にお手洗いの場所を聞いてきた。
「この部屋を出て、まっすぐ進み、左に曲がったらすぐあります」
「ありがとうございます」
そう言って、新郎の父親はお手洗いに向かった。
「では私も」
新婦の父親もついでに向かった。
お昼ごろ、暖かくなってきた時間帯、招待客で席が埋まり、いよいよ新郎新婦の入場となった。
白いウェディングドレスを着た新婦とぴしっと決めた服装にキッチリ整えられた髪をした新郎が入ってきた。母親はハンカチで涙を拭っていた。
新郎新婦が席につき、いよいよ結婚式が始まる。
火曜日更新を目標にしています!




